10か月で25kgの減量に成功した医師が考案 コレステロール値を改善 「7秒座り」「耳のくしゃもみ」
自覚症状がないため、見過ごされやすいコレステロール値の変化。コレステロール値が高いまま放っておくと動脈硬化が進み、心臓疾患や血管疾患のリスクが高まるので注意が必要だ。自宅で簡単にできるずぼらストレッチやつぼ押しで、コレステロール値を改善し動脈硬化を予防しよう!
教えてくれた人
工藤孝文さん/工藤内科院長
生活習慣の見直しでコレステロール値を改善
内科医としてこれまで10万人以上の肥満治療に携わってきた工藤孝文さん(工藤内科院長)が提唱するのが、コレステロール値を自力で下げる方法だ。
一般的に「コレステロール値が高い」というと血液中のLDL(悪玉)コレステロールが180mg/dL以上の場合を指し、その状態が続くと「高脂血症」と呼ばれる。一方、HDL(善玉)コレステロールが低過ぎても問題となるため、近年は「脂質異常症」と総称されるようになった。
「体内ではLDLとHDLが過不足なく働くことで身体の組織が維持されていますが、脂質異常症になると血液中に余分な脂質が残り、血液がドロドロになる。痛みや腫れなどの自覚症状がなく、放置すれば心筋梗塞や脳卒中などを引き起こす動脈硬化を進行させるため、“サイレントキラー”と呼ばれています。
私もかつて身長178cmにして体重92kgの肥満体でした。病院勤務の激務では『1日3食をバランスよく食べて適度に運動する』のは難しい。そこで、自分自身がストレスなくできる範囲で生活習慣を見直した結果、わずか10か月で25kgの減量に成功。コレステロール値も改善しました」(以下、工藤さん)
自らの経験をもとに、工藤さんが考案したコレステロール値改善メソッドを紹介していく。
2日に1回でも効果が得られる「7秒座り」
椅子の前で背筋を伸ばして立ち、両腕を肩まで上げる。この状態で7秒かけてゆっくり座る。そして1秒かけて立ち上がる。
「7秒かけて座る動作がきつければ3〜4秒から始めても構いません。2日に1回、10セットを目安に続けます。座るだけの簡単な動きですが、最も大きな筋肉である太腿・お尻を動かすので効率的にカロリーが消費できます。7秒座りのような軽い有酸素運動には、食事では増やしにくいHDLの産生を増やす働きがあり、コレステロール管理に効果があります。動脈硬化予防にも直結します」
7秒座りの際は転倒防止のため、キャスター付きの椅子やバランスの悪い椅子は使用しないよう注意しよう。
【1】背筋を伸ばして立つ
肩幅よりやや広めに足を開き、かかとに重心を置いて背筋を伸ばす。つま先は少し外側向きを意識する
【2】両腕を肩まで上げる
手のひらを下に向け、両腕を前に伸ばし肩の高さまで上げる(腕を伸ばすことで腹筋や背筋も同時に鍛えられる)
【3】7秒かけて座る
ゆっくり7秒間カウントしながら、椅子の手前1/3ほどのスペースに腰を下ろす
※この時、重心はかかとに置いて上体を前に倒さないこと
【4】1秒で立ち上がる
椅子にお尻が触れたら素早く立ち上がる。【3】【4】の動作を繰り返し1日10セット行う(2日に1回でOK)
※転倒防止のため、キャスター付きの椅子やバランスの悪い椅子は使用しない
移動中でも“ながら運動”を続ければ脂肪が燃えやすい体質に
ほかにも、日常の動作を応用してコレステロール値の改善に繋げる工夫が可能だという。
「例えば電車の車内や歯磨き中など、立っている時につま先立ちになってかかとをストンと下ろす動作を繰り返すだけでも効果を得られます。簡単な運動でも継続することで脂肪が燃えやすい体質に変わるため、『無理をせずに続けやすい』という観点が何より重要です」
耳の「つぼ押し」で数値を下げる
さらに東洋医学を積極的に取り入れている工藤さんが推奨するのが「つぼ押し」だ。
「西洋医学の観点からも体内の様々な生理機能に好影響を与えることがわかってきているつぼ押しは、手軽に実践できて効果を実感しやすいのが利点です」
なかでもコレステロール値の改善に効果のあるというつぼ押し術を工藤さんが解説する。
朝晩3〜5分で高い効果が期待できる「耳のくしゃもみ」
「耳にはコレステロール値の改善に効果が期待できるつぼが3つあり、耳全体を包むようにもむ『くしゃもみ』で刺激できます。中央にある『肝点』への刺激は全身の血流改善や代謝の促進が期待でき、副交感神経を優位にする『神門(しんもん)』への刺激は、LDLを増やす働きをするコルチゾールというホルモンの過剰分泌を抑える効果が期待できます。また、耳の穴のすぐ上にある『噴門(ふんもん)』は、消化や吸収を高めるダイエットのつぼとして古来有名です。これらをピンポイントで刺激すれば、さらに高い効果が期待できます」
つぼを押す際は「3秒押して1秒休む」を目安に左右それぞれ3〜5分かけて押していく。
血行が良くなり、耳全体が赤くなる程度までもむのが目安だ。
「痛みが出るほど強く押し過ぎないように注意してください」
「7秒座り」と「耳のくしゃもみ」の実践でLDLの値が168から130まで下がったケースもあったという。
<耳のくしゃもみ>のやり方
●耳と同じ側の手で、耳全体を「くしゃっ」と包んでもむ
●左右各3〜5分ほど、血行が良くなり耳全体が赤くなるまでもむ
鶏卵やイカはコレステロール値に影響しない?
このほか、食生活でもポイントがある。「卵は1日1個まで」など、「コレステロールを多く含む食品を避けること」が長年呼び掛けられてきたが、その我慢は無用だと工藤さんは言う。
「鶏卵やイカ、タコなどの高コレステロール食品を食べても、血中のコレステロール値に影響しないことが近年の研究で分かってきました。厚生労働省も、15年にコレステロールの1日の摂取上限量を撤廃しています。ただし、豚や牛などの動物性脂肪(飽和脂肪酸)や、マーガリンなどに含まれるトランス脂肪酸を多く含む食品は肝臓でLDLに合成され、コレステロール値が上がる原因になる。過剰な摂取は避けましょう」
アルコールの過剰摂取も肝臓への負担が増し、コレステロール値に影響を与えるケースがある。
「とはいえ、お酒はゆっくり飲んで適量でやめれば血流改善やストレス解消に役立ち、善玉のHDLを増やすことにも繋がります。飲み方を工夫して、例えば1杯目は炭酸水などで喉を潤し、2杯目からお酒を飲むようにすると、血糖値とLDLの急上昇をほどよく抑えることができます」
必要なのは我慢ではなく、工夫や調整なのだ。
イラスト/河南好美
※週刊ポスト2025年1月17・24日号
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