法改正「介護中の在宅勤務を選択できるよう会社が措置を講ずることが努力義務になった」8割が知らないと回答 仕事と介護の両立に関する調査レポート
働きながら家族の介護を担う「ワーキングケアラー」。超高齢化社会へ突入した現代日本において、ワーキングケアラーは年々増加する一方、介護を理由に離職する人も後を絶たない。「在宅勤務と介護との両立」をテーマにしたアンケート調査の結果から、仕事と介護の両立を望む人々の実情や本音をレポートする。
在宅勤務で介護との両立はしやすくなる?アンケート調査を実施
女性の社会進出の増加や健康寿命の延伸により、ワークスタイルの変化がおき、夫婦共働きの家庭も珍しくなくなった近年。働きながら家族や親族の介護を担う「ワーキングケアラー」の増加が大きな課題となっている。
ビースタイルホールディングスが運営する、仕事と家庭の両立を希望する主婦・主夫層の実情や本音を探る調査機関『しゅふJOB総研』は、「在宅勤務と介護との両立」をテーマに、仕事と家庭の両立を希望する主婦・主婦層にアンケート調査を実施した。その調査結果から、ワーキングケアラーの現状をレポートしていく。
介護と仕事の両立は「とても難しい」イメージ
まず最初に、「介護と仕事の両立について、どのような印象をお持ちですか」と尋ねたところ、「とても難しい」という回答が圧倒的最多の76.3%で1位となった。2位の「どちらかと言えば難しい」18.5%と合わせると94.8%もの人が、介護と仕事を両立することは難しいと考えていることが明らかに。
仕事との両立について:介護と育児の比較
また、上記の結果を、同じ回答者に「育児と仕事の両立について、どのような印象をお持ちですか」と質問した際の結果と比較した。すると育児との両立は「とても難しい」が45.4%、「どちらかと言えば難しい」が43.2%となり、介護との両立の方がより難しいと考えている人が多いことが窺える。
介護する人の在宅勤務が努力義務化された法改正を「知らなかった」
次に、「2025年4月から育児・介護休業法が改正され、家族を介護する人が在宅勤務を選択できるよう会社が措置を講ずることが努力義務になったことをご存じでしたか」と尋ねた。その結果、79.2%が「知らなかった」と回答し、「詳しく知っていた」と回答した人は僅か2.4%に留まった。
在宅勤務で介護と仕事の両立はしやすくなると「思う」が半数
続いて、「在宅勤務しやすくなることで、育児や介護と仕事は両立しやすくなると思いますか」と尋ねたところ、「介護については思う」は6.4%、「育児も介護も思う」は42.0%となり、合わせて約半数の人が「介護と仕事の両立はしやすくなると思う」と回答した。
在宅勤務と介護の両立について:年代別比較
また、上記の結果を回答者の年代別で比較してみると、「介護と仕事の両立はしやすくなると思う」と考えている人は60代以上では45.2%、50代では47.6%、40代では49.6%、30代以下では51.0%となり、年代が下になるにつれその割合は増えていることが窺える。
フリーコメントより介護と仕事の両立を希望する人の声を紹介!
・介護の場合は、仕事があった方が気分転換にもなり、非常に良い事だと思います。自分の世界を持っている事が大切だと思います(60代:パート/アルバイト)
・介護を現在進行形で行ってます。仕事と介護の両立は難しいと感じています。高齢の親の要求はエスカレートしがちです。また、何があるかわからないのが介護です。介護者の身体的負担以外に精神的負担も大きいです。介護経験のない周囲の無理解もきついです(50代:SOHO/在宅ワーク)
・介護は経験済だが、在宅勤務でも仕事との両立は無理だと思う。介護施設に入っても、電話連絡がよく来るし、気が休まらないし、永遠に続くし、しんどい(40代:派遣社員)
・長く完全在宅勤務をしており、その間介護も育児も経験しているが、介護はなんとかできた。ただ、母に認知機能の低下は見られなかったので、介護される側の理解があったことが大きかったと思う(50代:パート/アルバイト)
・介護は自分の問題でもあるので、やはり、在宅勤務ができるのはありがたいと思う。働きたいが、長時間家をあけられないなどはどうしても起こるし、病院への付き添いなど、休みが取りやすいことも大事だと思います(50代:契約社員)
・具体的なお世話の作業をすることを育児、介護というのであれば仕事との両立は絶対無理。作業はプロにお任せした方が良い。でも家族しかできない寄り添いは在宅勤務でカバーできる。当事者同士のメンタルヘルスにおいて大事だしそれは大きな育児活動、介護活動だと思う(40代:フリー/自営業)
・在宅ワークに出来ない仕事もあるし在宅ワークしながら介護はなかなか大変だと思う 介護は終わりは親の死というデリケートな問題になる。介護休暇の所得しやすさや時短も必要だと思う(50代:パート/アルバイト)
・在宅勤務の選択肢があることは心の余裕に繋がると思う。通勤時間がなくなることで仕事にも集中しやすくなる。職種が限定されるとは思うが可能な職種は選択できるようにしてほしい(30代:パート/アルバイト)
・両立の定義によるが、身体一つしか無いのだから、片方を行うともう片方はおざなりになるのは当然でロスに繋がるという意味で、同時両立はできないでしょう。とはいえ、もう片方に作業をすぐに切り替えできるのは強みなので、在宅は必要な手段だと思う(50代:フリー/自営業)
・自分の場合、介護のために30代半ばで退職しました。もっと様々な選択肢があればキャリアを捨てすに済んだのになといまでも後悔することがあります(50代:派遣社員)
・育休制度が今ほど整備されていない30年ほど前に育児、昨年まで介護を経験したが、明らかに介護の負担が重い。もう少し介護にかかわる援助(休暇や金銭的な補助)を進めるべきだと思う(60代:今は働いていない)
介護と仕事の両立がしやすい未来を目指して
以上の調査結果から、仕事と家庭の両立を希望する主婦・主夫層では、介護と仕事の両立に対して「難しい」という印象を抱いている人が9割を超えることが判明した。介護する人の在宅勤務を選択できるよう会社が措置を講ずることが努力義務になった法改正についても、8割近くがその存在を「知らなかった」と回答し、ワーキングケアラーの負担を軽減する環境整備が行われていてもその認知はまだまだ進んでいないことが窺える。
また、「在宅勤務しやすくなることで介護と仕事の両立がしやすくなると思う」と考える人は約半数となった一方、年代別で比較してみると年代が上がるほどそう回答した人の割合は少なく、実際に介護を経験した人の割合が多いと考えられる年代ほど、実感として介護との両立の難しさを感じやすいようだ。
フリーコメントには在宅勤務に関する様々な意見や介護離職をした人の声が多く寄せられた。この結果を受け、しゅふJOB総研の研究顧問である川上敬太郎さんは以下のように語る。
「社員が自ら育児に携わることを想定した育児休業とは異なり、介護休業の役割は要介護者が必要な介護サービスを受けられるようにするなど、社員が仕事と介護を両立できるようにするための準備を想定しています。超高齢社会を迎えてワーキングケアラーの増加が見込まれる中、介護離職を防ぐためのさらなる情報提供や環境整備などの必要性が高まっていくと考えます」
誰もがワーキングケアラーとなり得る今だからこそ、適した改革の発展と認知の広がりを望みたい。
【データ】
ビースタイルホールディングス
https://www.bstylegroup.co.jp/
しゅふJOB総研
https://www.bstylegroup.co.jp/news/category/report/
【調査概要】
調査方法:インターネットリサーチ(無記名式)
調査実施日:2025年3月20日(木)~2025年4月6日(日)まで
調査対象者:ビースタイルスマートキャリア登録者/求人サイト『しゅふJOB』登録者
有効回答者数:746名(※)
※調査対象者のうち、家周りの仕事について「同居家族はいるが主に自分が担当」または「同居家族と自分で概ね平等に担当」のいずれかを選択した人のみを抽出して集計。
※ビースタイルホールディングスの発表したプレスリリース(2025年5月21日)を元に記事を作成。
図表/ビースタイルホールディングス提供 構成・文/秋山莉菜