禁止のはずの「転職者へのお祝い金」が横行…厚労省が医療・介護職業紹介業者への規制を強化
厚生労働省は2024年7月24日、医療・介護・保育分野の職業紹介業者に対する規制強化方針を決定した。背景には、業者の不正行為が事業所や施設の経営を圧迫し、現場の混乱を引き起こしている現実がある。
手数料稼ぎのために頻繁な転職を勧奨
規制強化方針の主な内容は、就職者に支払われる「お祝い金」や、転職を勧める行為の全面禁止だ。本来、ガイドラインでこれらの行為は禁止されていたが、業界では違反が頻発。お祝い金や転職勧奨の禁止について職業紹介事業の「許可条件」に加えることで、違反が繰り返されれば許可を取り消す対象となるとしている。
特に医療・介護・保育の各分野は人手不足が深刻であり、事業者側は迅速な人材補充のために職業紹介業者を利用するケースが多い。しかし一部の業者が、手数料を稼ぐために求職者に対して頻繁な転職を勧めるなど、悪質なケースも横行している。こうした不正行為が、業界の健全な運営に影響を与えていることが問題視されていた。
実態調査で浮き彫りになった問題点
厚労省は2023年8月から2024年5月までの間、全国約1100の職業紹介事業所を対象に調査を実施。その結果、6割の事業所で違反が確認された。
同省が公表した資料には、お祝い金の提供事例の数々が記されている。
〈某事業者は自社の募集サイトを通じた就職決定者に対しお祝い金を支払っている。 また、募集者が採用後に同サイトに支払う手数料にお祝い金を上乗せしており、手数料が高額過ぎる。〉(関東地方の事例)
〈募集サイトを通じてスタッフを1名採用したが、採用後約2ヶ月経過後に退職した。同サイトでは、就職後2か月経過後に採用者へお祝い金を支給している。同サイトに支払った手数料は返金してもらえないのか。同サイトの苦情窓口に電話したところ、「採用後1ヶ月以内の退職でないため返金できない。真偽不明の苦情連絡をしてきたため、募集サイトの利用を停止する。」と言われた。〉(近畿地方の事例)
高額な手数料を払って採用したのに2ヶ月で退職されては、雇った側はたまったものではない。その手数料の原資は診療報酬や介護保険料であり、回り回って国民の負担となるのだ。
今後の見通し
今後、厚労省は関係法令の改正や指針の策定を進め、規制強化を実行していく予定だ。また、ハローワークの窓口整備や、WEBサイトの充実などを図り、求人情報の提供をより透明かつ迅速に行うための体制も整えていくという。業界全体の健全化を目指し、行政と業界団体が連携して不正行為の排除を徹底していくことが期待されている。
構成・文/介護ポストセブン編集部