エンディングノートを親子で記入するときの尋ね方例 子が「親との終活準備」をする際の上手な話し方【専門家監修】
子供世代は終活を終わらせているのに、本来先にやるべき70~80代の親が手つかずという家が増えている。介護、墓、相続…決めておかないと困るのは後処理をする子供世代。終活問題に詳しい税理士の羽田リラさんに解決策を聞いた。
終活を強制する前にまずは親と会話を!
上記の漫画は、東京都在住・57才女性の実例だ。
親にエンディングノートを渡しておけば終活を始めると思いきや、その手の話は嫌がって避けられてしまい、終活の難しさを実感したという。終活で押さえるべきは、財産や借金の有無だと羽田さんは言う。しかし、金銭にかかわる情報を共有するのは親子でもハードルが高い。
「子が親に終活を始めようとお願いしても、渋られる原因の1つに親子間のコミュニケーション不足があります」
とは、認知症に詳しい医師の榎本睦郎さんだ。頻繁に会話し、信頼関係ができていれば、あえて終活と銘打たなくても、会話の流れの中で財産に関することも話し合える。しかし関係性が薄いと、子供とはいえ任せていいのか親も不安になる。終活完遂の道は、親との会話からなのだ。
【親子で終活実践編】親子で聞き書きエンディングノート
親子の会話に慣れてきたら、その延長で必要なことを聞き出してしまおう。最低限、聞いておくべきことを書き込み式で紹介する。
「親が終活に対して腰が重いのは、やらなくても困らないからという理由もあります」
とは、前出の税理士・羽田さんだ。老化により難しい作業がしづらくなるなど、肉体的な面で“できない”ということもあるが、自分の死後のことは考えたくないし、自分の子供たちは相続などでもめないと思い込んでいる。だからしなくてもいいと考える人も少なくないという。
その場合、親に終活をしているという意識を持たせず、日常会話の流れで聞くのが得策だ。このとき、最初に財産について聞くのは控えたい。身構えられて、せっかくの信頼が崩れることもあるからだ。
「お母さんって誕生日は7月7日だよね。昭和何年生まれなの?」
「最初は家族の思い出を振り返りながら、親自身のことを聞くといいでしょう」(羽田さん・以下同)
親の死後、相続や銀行口座の整理の際などで、生まれてから死ぬまでの戸籍謄本が必要になるのだが、出生地をはじめとした過去の戸籍まで、さかのぼって取得するのは大変だ。戸籍を聞き出すというより、小さい頃はどこに住んでいたのか、新婚時代はどこに住んでいたのかなど、ルーツとして聞いておくのがおすすめだという。
「お母さんって生まれはどこなの?新婚のときはどこに住んでいたの?」
「次に、健康保険証やマイナンバーカードなど、公的証明書の番号を押さえておきましょう。紛失した場合、代わりに対応ができるよと親側のメリットを提案しましょう」
「紛失しても安心できるよう番号を教えてくれる?」
このとき、可能ならばパソコンやSNSのアカウントなどのパスワードも聞いておくとよりいい。
葬式や墓については最後の最後でOK
ここまで聞けたら、いよいよ銀行口座や保険など、資産について踏み込もう。
「通帳(クレジットカード)こんなに持っているの?一緒に整理しよう!」
「私は最近に見直しをしてかなり得したんだけど、お母さんはどんな保険に入っているの?」
親が渋ったら、
「財産を巡ってきょうだい間で争いになるのは嫌だな」
などと情に訴えて伝えると、信頼関係が築けていれば協力してもらえるケースが多いという。
「余裕があれば、どんな最期を迎えたいか、葬式や墓はどうしたいか、ペットについても、世間話的に聞いておきましょう」
「お葬式のときに困らないよう、親戚について教えて!」
親の終活に伴走することは、自分の老後を考えることにもつながる。親任せにせず、寄り添いつつ一緒にやり切ろう。
教えてくれた人
羽田リラさん/税理士。銀行勤務などを経て、税理士として独立。相続相談や資産運用の個別相談、各種セミナーなどを開催。共著に『金融機関出身の女性税理士が書いた 社長に信頼される資産防衛術』(アニモ出版)などがある。
榎本睦郎さん/医師。榎本内科クリニック院長、日本老年医学界専門医。高齢者を中心とした地域医療に取り組む。著書に『老いた親へのイラッとする気持ちがスーッと消える本』(永岡書店)など。
取材・文/前川亜紀 イラスト/白ふくろう舎
※女性セブン2023年4月27日号
https://josei7.com/
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