「介護施設の差し入れで困ったトラブルが!」注意すべきマナーと喜ばれる手土産の選び方を専門家が解説
介護施設に面会に行く際、差し入れを持っていく人も多いだろう。「入居者が喜ぶものを」と気軽に考えがちだが「施設によってルールや注意すべきことがある」と介護職員・ケアマネジャーの経験をもつ中谷ミホさんは話す。実際に起きたトラブル事例をもとに、面会時の差し入れについて詳しく教えてもらった。
この記事を執筆した専門家
中谷ミホさん
福祉系短大を卒業後、介護職員・相談員・ケアマネジャーとして介護現場で20年活躍。現在はフリーライターとして、介護業界での経験を生かし、介護に関わる記事を多く執筆する。保有資格:介護福祉士・ケアマネジャー・社会福祉士・保育士・福祉住環境コーディネーター3級。X https://twitter.com/web19606703
介護施設の差し入れを巡る2つのトラブル実例
家族が面会時に持参する差し入れは、入居者にとって「ちょっとした楽しみ」でもあります。しかし、その差し入れが、思わぬトラブルや施設との行き違いを招いてしまうケースも少なくありません。
この記事では、高齢者施設を訪問する際の差し入れルールや注意点、面会のマナーについてご紹介します。
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ご家族としては悪気なく行ったことでも、施設生活では思わぬ問題に発展するケースがあります。
食べきれない量のおはぎ
ある施設では、面会に訪れた親戚が「好物だから」と、おはぎを6つ差し入れました。しかし、入居者一人ではとても食べきれる量ではなく、おはぎの賞味期限も当日限り。
そのため、施設職員が対応に追われることになりました。介護のキーパーソンである娘さんに連絡し、事情を説明。幸いにも娘さんが施設の近所に住んでいたため、食べきれない分はその日のうちに取りに来てもらうことになりました。
アレルギー成分が命取りに!?
別のケースでは、入居者に甲殻類アレルギーがあるにもかかわらず、ご友人が「エビを使ったお菓子」を誤って差し入れてしまいました。幸いスタッフが事前に気づき、大きな問題にはなりませんでしたが、スタッフが見逃していたら命に関わる事態になりかねませんでした。
差し入れを選ぶときに確認すべき3つのポイント
差し入れをする際は、事前に確認しておきたいポイントがあります。思わぬトラブルを防ぐためにも、以下の内容をチェックしておきましょう。
なお、差し入れに関するルールは施設によって異なります。必ず事前に、施設の職員に確認することが必要です。
【1】 飲食物の持ち込みができるか確認
飲食物の差し入れは、施設ごとにルールが異なります。たとえば、衛生管理の観点から以下のような対応が取られている場合があります。
●生ものや手作りの食品は持ち込み禁止
●常温保存できる市販品のみ可
●飲食物自体の持ち込みが全面禁止
また、冷蔵や冷凍が必要な食品は、保管場所が限られていることもあり、量や内容によっては持ち込みを断られることもあります。
【2】 保存・管理がしやすいものを選ぶ
食品を差し入れる際は、個包装で常温保存ができるものがおすすめです。たとえば、小さな焼き菓子やゼリーなど、必要なときに少しずつ食べられるものが喜ばれる傾向にあります。
一方で、生菓子や果物など日持ちしないものや量が多いものは、食べきれずに廃棄せざるを得なくなることもあるため、せっかくの厚意が無駄になってしまう場合もあります。
【3】 入居者の健康状態に合わせた配慮が必要
高齢者の中には、嚥下機能(飲み込む力)が低下しているかたや、糖分・塩分の摂取に制限があるかたもいます。ご本人が「大丈夫」と言っていても、医師や栄養士の指示がある場合、施設として受け取りを断ることがあります。
そのような場合は、食品以外の差し入れを検討してみましょう。お花や写真、本、ハンカチ、手提げバッグなど、実用的なものがおすすめです。気持ちが伝われば、それだけで十分に喜ばれると思います。
差し入れをする前に覚えておきたい大切なマナーとは
「同じお部屋のかたに親切にしてもらっているから、何かお礼を渡したい」
このように思うご家族もいらっしゃるかもしれません。しかし、多くの高齢者施設では、他の入居者への差し入れを禁止しています。
その理由は、入居者はそれぞれ健康状態が異なるためです。良かれと思って差し入れた食品が、アレルギーの原因になったり、体調を崩すきっかけになったりすることもあります。
また、特定の人だけに差し入れをすると「なぜあの人だけ?」という感情を招き、人間関係に影響を及ぼすこともあります。
どうしても感謝を伝えたいときは、直接何かを渡すのではなく、まずはスタッフに相談してください。感謝を伝える別の方法を提案してくれるはずです。
なお、施設側が把握していない差し入れによってトラブルが起きた場合、責任を問われるのは施設側です。意図せず迷惑をかけてしまうことがないよう、こうした配慮もまた、大切なマナーのひとつといえるでしょう。