福祉用具使用中の「ヒヤリハット情報」集約へ 安全性の向上が狙い
厚生労働省は、福祉用具の使用中に発生した事故情報を一元化し、いわゆる“ヒヤリハット情報”を集約する方針を発表した。年内にはデータベースを運用開始し、インターネット上で公表する計画だ。これにより、高齢者や介護現場の安全性向上に寄与するとともに、メーカーの製品改良にも貢献することを目指している。
事故情報の集約先がバラバラだった
現状、福祉用具の事故情報は一元化されておらず、各機関がそれぞれで集めたデータを公表しているが、市区町村から国への報告の仕組みは整備されていない。たとえば、独立行政法人「製品評価技術基盤機構(NITE)」や消費者庁は、メーカーからの報告を受けてウェブサイト上で事故情報を公開しているが、自治体や介護施設からの報告は国に集約されていない。たとえば「介護用ベッドと柵の間に首が挟まれた」といった情報などはバラバラに報告・公表されているため、どのような事故がどれだけ発生しているかの全体像が把握しづらいという課題があった。
事故情報の収集と対象範囲
今回構築されるデータベースでは、製品に起因しない事故やヒヤリハットの事例が対象に含まれる。具体的には、自治体職員や高齢者介護サービス事業者が報告するもの、福祉用具の使用中に発生した事故や、経年劣化や整備不良による事故も集約される。これにより、福祉用具の安全性向上に向けた改善策を講じるための根拠となるデータが得られる。
事故情報の公表と利活用
新たに集約されるデータベースは安全情報として、インターネット上で公表していくことを検討しており、厚労省から委託を受けた公益財団法人テクノエイド協会が実施する。介護現場や自宅での事故件数や事故要因の詳細な分析が可能となり、利用者や事業者が事前にリスクを把握し、適切な対応を取るための情報が提供される。これにより、事故発生を未然に防ぎ、製品の安全性向上に貢献することが期待される。また、メーカー側もこのデータを活用し、製品改良を進めていく見通しだ。福祉用具を使用する高齢者が増加している現状を踏まえ、より一層の安全対策が求められている。
事故減少への期待
今後、このデータベースの整備によって、高齢者や介護現場の安全性が飛躍的に向上することが期待されている。メーカーの製品改善や、介護現場での適切な使用の推進がなされることで、事故の減少につながるだろう。
構成・文/介護ポストセブン編集部