「慢性膵炎の母、白髪と白いおやつの話」NO老いるLIFE~母と娘のほんわか口福日誌~第35話
漫画家で栄養士の資格をもつうえだのぶさんの母は、原因不明の慢性膵炎。脂質控えめの食事が唯一の対処法。うえだ家では間食も低脂肪&高たんぱく低脂肪な「白いおやつ」。そんな母の関心事は「白髪染め」。髪もふんわり白くなり――。
白髪染めやめる宣言
母が突然「白髪染め、やめる!」と言い出しました。
「突然のフレイル状態」から復活し、落ち着いてきた初夏の頃でした。
82才の母、同世代に白髪の人はたくさんいますが、これまでずっと白髪を嫌がって染めてたのに何でまた急に?
母「歯も骨も弱った上に髪も薄くなった気がして…白髪染めは髪に負担がかかるって聞いたことあるけえ、ちょっとやめてみようと思って」
そうかそうか、急に身体が弱る経験をして色々怖くなったんだね。
うーん、でも白髪って似合う似合わないがあるからなあ。
まあでも、伸ばしてみて似合わないと思えばまた染めればいいんだし、気が済むまでやってみれば? と思いつつ、ちょっと嫌な予感が…。
母は基本のんきで陽気なんですが、「捨てられない」性格で、不要になったものも「まだ使えるかも~」と散々悩んだあげく手放せないタイプ。
そんな母が何十年も染めてきた白髪染めをすんなりやめられるかあ~?
案の定、白髪が伸び始めたとたん「やっぱり似合わないかな~~」「老けてみえるよね~~」とかへんじょこんじょ(あーだこーだ)言い出して、毎日それを聞かされる私が「じゃあやめてしまえー!」とブチ切れ、母凹む、を繰り返すテンプレな展開に…とほほ。
ただラッキーなことに、この夏の厳しい猛暑で日中外出できず、お友達に途中経過をみられることもなかったので、ウジウジ悩みながらも挫折せずなんとか白髪にチェンジできました。
さて、秋になりお友達との食事会で白髪を初披露することになった母。しっかり眉毛を書いて口紅もしっかり塗って(イメージは草笛光子さん)、いざご対面!
「いやーもう年じゃけえーそろそろ髪染めるのやめようと思ってー!見た目はどうでもええんっちゃ~、年じゃけえー!」
緊張して弾丸のようにしゃべる母にお友達が一言。
「えーすっごい似合っちょるわーねー!素敵じゃーねー♪」
そのとたん、「ふっ」と黙り込んでそのまま笑顔でおとなしくなりました。
それからしばらくは、「あ!〇〇さんに野菜持っていっちゃげよう!」とか「××さんしばらく会ってないけど元気かねえ~」とかいろいろ理由をつけては人に会いに行って「素敵じゃねーって言われたー♪」とご機嫌で帰ってきてました。
白髪染めをやめて髪が増えたかはわかりませんが、地肌との境がハッキリしなくなったので全体的にフワッとして見える気はします。なんにせよ本人が喜んでいるのでそれが何より。フレイルがきっかけで諦めたことが結果的に母を元気にしたなんて不思議ですね。
父さんとあっちで…
先月、父の28回目の命日を迎えました。
2人で晩ごはんを食べてたら、白髪の母がポツリと一言。
「“あっち”に行った時、お父さん私ってわかるかねえ…」
父が亡くなったのは58才の時。今の私と同じ年です。
「どうかねえ…。でも“あっち”って、自分の好きな年齢になれるんじゃないの?」(行ったことないからわかりませんが)
「まあ、心配なら棺にウィッグでも入れてあげるよ」と言いかけたけど、口にはしませんでした。
せっかく頑張って伸ばしたんだから、白髪に似合う服でも買ってお出かけして、美味しいものもしっかり食べて、もう少し“こっち”を楽しみましょうね、お母さん。
NOオイルMemo「たんぱく質が摂れる”白い”おやつ」
髪の毛の主成分は「たんぱく質」です。髪と爪は主に「ケラチン」というたんぱく質で、肉・魚・卵・大豆などに多く含まれています。いわゆる「王道たんぱく質」ですね。
ただし、「たんぱく質をいっぱい摂ると髪が増える」というわけではありませんのでー!
「たんぱく質が足りないと髪の生成に影響する」と思ってくださいね。
ちなみに髪だけじゃなく、肌も爪も筋肉も主成分は「たんぱく質」、なんなら骨も1/4くらいたんぱく質でできているので、「たんぱく質不足」はガチで身体全体に影響します。
そんなわけで、わが家では「おやつ」も低脂質でたんぱく質が摂れるものを意識しています。
「マシュマロ」は卵白とゼラチンが材料で、NOオイルなのでヘビロテ買い置きおやつ。
「メレンゲクッキー」も基本の材料は卵白とお砂糖だけでNOオイル。
意外なところでは「生麩」。こちらは小麦のたんぱく質。脂質は100g中0.9g(推定値)です。
「牛乳ゼリー」はたんぱく質と一緒にカルシウムも摂れるので、低脂肪乳を使ってよく作ります。
市販のスイーツは見た目さっぱり系でも意外と脂質が多かったりするので、簡単なものは手作りで、買う時は目を皿のようにして、ラベルにある栄養成分表示をチェックする、あたくしでございますよ。
絵と文
漫画家・うえだのぶ
イラストレーター・漫画家。58才。山口県で82才の母とふたり暮らし。40代で地元の短大に入学し、栄養士の資格を取得。地元山口県を拠点に、漫画を利用した食育や時短調理などの栄養講座の講師なども務めている。
ホームページ:uenobu.com アメブロ:https://ameblo.jp/abareinupoti/ インスタ: https://www.instagram.com/nobuueda/?hl=ja