「ブーたんはドリフのクッションみたいな存在」と加藤茶から言われた高木ブー|連載 第95回
大好評発売中の自叙伝『アロハ 90歳の僕 ゆっくり、のんびり生きましょう』(小学館)では、加藤茶さんらブーさんをよく知る8人が、愛を込めて「自分にとっての高木ブー」を語っている。感激しつつ読んだブーさんが、お返しに(?)それぞれの人への思いやエピソードを話してくれた。今回は8人のうちの3人について。(聞き手・石原壮一郎)
自分の見られ方は自分がいちばんわかってないなと思った
早いもんだね。僕の自叙伝『アロハ 90歳の僕 ゆっくり、のんびり生きましょう』が発売されて、もう1ヵ月以上が経った。僕自身のことはもちろんだけど、ザ・ドリフターズのメンバーや「全員集合」以前も含めた活動について、こんなに詳しく書いてある本はほかにないんじゃないかと思ってる。
いろいろな感想をもらってるけど、まずはドリフのファンの人たちが満足してくれてるみたいでよかった。それから、僕のちょっと後輩の年代の人たちが、「これからの生き方のヒントになりました」「気持ちが楽になりました」って言ってくれているのも嬉しいね。僕は「ただ流されてきた」って話をしてるだけなのに、なんかヒントになることがあるのかな。
本を読んでて面白かったのが、「ブーさんと私」のページ。加藤(茶)から始まって、俳優の赤井英和さんやエッセイストの海老名香葉子さんやサザンの関口和之君ら僕をよく知る人たちが、僕について語ってくれてる。ほかのページは自分で書いて何度も確認してるから、本になってから読んでも新しい発見はない。でも、このページは本になってからのお楽しみで、あえて事前に見ないようにしてたんだよね。
加藤は「ブーたんは、ドリフターズの中ではクッションみたいな存在ですね」と言ってくれてた。そうか、そんなふうに見てくれてたんだなと感慨深かったな。60年近い付き合いだけど、相手をどう見てるかなんて話はしないじゃない。あらためて「そうか、自分はクッション役をやってたのか」なんて思ったりもしてね。たしかにそうだったかもしれない。
最後に「僕は生まれ変わっても、またメンバーを組んでお笑いをやりたいと思ってる。そのときもブーたんと一緒にやれたらいいな」とも言ってくれてた。嬉しいよね。僕は加藤や志村がいかにすごい才能の持ち主か、誰よりもよくわかってる。あの二人のやり取りは、見ていて惚れ惚れした。クッションとして役に立てたらこんな光栄なことはないよ。
それにしても、いろんな人のインタビューを読んで、自分の見られ方は自分がいちばんわかってないなと思ったね。どの人のインタビューにも「そう見てたんだ」「あの時、そう思ってたんだ」って驚きがあった。もちろん、どれも嬉しい驚きだけどね。
次に登場している赤井英和さんは、20年ぐらい前に赤井家の庭で開かれる「餅つき大会」に、僕がやって来てウクレレを演奏したことに感激したと書いてあった。もともと娘のかおるが赤井さんと仕事のつながりがあって、「お父さんも一緒に行こうよ」という話になったんだったかな。もちろん、赤井さんが元ボクサーで俳優になったことはよく知ってた。テレビで見てる赤井さんに好感を持ってたんだろうね。そうじゃなかったら行かないから。
実際に会ったら、想像以上の「いい男」だった。すごく歓迎してくれたし、もっとごつい感じの人かと思ってたら、腰が低くて細やかな気配りもできる。少し話しただけで、まっすぐで誠実な人だということが伝わってきた。それから気持ちよくお付き合いさせてもらってます。また、赤井さんところの「餅つき大会」でウクレレを演奏したいな。
その次は、音楽プロデューサーの安達(正観)君。彼が27年前にひょんなきっかけで、僕に「ウクレレのアルバムを作りましょう」って提案してくれたんだよね。それから彼と一緒に何枚もアルバムを作った。面と向かって言うのは気恥ずかしいからここでこっそり言うけど、「ウクレレ奏者・高木ブー」の生みの親だと思ってる。とても感謝してます。
レコーディングのときには遠慮なく注文を出すって話をしてるけど、彼はホントに厳しいんだよね。でも、それがとってもありがたい。要求されたことを必死で乗り越えて、いざ出来上がったCDを聞いてみると「自分はこんなことができるんだ」と驚いちゃう。ウクレレ奏者としての僕の可能性を引き出して、実力を伸ばしてくれたと思ってる。ほかの人は、僕に遠慮して「やりたいようにやってください」なんて言うだけだもんね。
あれ、いろいろ話してたら長くなっちゃった。続きはまた次回ってことで。そうそう、朝日新聞の「語る-人生の贈りもの‐」というコーナーに、先週の月曜日(5月8日)から14回連続(土日の掲載はなし)で出ています。今日はどんな話かな。そろそろ「雷様」のことかな。僕の人生を凝縮して振り返っているので、よかったら読んでください。
高木ブー(たかぎ・ぶー)
1933年東京生まれ。中央大学経済学部卒。いくつかのバンドを経て、1964年にザ・ドリフターズに加入。超人気テレビ番組『8時だョ!全員集合』などで、国民的な人気者となる。1990年代後半以降はウクレレ奏者として活躍し、日本にウクレレブーム、ハワイアンブームをもたらした。CD『Hawaiian Christmas』『美女とYABOO!~ハワイアンサウンドによる昭和歌謡名曲集~』『Life is Boo-tiful ~高木ブーベストコレクション』など多数。著書に『第5の男 どこにでもいる僕』(朝日新聞社)、『高木ブー画集 ドリフターズとともに』(ワニ・プラス)など。YouTube「【Aloha】高木ブー家を覗いてみよう」(イザワオフィス公式チャンネル内)も大好評。同チャンネルでは期間限定で「ドリフ大爆笑」の名作コントのデジタルリマスター版を続々と配信している。3月20日に『高木ブー画集RETURNS ドリフターズよ永遠に』(ワニ・プラス、2,700円+税)が発売。4月6日には、この連載をまとめた『アロハ 90歳の僕 ゆっくり、のんびり生きましょう』(小学館、2,200円+税)が発売! イザワオフィス公式YouTube新企画「ドリフ麻雀」は、5月6日から練習試合の公開がスタート(本格スタートは6月から)。詳しい案内とサポーター募集はこちら。取材・文/石原壮一郎(いしはら・そういちろう)
1963年三重県生まれ。コラムニスト。『大人養成講座』『大人力検定』など著書多数。5月17日に最新刊『失礼な一言』(新潮新書)が発売される。この連載ではブーさんの言葉を通じて、高齢者が幸せに暮らすためのヒントを探求している。
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