「要介護認定」のコツ|ケアマネは絶対教えてくれない【裏ワザ】
介護は、ある日突然始まる。千差万別な事情によって、受けられるサービスは大きく変わり、下手をすると必要以上の自己負担を支払う可能性もある。賢く楽するための、誰も教えてくれないすり抜け術を紹介したい。
2020年に東京五輪の華々しい熱気が過ぎ去った約5年後、団塊の世代が75才以上を迎える日本は、高齢者の約5人に1人、700万人以上が認知症になると推計されている。
親や夫の介護がひとたび始まると、生活は一変する。何よりまず不安になるのは金銭的な問題だろう。そんな時、頼みの綱となるのが、「介護保険制度」の存在だ。
要介護認定を受けると、年金収入などが年280万円未満の人の場合、原則1割の自己負担であらゆる介護サービスを受けることができる。
しかし、支給される金額には限度が設けられており、その額は介護の重症度を示す「要支援・要介護度」によって大きく変わってくる。
要介護認定を受けるときは必ず家族が立ち会う
家族に介護が必要になり、市区町村の介護保険担当窓口や地域包括支援センターで要介護認定の申請をすると、介護認定調査員が自宅や病院を訪れ、介護を受ける本人の調査を行う。
介護アドバイザーの横井孝治さんが話す。
「原則1回、90分ほどかけて、心身の状態を判断するための聞き取り調査が行われます。その調査結果は、後々の要介護度の決定に多大な影響を与えます。
しかし、この調査を本人任せにしてしまうと、『介護なんてまだ必要ないのに、子供に勝手に手続きされた』などと本人が強がりを主張して、台無しになってしまうケースも珍しくありません。今後の介護生活を左右する非常に大事な場面ですので、必ず他の家族が立ち会うようにしましょう」
要介護認定の区分は、介護の必要がない「非該当(自立)」から「要支援1~2」「要介護1~5」までの8段階に分かれている。きちんと調査員に状況を理解してもらい、しっかりと介護サービスを受けるため、“要介護度を上げる”次のポイントを知っておきたい。
ポイント1:訪問時間は夕方以降を希望する
まずは、訪問調査員が訪ねてくる時間帯が重要だ。高齢者は早起きする人が多く、体力に余裕のある午前中は元気に振る舞ってしまうことが多い。なので、疲労がたまってきた午後以降、できれば夕方に調査を依頼した方が大変さをより伝えられる。
ポイント2:主治医の意見書の内容を充実させる
要介護認定を下すのは、二次判定を行う「介護認定審査会」だが、一次判定でのコンピューターによる暫定の判定通りに決定するケースが多い。
しかし、主治医による意見書がしっかり書かれていれば、実態に配慮してランクが上がりやすくなる。認定調査時に特に気づかれにくい認知症は、「主治医意見書」で少しでも触れていると、配慮されやすくなる。大学病院などで認知症の専門医から診断書を受け取り、主治医に渡した上で意見書を作成してもらう方法も有効だ。
ポイント3:“できなさ”のポイントを掴んで効率よくアピールすべし
調査員のチェックでは、重点的に見るポイントがあるという。
「問題行動の程度や食事、排せつの状況、身体的な能力などを重点的に見られます。その部分の“できなさ”をアピールすると、要介護度を上げることが可能です。しかし、あまりにオーバーなことをやると、『主治医の意見書と合わない』と判断されて再調査を受けることになりかねません。よくあるトラブルなので、気をつけましょう」(横井さん)
訪問調査の限られた時間を無駄にしないよう、必要な情報を効率よく伝えたい。
ポイント4:普段のありのままを「スマホ動画」に残しておく
病気やけがなどの既往歴、日ごろの問題行動はしっかり記録を残し、調査員にメモを渡すのがスムーズに調査を進めるコツだ。
「要介護者の中にはプライドが高く、他人に弱い部分を知られることを恥だと考える人が実に多い。訪問調査では、本人の前で現在の状態を赤裸々に伝えることになりますが、それを嫌がって、本人が嘘を話すこともよくあります。もちろん、調査員もプロなので、嘘には気づきますが、最近は『要介護度を下げろ』という圧力が高く、“元気に見える嘘”は、そのまま捉えられる可能性も高いんです。
事前にメモを作っておいて調査員に渡すことで、そういった混乱を回避することにつながります」(横井さん)
メモの内容は具体的であればあるほど理想的だ。
単に「足腰が弱ってきた」というのではなく、「洋式トイレでも手すりがないと立ち上がれなくなった」、「大腿骨を骨折して人工骨を入れる手術を受けたため、股関節が開きにくい」など、「本当に困っている」と伝わる内容が望ましい。
さらに横井さんは続ける。
「認知症患者には、昼間は穏やかでも、夜になると暴れたり大声を出すという人も多い。訪問調査は夜間は行われませんから、問題行動の様子をスマホで撮影しておくといいでしょう。
そういったデータは特記事項として審査会に持ち込まれ、要介護認定の結果に大きく影響してきます」
隠しても介護は楽にならない。メモや動画を活用して、いつもの姿をはっきり伝えよう。
ポイント5:「区分変更申請」は意義申し立てのチャンス
要介護認定には定期的な更新が必要で、初回は6か月~1年後、それ以降は概ね1~3年後に再審査を受ける。
しかし、容体が急変した場合などには、更新時期を待たずに「区分変更申請」を行うことも可能だ。
「もしも認定の結果に納得がいかない場合は、『区分変更申請』をうまく利用するといいでしょう。しかし、『うちの親は2ではなく3だと思う』といったストレートな主張は弾かれる確率が高い。申し立てする際は、『先日、風邪をひいて体力が落ちた。風邪は治ったが、体力がそのまま戻らないから見直してほしい』というような言い方が受け入れられやすいです」(横井さん)
ポイント6:「暫定ケアプラン」でサービス受給を前倒しできる
調査員の訪問から要介護認定が決まるまでは1か月ほどかかる。しかし、緊急時には、認定結果が出る前にサービスを受けられる。
「半年ぶりに実家へ帰ったら、親が完全な認知症になっていて、そのままひとりで残すわけにはいかないという場合もあります。そういった時は、市区町村の窓口で地域包括支援センターを紹介してもらいましょう。ケアマネジャーが、『要介護3くらいだと思う』といった判断をして、暫定のケアプランを出せば、サービスを受けることが可能になります」(横井さん)
ただし、後に認定された正式な要介護度が、暫定で出されたものよりも低いと、自己負担の費用が発生する恐れがあるので注意が必要だ。
※女性セブン2019年4月11日号