ホームや電車乗車時に揺れを感じたらどうする?大地震に遭遇したときの対処法<電車編>【お役立ち記事まとめ】
2024年は8月30日から始まった「防災週間」。宮崎県沖で発生した最大震度6弱の地震を受け、「南海トラフ地震臨時情報」が初めて発表されるなど、地震に向けた備えが重要となっている。もし、通勤、通学、買い物など電車での移動中に地震が発生したときはどのように対処すべきだろうか。防災のプロに、いざというときの行動を聞いた。
電車のホームは危険がいっぱい。混雑する階段付近は離れるべし
「JR、民鉄ともに駅舎の耐震化を進めていますが、強度に差があるのが現状です。駅舎の中でも特にホームは、電光掲示板や蛍光灯などの落下物や、自動販売機などの転倒しやすいものが多く、危険度が高い場所といえます」
と語るのは、災害危機管理アドバイザーの和田隆昌さんだ。
となると、まずホームからは離れた方がいいのだろうか…。
「東日本大震災では、階段付近で“群衆雪崩”が発生し、複数のけが人が出ています。一刻も早くホームから離れたい気持ちはわかりますが、階段付近は揺れで倒れてきた人でけがをする恐れがあります。ですから、階段付近には近づかない方が得策でしょう」(和田さん・以下同)
電車が停車中の場合は、車内で安全確保を
では、どこへ逃げるのいいかというと、ホームに電車が停車している場合、車内に逃げ込むといいという。
「停車している電車内は倒れてくるものや落下物が少ないので比較的安全なスペースといえます。電車内に避難したら、手すりやつり革などにつかまり、揺れが収まるのを待ちます。その後は駅係員の指示に従って行動しましょう」
ホームに電車が停車していない場合でも、ホームから離れようと階段に向かうのではなく、まずはかばんなどで頭を保護しつつ、近くのベンチや柱などにつかまって、揺れが収まるのを待つ方が安全度が高いという。
首都圏を中心にホームドア(※)の設置も進んでいるが、ない場所では、揺れた際にバランスを崩してホームから線路に転落する危険性もある。そのため、地震発生時は、線路側にも行かないようにし、線路の側にいた場合はすぐに離れるようにしよう。
揺れが収まった後も、様子がわかるまでは無理に移動せず、駅舎にとどまっていた方がいい。というのも、駅舎は帰宅困難者の一時滞在場所としての機能も持っているからだ。駅によっては、一定の乗客がその場にとどまれるように水や毛布を備え、トイレや公衆電話も開放してくれる。早く帰宅したいかもしれないが、焦らずに状況を見極めて行動しよう。
※プラットホームからの転落や、列車との接触事故防止などのため、線路に面する部分に設置された仕切り扉。
初出/女性セブン
衝突・脱線事故を避けるために3両目以降に乗車しよう
電車の中で最もリスクが高い場所は先頭車両だ。過去の衝突・脱線事故の死傷者の乗車位置も、先頭車両と2両目に集中している。
このことからも乗車する際は3両目以降の方が安全度は高いといえる。
また、電車内では座っていた方が安全だが、いつも座れるとは限らない。もし、立っているなら、どこが安全なのだろうか。
「電車は震度5程度の強い揺れを感知すると、緊急停止装置が作動するようになっていて、急ブレーキがかかります。立っている場合は手すりやつり革につかまり、倒れないように注意すること。特に満員電車など、車内が混雑している場合、急停止した拍子に将棋倒しが起こる危険性が高い。車内中央にいるとそれに巻き込まれる恐れがあります」
列車の追突事故のシミュレーションでも、追突時、車両中央にいた乗客は前方向へ投げ出されることがわかっている。ドア付近の方が体を固定できるだけでなく、座席の脇に隠れる格好になるので、車内の人の圧力を受けにくい。
とはいえ、必ずしもドア付近に立てるわけではない。中央部分に立つときは、緊急地震速報が鳴ったらすぐ、つり革や手すりをつかむよう、習慣づけておこう。
初出/女性セブン
電車で座っているときに地震と遭遇したら、まずは頭部を守ること
立った状態よりも安全度は高いものの、座る場所によって危険度は変わるという。
「座席の種類により対応は異なりますが、窓に背を向けて座るロングシート(長座席)に座っている場合、地震の際は前かがみになって姿勢を低くしてください。急ブレーキにより網棚の荷物が落ちてくる恐れがあるので、頭部をかばんや雑誌などで守りましょう。特急列車や新幹線など進行方向に向いて座るクロスシートの場合は、前方に投げ出されないように座席の間に体を隠すのがおすすめです」(和田さん・以下同)
荷物は、いざというときに頭部を守る“盾”として役立つので、網棚には置かず、手元に置いておこう。
網棚の荷物は地震発生時、凶器となるので、載せるのはおすすめできないという。座るときは、近くの網棚の上に大きな荷物が置かれていないか、確認しておくことも大切だ。
では、ロングシートの場合、どこに座るのが安全か。
「座席の中央部は、立っている人が急停車によって倒れてくる恐れがあるので危険度が高いといえます」
また万が一、電車が横転した場合、車内は洗濯機の中のように回転する。そうなったら、とにかく頭を打ちつけないように手すりやつり革を握るしかないのだが、座席の端側の方が、手すりと仕切りボードのおかげで体を固定しやすいメリットがある。
地震発生後、電車は線路などの安全確認がとれるまでは運転を再開できない。場合によっては車内に長時間閉じ込められることもある。
窓や扉は乗務員がいなくても開けられるため、不安に駆られて外に逃げ出したくなるかもしれないが、地震後の車外は危険だ。線路脇には高圧電線が設置されており、地震で電線が切れて落ちている可能性もあるからだ。まずは落ち着いて、乗務員の指示に従おう。
初出/女性セブン
電車に乗車中&ホームにいるときに起きた地震から身を守る方法13選
<ホームにいるときに地震が発生した場合>
【1】階段付近は「群衆雪崩」の恐れが。慌てて逃げない。
【2】ホームに停車中の電車がある場合は車内へ避難を。
【3】電車が停車していない場合は、頭を保護しつつベンチなどにつかまり揺れが収まるのを待つ。
【4】揺れが収まったあとも、駅舎にとどまる。
<電車に乗車するときの注意点>
【5】先頭車両と2両目がハイリスク。乗車する際は3両目以降の方が安全度が高い。
【6】電車内では座っている方が安全。
<電車に立って乗車しているときに地震が発生した場合>
【7】立つ場合は、ドア付近に。
【8】中央部に立つ場合、緊急地震速報が鳴ったらすぐにつり革や手すりにつかまって。
<座っているときに地震が発生した場合>
【9】ロングシートに座っている場合は、前かがみになって姿勢を低くする。
【10】新幹線など進行方向に向かって座るシートは、座席の間に体を隠す。
【11】ロングシートの中央部は危険度が高い。
【12】座席の端の方が体を固定しやすい。
【13】窓や扉を自力で開けることができてもむやみに外へ出ない。乗務員の指示にしたがおう。
教えてくれた人
和田隆昌さん/災害危機管理アドバイザー
イラスト/大窪史乃
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