大ヒットのセラピーロボット『Qoobo』が家族のように愛される理由
ふわふわのクッションから伸びる1本のしっぽ‥‥『Qooboo(クーボ)』はクッション型のセラピーロボットだ。開発したのは、ロボットベンチャー企業・ユカイ工学の女性デザイナー。不思議な造形で見ているだけで癒されてしまうこの商品は、どのように生まれたのだろうか?
『Qoobo』を開発したのは、東京・新宿にオフィスを構えるユカイ工学。ユニークなロボットを制作するベンチャー企業だ。
開発のきっかけとなったのは、’16年4月に行われた社内の開発合宿でのプレゼンだった。4~5人のグループに分かれ、「こんなものがあったらいいな」という企画をプレゼンテーションする。発案したのはデザイナーの高岡尚加さん。北海道出身の高岡さんは、実家で14匹もの犬を飼育していた大の愛犬家だ。
しかし、東京で働きはじめてからはなかなか帰省して愛犬をかわいがることも叶わず、寂しい思いをしていたという。そこで、「同じようにペットを飼えない人のためのロボットを開発できないか?」と考えた。
『Qoobo』には顔がなく、動物の胴体のような丸いクッションにしっぽだけがついており、犬にも猫にも見えるような想像力を刺激するデザインになっている。
「顔がついていると、人それぞれでどうしても好みが分かれるもの。なのであえて顔はつけず、クッションの手触りやしっぽの動きでかわいさを演出することにしました」(高岡さん)
開発の中で特に力を注いだのは、ペットのように愛着が湧くしっぽの動き。最新テクノロジーを利用することもできるが、気軽に購入したりプレゼントしたりするには、ある程度価格を抑えなくてはならない。そこで、速度の変化を感知する「加速度センサー」を採用。加速度センサーはスマートフォンやゲーム機、カーナビなどさまざまな電化製品に使われている技術だ。
『Qoobo』では、クッションを撫でるとその撫で方の強弱や速さを加速度センサーが感知。そっと撫でるとしっぽがゆるゆると動き、たくさん撫でるとぶんぶんと動く。また、触っていない時でも、電源を入れておけば「寂しさ」や「空腹」といった『Qoobo』の持つ感情に応じて、しっぽがゆっくりと動くようになっている。
介護ロボットとしてセラピーで活躍する日を目指し…
開発合宿から1年7か月を経て、’17年10月に発表。発表と同時に配信された動画は世界中で注目され、再生回数は1週間で1000万回を突破した。そして、’17年12月末に予約販売を開始すると、20~30代の女性をメインに話題を集め、初回の出荷数6000個は予約分で完売。従来のガジェット好きのイメージである40~50代の男性以外にも注目されるロボット商品となった。
ユーザーの中には、名前やアクセサリーをつけて家族のようにかわいがっている人が多いという。
今後は介護ロボットとしてセラピーで活用することも視野に入れているという『Qoobo』。ロボットが私たちの身近な存在となる未来は、すぐそこまで来ているのかもしれない。
【データ】
幅320×奥行き520×高さ150mm、約1kg。カラーはハスキーグレー、フレンチブラウンの2色。
価格:1万2960円
ユカイ工学 https://qoobo.info/
※女性セブン2019年1月1日号