介護離職しないために!専門家が教える仕事と介護を両立する3つのコツ
今、大きな社会問題になっている介護離職。仕事を持っている人の場合、親が認知症になると「仕事と親の介護の両立」に悩まされることになる。
明治安田生活福祉研究所調べによると、介護を機に転職した人や介護に専念した人は、半数以上が介護を担い始めてから「1年以内」に会社を辞めていたとのデータがある。もちろん、充分な貯蓄があったり、転職しても給料が下がらないなどということであれば別だが、介護は長い時間を要するのも事実。また、お金もかかる。
一般社団法人介護離職防止対策促進機構・代表理事の和氣美枝さんはこう言う。
「本当は辞めたくない」人の対策とは
「“自分の親だから自分は離職してでも親の面倒を見る”という考え方は否定されるものではないと思っています。その人の価値観なので。でも、“介護のためには仕事を辞めるしかない”という人は、本当は辞めたくないわけです。辞めたくないのであれば、対策はいろいろあります」
もちろん、それは決して簡単なことではない。
「介護者本人が“自分の人生を大事にする”という意思を持たなければ、介護離職は止められない」と和氣さん。では、介護離職しないためにはどうすればいいのか。
その1:まず情報を収集を。「自分のしたいこと」「親とどう関わる」かを考えて
「まずは情報収集です。親が介護状態になったからといって、なりふり構わず介護に突っ込んでいくと、時間も体力も気力も消費して、心が折れる。介護を始めてしまうと、どうしても“ヘルパー気分”になってしまいますが、その前に、自分はどうしたいのか、そして次に親とどのようにかかわりたいのかを考える。そのうえでしかるべきところに相談し、情報を集めるといいと思います」(和氣さん)
その2:会社に介護を始めたことを「報告」する
会社には、介護を始めたことを即座に「報告」することが必須と言う。
「相談ではなく、報告です。相談だと特に初動は、かしこまってしまい、そもそも何を相談したらいいのかわからないので相談できないものです。報告しなければいけない理由は2つあり、1つは“隠している”という気持ちがあるとそれがものすごくストレスになるから。介護はただでさえストレスが多いので、減らせるストレスは減らしてほしい。
もう1つは、介護をしているとケアマネさんや担当医などからの連絡がけっこうあるので、周りが知らなければ“勤務中に私用電話をしている”“しょっちゅう電話のためにトイレに行く”と見られ、ただの勤務態度の悪い人になってしまう。
でも、報告しておけば会社の側から“今後どういう働き方にするか”を相談してくれるし、会社にこんな制度があるということも教えてもらえます」(和氣さん)
“報告”は直属の上司に行うのがいちばんだが、理解が得られそうにない相手なら、直接人事部に行くのも手だ。
その3:会社に甘えず、仕事の成果を出す!
こうして会社と調整しながら仕事と介護を両立させていくことになるが、そのためには仕事の密度も濃くしなければいけない。
「甘えずに、会社にいる限りは成果を出す。会社が目標数字を下げてくれたら、その数字を死に物狂いで達成する。そうするとすごく自信になるんです。介護は状況が変わるので、慣れてくれば短時間勤務を元に戻すことも可能になりますから」(和氣さん)
最初の1年、2年は本当に大変だが、それを乗り越えれば道は開けてくる。
転職も選択肢。しかし、正規社員での再就職は厳しい現実も
「転職を考えるのも1つの選択肢です。ただし、“すぐに転職できるだろう”と思って辞めるのは絶対にダメです。仕事ができる人ほど、選んでしまって、なかなか就職できませんから。
年齢が40才を過ぎていると正規社員での就職は厳しくなるし、今のお給料で転職することは無理。私は転職組ですが、給料が7分の1に下がりました。
額ではなく、プライドとしてそのお給料に耐えられるかどうか。私は特に守るものがなかったので、収入がどれだけ減っても“0よりはいいか”と思えたから何でもできた。でも、家庭のあるかたはそうではないので、“辞めないで”と言っているんです」(和氣さん)
他ならぬ親のこと、精一杯のことをしてあげたいという気持ちは尊いものだが、専門家の話からは、何より無理をしすぎないように――というメッセージが伝わってくる。
※初出:女性セブン2016年3月3日号