ダイソーの100円アイテムで高齢者に大切な「口腔ケア」を!消耗品はリーズナブルに揃えてケアは欠かさずに【専門家監修】
健康寿命を延ばすために歯のケアは欠かせない。「100円ショップでも口腔ケアに活用できるアイテムはたくさん扱われています」とは、訪問看護師として口腔ケアの指導を行っている飯塚千晶さんだ。値上げが続く中、毎日使う口腔ケア用品は少しでも価格を抑えたいもの。そこで100円ショップ・ダイソーの口腔ケアアイテムをピックアップ。使い方のポイントについて教えてもらった。
口腔ケアグッズは100円ショップが狙い目
「健康寿命を延ばしていただくためには、毎日、歯やお口の口腔ケアをしていただくことが大切です」
こう話すのは、訪問看護師の飯塚千晶さん。飯塚さんは新宿を拠点とする「訪問看護ステーションやごころ」を運営しながら看護師として、高齢者の自宅に訪問し、口腔ケアや指導を行っている。
「年齢を重ねるにつれ、歯やお口のトラブルも増えてくるので、シニア世代はとくに毎日のケアを継続することが大切です」
毎日のことなので口腔ケアに利用するアイテム選びも気になるところ。しかし、物価が上がっている中、消耗品である口腔ケア用品はなるべく価格を抑えたいもの。口腔ケアアイテムに100円ショップのものを活用してもいいのだろうか?
「介護用に開発されたものは品質が良いですが、価格が高いものもありますよね。消耗品などは100円ショップのアイテムでも代用できるものもあります。
ただし、口内を潤わせるための保湿剤に関しては、100円ショップでは扱っていないことが多いので、専用のものをスーパーやドラッグストアの介護用品売り場で購入していただきたいですね」
まずは、口腔ケアに必要なアイテムからチェックしていこう。
在宅介護で口腔ケアをするときに準備するもの
・自立している人:歯ブラシ、タフトブラシ、コップ、歯磨き剤、保湿剤など。
・介護が必要で寝た状態が多い人:歯ブラシ、タフトブラシ、コップ、うがい受け(洗面器など)、エプロン、洗口液、保湿剤など。義歯を使用している人は、入れ歯容器、入れ歯洗浄剤、入れ歯専用ブラシなど。
「100円ショップでも扱っているものは、歯ブラシ、うがい受けやエプロンなどの基本的なもののほか、細かい部分を磨けるタフトブラシなどもあります。
また、口内を照らすのにペンライトや鏡を使うと磨きやすくなりますので、100円ショップのものを活用するのもいいでしょう」
ただし、入れ歯洗浄剤に関しては、100円ショップのものはあまりおすすめしないという。
「入れ歯洗浄剤は、義歯に使われている金属部分がサビたり、義歯が変色したりしない成分を注意して選ぶ必要があるため、普段使っているメーカー製のものがあるならそちらを継続したほうがいいでしょう」
100円ショップのアイテムはリーズナブルで便利だが、家族が在宅で口腔ケアを始める前には、必ずかかりつけの歯医者さんや訪問看護師に正しい方法を聞いてから行ってほしいと飯塚さんは話す。
「歯の詰め物や歯茎やほほの裏の肉に傷や腫れなどの異変がないかなども確認しましょう。義歯のかたの場合は、入れ歯のかみ合わせが合っているかなども見てください。異変がみつかったら訪問看護師に相談したり、歯科医院で診療してもらったりすることをおすすめします。
口腔ケアを続けることは根気のいることで結果がすぐにわかるわけではないですが、ケアを続けることで得られるものは大きいと考えています。
高齢者のかたにとって食べることは大きな楽しみのひとつです。人生の最期まで食べ物を口から食べるためにも、ご自身やご家族の口腔内に少し目を向け、より良い口腔内環境が維持できるように、意識していただけたら嬉しいです。
100円ショップのアイテムを上手に活用しながら、口腔ケアに取り組んで欲しいですね」
100円ショップの「口腔ケア」グッズ6選
飯塚さんの話をもとに、100円ショップで手に入る「口腔ケア」グッズ6品をワンポイントアドバイスとともにご紹介。
※価格はすべて税込み110円。
うがい受け
うがいをした水を吐き出せる容器。フックが付いているので持ちやすい。
「うがい受け(ガーグルベースン)は、洗面所まで移動ができず、ベッドなどで介助しながら歯磨きをするときに利用します。使うときは、介助者が受け口を口元に当てるのではなく、顎の下に当てるとこぼれにくいです」
口内ミラー&ポイントブラシ
鏡により見にくい歯の裏なども確認できる。タフトブラシは歯間など狭い隙間も磨けるので便利。
「歯磨きをするときは、手鏡などを使って歯を見ながら行うと汚れが落としやすくなります。
奥の歯や歯間は見にくいので、こちらのようなスティックタイプの口内ミラーを使うと、より磨きやすくなります。使うときには、鏡の裏を口内の頬にやさしく押し当て頬を広げると奥歯が見えやすくなりますよ」
歯間ブラシ
長めのハンドル付きなので、ケアする人にも使いやすい歯間ブラシ。キャップ付きなので衛生的。
「歯ブラシだけでは歯の間の食べカスがとれない場合が多いので、歯間ブラシも併用するのがおすすめです。
使うときは力まかせにゴシゴシすると、歯肉に傷がついて出血する場合もあるので、やさしく使うようにしてください。微量の出血は歯ぐきが引き締まる作用もあるため、歯間ブラシで歯ぐきに刺激を加えることは、歯と歯ぐきに健康に有効な場合も。なお、頻繁に出血する場合は、歯肉炎のリスクもあるので歯科医に相談してください。
部分入れ歯のかたの場合は、必ず部分入れ歯を外して、自分の歯と歯の間に使ってください」
はみがき用綿棒
出先での口腔ケアにも使えるキシリトール配合の綿棒。片方の先がとがった形なので歯のすき間に入れやすい。コットン素材が歯茎にもやさしく、香料・アルコールも無添加。
「デイサービスや外出先で歯磨きが難しいときは、携帯用の綿棒があると便利です」
舌クリーナー
舌ごけなどの汚れを落とすブラシ。歯に当たりにくい薄型で使いやすい。
「舌ごけ(舌のこけ)がある場合は、舌ブラシで奥から手前に優しく動かして取ってください。力を入れてゴシゴシこするのは厳禁。また、舌が乾燥しているときは、口腔ケア専用の保湿ジェルや水などで湿らせてから使用するようにしましょう」
食事用エプロン
長さ100㎝のロングタイプの汚れ予防エプロン。食事用以外にも口腔ケア用としても活用できる。首元(背面)に面ファスナーが付いているので、介護者が脱ぎ着させやすい。
「口腔ケアで洋服を汚さないためには、水や油をはじく素材のエプロンは使い勝手がいいです。首元が締まりすぎないように面テープで調整してあげてください」
口の中の健康を守るためにも、100円ショップのアイテムを活用してコストを抑えながら毎日の口腔ケアを継続したい。
教えてくれた人
訪問看護師・飯塚千晶さん
大学病院の頭頚部外科・口腔外科勤務を経て、2018年に看護師の母と妹とともに「訪問看護ステーションやごころ」を設立。日々の訪問看護の傍ら「新宿食支援研究会」にも参加し、看護師のための口腔ケアについて考えるワーキンググループのリーダーもつとめる。歯科医・歯科衛生士との連携も深め、ひとりでも多くの人に「最期まで自分の口でおいしく食べてもらう」ためのサポートに尽力している。http://souken.group/
取材・文・撮影/本上夕貴
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