「働く意欲がわきません」50代女性の悩みに、91才料理研究家・小林まさるさんが回答|まさるの人生相談&お手軽レシピ・第3回
91才の料理研究家・小林まさるさんが、読者のお悩みに真摯に答える人生相談企画。第3回は50代女性の「老後の生き方」「仕事のモチベーション」についてのお悩み。90才を超えてなお、いつも前向きに人生を謳歌しているまさるさんの回答は? 読んですっきり、心は晴々!
答えてくれた人
料理研究家・小林まさるさん
昭和8年、樺太(現在はサハリン)生まれ。70才から長男の嫁で料理研究家の小林まさみさんのアシスタントを始め、料理研究家として活躍。著書『人生は、棚からぼたもち! 86歳・料理研究家の老後を楽しく味わう30のコツ』(東洋経済新報社)ほか、小林まさみさんの著書『血糖値を下げる1か月献立』(Gakken)では血糖値を下げる企画にチャレンジ。88才でYouTubeを始めるなど、新たな挑戦を続けるシニア世代の星。小林まさる88チャンネル https://www.youtube.com/@user-tk9ur8bu8s/featured
お悩み1「生きがいや生きる目的を見つけるには?」
「70才でアシスタントから始められ、料理研究家になり、現在91才と知って…ただただ驚きしかありません。そう分かっていても、とても91才には見えないです。長生きするだけでなく、生き生きと元気で若々しくいられる秘訣は何でしょうか?
私はまだ50代で、78才になる親がいます。また、介護士をしているため、自分が携わるお客様にも、何か楽しみや生きがいや目的をもっていただきたいと思っているので、何かアドバイスをいただけたらと思います」(53才・女性)
まさるさんの回答「年だからこそ、やるんだ!という心持ちが大切」
元気の秘訣はよく聞かれるんだけど、「年齢を言い訳にしない」ということ。やっぱり人間、年をとると、「年だから、面倒臭い」「年だから、恥ずかしい」とか言いたくなってしまうもんだ。だけど俺は、そういう考えこそまず捨てるべきじゃないかと思うんだ。
年をとったら、もう後ろにかん箱(棺桶)があるんだから、あれこれ言ってる暇はない。「年だからこそ、やるんだ!」という気持ちで前に進んでいるうちに、人生を楽しむ術が身についた。楽しみは人がくれるもんじゃない。自分で作るものだからね。
相談者さんの親御さんはまだ70代だろ? 草花を育てるとかペットの世話をするとか、もちろん料理もいい。何か小さなことでもいいから人生の楽しみを見つけて、チャレンジできたらいいよな。
俺が仕事を引退したのは60才。おっかあ(妻)は他界していたから、息子の飯の支度から掃除まで、家事をしながら、老後の楽しみだった魚釣りに出かけていたね。多い時は友人と週3回くらい海釣りに行ってたよ。
しばらくして、息子が結婚して同居生活が始まった。嫁のまさみちゃん(義理嫁・料理研究家の小林まさみさん)は、仕事をしながら夜は料理学校に通うようになって、頑張っている姿を側で見ていたから、俺は家事をすることで家族をサポートしてきたつもりだ。
まさみちゃんの料理の仕事がどんどん増えてきた頃、「お義父さん手伝ってくれる?」と言われて、俺は迷わず「よし、任せろ!」と答えた。それが70才のときだった。
あれから約20年、今日は1日撮影だ、帰ったら試作だ、食材の買い出しに行って、明日は生放送だって、毎日忙しく働いてきたから、悩んでいる暇がなかったなぁ。
俺が年の割に若々しく見えているのだとしたら、料理の仕事に関わる人たちは自分よりもうんと若いから、そんな人たちと一緒に仕事をすると、自然と心まで若くなっちゃうのかもしれないな。
息子とまさみちゃんにすすめられて、88才でYouTubeを始めた時は、「しゃべることなんて、俺にできるかな?」と思ったけど、「よし、やろう!」って決めたら、案外できるもんなんだ。
何でもやらずに後悔するより、やってみてダメだったほうが諦めもつく。俺の人生は、そうやって何にでもチャレンジしてきた。
91才になったいまも、やってみたいことがある。それは定年後や年配の男性を集めて料理教室を開くこと。教室が終わったら、俺の料理を肴にして、みんなで一杯飲んでワイワイやって…。それがいまの俺の夢なんだ。
まさるさん
やらずに後悔するよりも、小さなことでいいから挑戦しよう!
やりたいと思ったことには何にでも挑戦してきた人生だけど、たったひとつ、悔やむことがあるとすれば、「もっと親孝行をすればよかった」ということ。
俺の親父は75才で亡くなったのだけど、頑固で口数も多いほうじゃなかったから…。いまだに、「親父と酒でも呑んでもっと語り合いたかった。まぐろの刺身かなんかで一杯やりたかったなぁ」って思うんだ。
「親孝行したいときに親はなし。さりとて、墓に布団は着せられず」ってやつだな。
お悩み2「仕事へのモチベーションが上がりません」
「私は50代後半です。この先、仕事を続けていくことに不安があります。特に、身体(腰と足)が痛み、不摂生をしてはいないのですが、体調が優れないことがあり、毎朝、起きるのが辛く、仕事への意欲がなくなりつつあるのです。
40代までは仕事に意欲がありましたが、燃え尽き症候群になってしまったのか、心の中はポッカリと空虚なままです。
仕事があるだけでも幸せなのに、この先、小林さんのように90才までは難しいかもしれませんが、75才までは仕事を続ける必要があり、年金だけでは生活が難しいです。どのように仕事への意欲を持ち続けていますか? 現役で活躍している原動力は何ですか?」(56才・女性)
まさるさんの回答「50代は、料理でいえば“下ごしらえ”だ」
俺だって「今日は疲れたなぁ」「起きるのが辛いなぁ」っていう日もあるよ。だけど、仕事があるのはありがたいこと。弱音を吐きそうなときは「負けてたまるか!」って自分に言い聞かせているよ。
金のため、家族のため、自分が生きていくために、仕事をしなきゃならないから、気持ちを強く持つ、気合いを入れ直すのがいちばんだ。
まさるさん
仕事への意欲がわかないときは、気合いを入れ直す
俺だって91才になって、若いときみたいには動けないこともある。だけど「老い」には負けたくない。俺は生きている間、動ける間は、仕事をすると決めているんだ。
「自分でやれることは、自分でやる」「人に迷惑をかけない」「自分で決めたら、突き進む」。そんな信念を持ちながら、一歩一歩前に進んできた。
相談者さんは、足腰に不調を抱えているということだから、そこは体調と相談しながらやっていかなければならないだろう。しかし、まだ50代だろ? 料理で例えるなら、「下ごしらえ」だ。
40代で料理の材料を集めて、50代で下ごしらえをして、リタイアした60代からが料理は本番。これからいよいよ料理が始まると考えてみたら、ワクワクしないかい? 実際の料理でもいままでとは違う食材を組み合わせてみると、意外な発見や驚きがあって、モチベーションが上がるもんだ。
まさるさんの人生晴々!【まとめ】
「“年だから”を言い訳にせず、負けてたまるか!の精神で生きようじゃないか!」
悩みを吹き飛ばす“うまい一品”「和洋コラボのクセになるおつまみ」
常に新しいことにチャレンジし続けているまさるさんは、レシピでも意外な組み合わせに日々挑戦している。今回教えてくれたのは、チーズ&のりのおいしいコラボ!
クリームチーズ&のりのクラッカー
【材料】(2人分)
クリームチーズ…30g
のり佃煮…小さじ1
クラッカー…6枚
【作り方】
【1】 クリームチーズは5mm〜1cmの角切りにする。
【2】 クラッカーに(1)を6等分してのせ、のりの佃煮を少量ずつトッピングする。
「チーズとのりって意外と合うんだよな! のりの佃煮はしょっぱいから、のせすぎには注意して。クリームチーズに明太子やアボカドを混ぜてもうまいよ」
まろやかなチーズにのりの風味がなんとも絶妙で、ワインにも合いそう。人が集まった時にもぴったりで、みんなで気軽につまめる一皿だ。
――次回のお悩み相談もお楽しみに!
撮影/菅井淳子 取材・文/岸綾香
第1回「要介護で家族に料理を止められる」90代女性のお悩みに91才料理研究家・小林まさるさんがアドバイス|まさるの人生相談&お手軽レシピ・第1回
第2回「ヒステリックな妻は小生を介護してくれる?」70代男性の悩みに91才料理研究家・小林まさるさんがアドバイス|まさるの人生相談&お手軽レシピ・第2回