犬も猫も長生きする時代!健康寿命を延ばす「手作りフード」がおすすめの理由を獣医師が解説
日本で飼育されている犬の平均寿命は14.65才、猫は15.66才(※)。獣医学の発展や飼い主の知識の向上、食生活の変化などに伴い、犬も猫も平均寿命は延びているという。一方で、アレルギー性皮膚炎や肥満、糖尿病、消化器疾患などの生活習慣病に悩まされるペットたちが増えているという。愛犬・愛猫の“健康寿命”を延ばすためには、どんな栄養が必要かを知り、その子にあった食事を用意するのがおすすめだ。毎日の食事で適切な栄養を摂れるよう、専門家が解説してくれました。
(※)2021年の一般社団法人ペットフード協会による「全国犬猫飼育実態調査」より。
教えてくれた人
須崎動物病院院長 須崎恭彦さん(※崎は「立つさき」ですが、本記事では「須崎」さんと表記します)
東京農工大学獣医学科卒業。「薬に頼らないで体質改善」をモットーに、食事療法やマッサージなどを活用し、犬や猫の治療を行う。主な著書に『電子レンジで簡単! 犬の健康ごはん』『はじめて作る 猫の健康ごはん』(共にマイナビ出版)など。
ペットに「手作りフード」がおすすめの理由
「子犬の頃から市販のペットフードを与えていたのですが、生後7か月頃から皮膚がただれ、毛が抜けてしまって…」
とは、都内でトイプードルと暮らすSさん(48才)だ。検査をしたところ、鶏肉や小麦にアレルギーがあることがわかった。以来、さつまいもや鮭入りの粥(かゆ)などを手作りして与えているという。
最近は市販のペットフードの質が向上している。農林水産省が定めた『ぺットフード安全法』により、原材料名や原産国名などの表記が義務づけられているほどだ。バランスよく栄養が摂れるため、忙しい飼い主にはありがたいが、アレルギーのある犬や猫には、食べられないものも多い。
「ペットのアレルギーや肥満に悩む飼い主さんが増えているのは確かです。対策として、手作りフードをすすめています。切り替えて数週間から数か月ほどで、脱毛、湿疹、嘔吐、肥満、下痢などが改善したという声を聞きます」
とは、須崎動物病院の院長・須崎恭彦さんだ。ペットも私たちと同じ生き物なのだから“医食同源”は当然のこと。量より、何を食べさせるか、考えることが大切なのだ。
こんなわんちゃん・猫ちゃんに「手作りフード」がおすすめ!
□ 市販のフードだとアレルギーが出る
犬の主なアレルゲンは牛肉や鶏肉、猫は小麦などの穀類だ。市販のペットフードに含まれていることが多いので注意が必要。
□ ふとっちょ
犬も猫も室内飼いが増えた影響で、運動不足や食べすぎによる肥満が増加。生活習慣病の原因になるので食事の見直しは必須。
□ ふだんあまり水を飲まない
猫は水分が不足すると腎臓の病気になりやすい。手作りフードなら、スープ状にするなどして水分を摂らせやすい。
肉や魚、野菜をバランスよく組み合わせる
体質に合った栄養満点のご飯を作るためには、まず必要な栄養素と食材について知ることが大切。加熱&細かく切る&だしで風味付けが基本ルール。その理論を須崎さんに教えてもらった。
「犬は雑食のため、一部の食材を除き、人間が食べられるものはほぼ食べられます。一方、猫は肉食。だからといって肉だけ食べさせればいいわけではなく、ビタミンやミネラルも必要。野菜もバランスよく与えることが大切です」(須崎さん・以下同)
市販のペットフードなら、たんぱく質やビタミンなどがバランスよく配合されているが、手作りとなるとどんな食材を組み合わせたらよいのか。
「犬・猫ともに、体を作るためのたんぱく質、つまり肉・魚は必要です。完全栄養食とされる卵もおすすめ。ただし、加熱して与えること。
野菜類はねぎやアボカド以外、ほぼ与えて大丈夫ですが、草食動物に比べて腸が短いので、野菜は消化がしづらいんです。あげるときは細かく切ってしっかり加熱し、やわらかくしてから与えてください。
米やうどん、パスタなどの穀類もおすすめです。食物繊維が多く、腸内の環境を整えてくれるからです。多くの食材にいえますが、のどに詰まらせないよう、細かく切ってあげましょう」
加えて、皮膚や粘膜の健康にかかわるビタミンA、免疫にかかわる亜鉛、コレステロールの吸収抑制やインスリンの分泌に必要なタウリン、アレルギーの原因・ヒスタミンの分泌を抑えるメチオニン、脂肪の代謝を促すアルギニンなどがあると理想的だという。
「とはいえ、栄養素を気にしすぎる必要はありません。アレルギーなどの症状が出ているなら、それに見合った食材を選ぶべきですが、基本的には人間の食事と一緒。肉や魚、野菜をバランスよく与えていれば問題ありません」
与える量は個体差もあるが、犬なら耳から上の頭分の量が1食分。猫なら1食70~100gを1日2食が目安だ。
◆犬の1食分の目安
犬の1食分は耳から上の頭分ぐらいが目安とされる。
手作りフードへの切り替え方「約20日かけて少しずつ移行を」
もし作っても、食べてもらえなかったらどうすべきか。
「犬・猫ともに、最初は食べ慣れない食材を警戒します。特に猫はその傾向が強く、生後6か月以内に食べていない食材に対しては、得体の知れないものだと認識したり、おもちゃだと思って遊んでしまうこともあります」
ペットたちの警戒心を解くには、根気強さが必要。最初の1週間は、それまでのフードにトッピングして与え、2週目で少しずつ手作りフードの量を増やしていく。そして体調に問題がないようなら3週目で完全に切り替えるなど、少しずつ慣れさせることが大切だという。
「その日の体調を見て、食材や量を調整できるのも手作りの醍醐味。水をあまり飲んでいないようならスープにする、便秘気味なら食物繊維が多い食材を選ぶ、などです」
持病があったり、高齢のペットには特に手作りがおすすめだという。