「80代男性、自宅近くの介護付有料老人ホームの入所を断られた!」NGになった理由とは?施設別入所条件と断られたときの対処法を専門家が解説
「老人ホームに入所を申し込んでも、断られるケースがることをご存知でしょうか」。そう話すのは相談員、ケアマネのキャリアを持つ中谷ミホさん。一体どんな理由で断られてしまうのか、入所を断られた際に取るべき対処法はあるのか、実例をもとに解説いただきました。
この記事を執筆した専門家
中谷ミホさん
福祉系短大を卒業後、介護職員・相談員・ケアマネジャーとして介護現場で20年活躍。現在はフリーライターとして、介護業界での経験を生かし、介護に関わる記事を多く執筆する。保有資格:介護福祉士・ケアマネジャー・社会福祉士・保育士・福祉住環境コーディネーター3級。X(旧Twitter)https://twitter.com/web19606703
入所を希望するもまさかの事態「ご入所いただけません」
要介護認定を受けたばかりのAさん(80代男性・要介護1)は、以前から自分に介護が必要となったら、自宅近くの介護付有料老人ホームに入所して介護を受けたいと考えていました。
ところが、介護付有料老人ホームに入所を申し込んだところ「今回はご入所いただけません」と断られてしまったのです。まさかの事態に、Aさんは戸惑いを隠せませんでした。
では、なぜ老人ホームから入所を断られてしまったのでしょうか。また、入所を断られた場合、どのような対処法があるのか、解説していきます。
老人ホームが入所を断る4つのケース
老人ホームが入所を断るのは、以下のような理由が考えられます。
ケース1. 入所条件を満たしていない
老人ホームや介護施設には、それぞれで入所条件があり、それを満たしていない場合、入所を断られます。
代表的な老人ホーム・介護施設の入所条件は以下の通りです。
●入所条件
適:○ 一部適:△ 不適:×
介護付有料老人ホーム(介護専用型)…年齢65歳以上|自立 ×|要支援1・2 ×|要介護1~5 ○
※介護専用型とは、要介護の人のみが入所できる施設のこと
介護付有料老人ホーム(混合型)…年齢60歳以上|自立 ○|要支援1・2 ○|要介護1~5 ○
※混合型とは、自立、要支援、要介護の人が入所できる施設のこと
住宅型有料老人ホーム…年齢60歳以上|自立 ○|要支援1・2 ○|要介護1~5 △
特別養護老人ホーム…原則65歳以上|自立 ×|要支援1・2 ×|要介護1~5 △(原則要介護3以上)
介護老人保健施設…原則65歳以上|自立 ×|要支援1・2 ×|要介護1~5 ○
グループホーム…原則65歳以上|自立 ×|要支援1・2 △(要支援2のみ)|要介護1~5 ○
ケアハウス…60歳以上|自立 ○|要支援1・2 ○|要介護1~5 △
サービス付き高齢者向け住宅…60歳以上|自立 ○|要支援1・2 ○|要介護1~5 ○
※グループホームは、原則として施設のある市町村の住民であること、認知症の診断がおりていることも条件。
このように、施設ごとに入所条件が異なるので、入所申し込みをする際には、事前に確認しておくことが大切です。
ケース2. 医療的ケアに対応できない
日常的に医療的ケアを必要とするかたが入所を希望しても、施設が必要なケアを提供できないと判断した場合、入所を断られることがあります。
具体的には、喀痰(かくたん)吸引や経管栄養の管理が必要なかたなどが挙げられます。
2012年から、一部の医療的ケアについては、一定の研修を受けた介護福祉士でも行えるようになりました。しかし、すべての施設で対応しているわけではありません。
また、看護師が配置されている施設であれば受け入れてもらえると考えがちですが、実際はそうでないこともあります。
看護師が配置されている施設でも、看護師の勤務時間が日勤のみというところも少なくありません。そのため、看護師不在の時間帯に医療的ケアが必要なかたは、受け入れを断られることがあるのです。
ケース3. 保証人・身元引受人がいない
保証人や身元引受人がいない場合にも、入所を断られることがあります。
保証人は、入所者本人の支払いに関する連帯保証を担います。一方、身元引受人は、病気やけがといった緊急時の連絡窓口であり、入所者本人の判断能力が低下した際に意思決定をする責任者となります。さらに、本人が亡くなった後の身柄の引き取りや所持品の引受人、各種手続きを行うのも身元引受人の役割です。
これらの役割を担う人がいない場合、施設の経営面や緊急時の対応に支障が生じる可能性があるため、入所を断ることがあるのです。
冒頭のAさんは、長年一人暮らしで結婚歴のない「おひとりさま」でした。身近に保証人や身元引受人をお願いできる親族がいなかったことが、入所を断られた理由だと考えられます。
ケース4. 認知症の症状が重い
認知症の症状が重い場合も入所を断られることがあります。
認知症による暴言や暴力、夜間の大声などの症状が見られると、ほかの入所者に迷惑をかける可能性があるためです。施設側は入所者全員の安全と快適な生活環境を保つために、入所を断ることがあります。
また、比較的元気なかたを対象とした施設では、認知症に対応できる専門スタッフや人員が配置されていないことがあります。そのような施設では、十分な介護体制が整っていないため、入所を断ることがあるのです。
入所を断られたときの対処法は?
断られた理由を確認する
老人ホームに入所を断られた場合、まずは断られた理由を施設側に聞いてみましょう。
具体的な理由を教えてもらうことで、改善点や代替案が見つかるかもしれません。また、断られた理由を改善できれば、再度申し込みができる可能性もあります。
Aさんのように、保証人・身元引受人がいないことが理由で入所を断られたのであれば、後見人制度や身元保証サービスを利用すれば、受け入れてもらえるかもしれません。
一方で、断られた理由が簡単に改善できない、または改善に時間がかかる場合は、ほかの施設を検討しましょう。施設ごとに入所条件やサービス内容が異なるので、別の施設であれば入所できる可能性があります。
例えば、日常的に医療的ケアが必要な場合は医療体制が充実した施設、夜間の見守りが必要な場合は、夜間の介護体制が整った施設を検討できます。
断られた理由を知っていれば、次の施設を効率的に探すことができるでしょう。
プロの力を借りて施設を探す
老人ホームに入所を断られた場合、地域包括支援センターや担当のケアマネジャーといったプロの力を借りて新たな施設を探すことも対処法の1つです。
地域包括支援センターやケアマネジャーは、地域の介護施設や老人ホームに関する情報を多く持っています。相談すると、入所する本人の状態や希望に合った施設を紹介してくれるので、条件に合う施設をスムーズに見つけられるでしょう。
さらに、民間の「施設紹介センター」の利用もおすすめします。民間が経営する老人ホームの情報を多く持っているので、幅広い選択肢を提案してもらえるでしょう。相談は無料で、直接出向くのはもちろん、電話やメールでの相談も可能です。複数の施設を比較検討したいかたにもおすすめです。
●「老人ホームは保証人がいないと入所できない?」おひとりさまが抱える悩みとその対処法