介護職員の冬のボーナスに不満の声が続々!3%賃上げ実施後のリアルな声を現役介護ブロガーが考察
10月から介護職の処遇改善が施行され、ベースアップが恒久化された。これを受け、初めての冬のボーナスが支給されるシーズンだが、実際のところはどうなのか――。介護施設で働きながら、介護ブロガーとして活躍するたんたんさんこと、深井竜次さんが、冬のボーナス事情を考察。現場のリアルな声とともに紹介する。
介護職員に直撃!「冬のボーナスはどうだった?」
介護士ブロガーのたんたんと申します。
7年間介護現場で働いてきて得た経験や知見をもとに、「多くの介護士さんが幸せな働き方を実現できるように」という思いでサイト運営をしています。
介護ポストセブンでもこれまで僕が介護現場で経験したできごとや学びを、「介護士さんをはじめ介護にかかわる方の参考になれば…」と思って記事を書いています。
今回のテーマは12月ということで「介護職の冬のボーナス」について書いてみたいと思います。
僕自身の経験と、周りの介護職として働く人たちが冬のボーナスに感じたことを、読者の皆様に共有していけたらと思っております。
処遇改善でボーナスは増えるのか?
10月から介護職員の基本給が3%程度(約9000円)アップするという処遇改善「ベースアップ等支援加算」が施行されました。2~9月までは、「介護職員処遇改善支援補助金」として一時的な措置でしたが、10月からはベースアップが継続していくことになります。
ちなみに、僕の周りでは、一時的な措置の段階では、基本給が9000円アップしていた人は少なく、給料アップの実感が薄かったのが実態でした。
→「介護職9000円の賃金アップ」現場の実感薄い 2月の給与明細に僕が感じた失望
→「介護職賃上げ9000円」実際どうだった?金額に納得いかない現場のリアル
今年の冬のボーナスは、前述のベースアップ制度が本格的に施行されて初めて支給されるもの。ベースアップはボーナス額に反映されるのでしょうか? この施策がどういった功を奏しているのか――考察してみたいと思います。
介護職のボーナスは職場や働き方で異なる
前提として、介護職のボーナスは、働いている介護施設や働き方によって異なります。
介護施設のボーナスは、基本給をベースとして支給される施設もありますし、ボーナスはなくても毎月の基本給が高い、基本給が低くてもボーナスの支給額は高いなど、さまざまなケースがあります。
僕がこれまで働いてきた経験では、「基本給は低めでも、ボーナスがたくさん出る」パターンが多かったので、ボーナスシーズンは楽しみでもありました。その一方で、長年働いていた先輩と僕のボーナスの金額があまり変わらないことを知り、愕然としたこともありました。
→介護施設で勤続3年目に夜勤専従の派遣に転職した理由「ボーナスに僕が感じた絶望」
介護施設のボーナス支給事情(実態調査)
令和3年度「介護労働実態調査」※によると、全体で「定期的に賞与を支給している」施設が約6割に上り、施設系(入所型)に特化すると約8割となる。一方で、約10%が「ボーナス制度はあっても経営状況に応じて支払わない場合がある」と回答している。
・無期雇用職員の「賞与制度」の有無と実施状況(介護保険サービス系型別)
定期的に賞与を支給している…63.1%
制度はあるが、経営状況に応じて支払わない場合がある…9.9%
制度はないが、経営状況に応じて支給している…7.3%
賞与制度もなく支給していない…7.8%
無回答…11.9%
※令和3年度「介護労働実態調査」(公益社団法人 介護労働安定センター)http://www.kaigo-center.or.jp/report/pdf/2022r01_chousa_jigyousho_kekka.pdf
介護職に聞いたリアルなボーナス事情
僕が以前働いた施設の介護職の方々や、SNSで交流のある介護職の人たち、30名以上の介護施設で働く人たちに、ボーナス事情について直撃してみました。
回答をじっくり読んでみると、「満足している」「満足していない(不満)」「(そもそも)期待していない」と、3つに分けられることがわかりました。
それでは、冬のボーナス事情について、リアルな声を紹介したいと思います。
※実際のコメントをもとに一部設定や表現を変更しています。
1.ボーナスに満足している人の声
まずは、ボーナスに「満足」している人の声を紹介します。
「冬のボーナスで60万円が入ってきました。年末に友人と旅行に行く予定を立てました」
「ウチの施設はボーナスの額が高いと定評があります。3年目ですが50万円をいただくことができました」
「ボーナスの支給日は理事長が毎回『いつもありがとうございます』と挨拶に来ます。本当にこの施設で働く事ができてよかったと思います」
「10年目の介護職です。5年前までボーナスの額が低くて多くの職員が年末年始に退職することが多かったです。しかし、そのことを重く受け止めた施設側がボーナスを増額したことで職員の定着率が上がったと思います」
「以前は経験年数や資格取得や昇進してもそこまで給料やボーナスが上がらないことがあったのですが、運営母体が変わったことで職員の努力をお金の面で反映してくれるようになり、ボーナスも年々上がってきています」
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これらの声から、ボーナスに満足している人の多くが、その後の仕事のモチベーションがアップし、介護の仕事を続けたいと思っていることがわかります。
最近はコロナ禍の影響で施設側の経営も厳しくなっていることも考えられますが、大変な状況でも職員たちの働きぶりに施設が応えられるということは、本当に素晴らしいことだと思います。
また、ボーナスを支給する際、経営側の人から感謝の言葉があるのも好感が持てました。施設側が働いている人に対して敬意を言葉で伝えるということは大切なことだと感じました。
2.ボーナスに満足していない人の声
今年の冬のボーナスに関して僕が集めた声や、周囲にヒアリングした結果、「満足している人」よりも圧倒的に「満足していない」人の方が多かったのが現実です。以下でコメントを紹介します。
「今年のボーナスの明細を見たらびっくり! 去年よりも10万円下がっていました。ボーナスが下がるなら事前に伝えてほしかったです」
「うちの施設は以前は例年、基本給の2か月分のボーナスをもらっていましたが、コロナ禍になってからは、1か月分ももらえなくなりました。コロナ禍で経営が厳しいのはわかるのですが、仕事量も責任も上がっているのにもらえるお金は減っているのは納得いきません」
「ボーナス額が入社してから5年の間で1万円しか上がっていないです。私の5年間は一体何だったのだろうと思ってしまいます」
「ボーナス支給日に『これは利用者のお金。利用者に感謝してください』と業務連絡に使うノートに書いてありました。終わっているな…と感じました」
「ボーナスの明細を見たら、ほとんどが処遇改善手当でした。毎月支給せずに、ボーナスで一括して支払うというのは、どうなんだろうと感じました」
「ボーナスを勝手に下げるようなことは日常茶飯事。それならボーナスは必要ないので毎月の基本給を上げてほしいと思っています」
「異業種で働く友人たちのボーナスの額を聞くと悲しい気持ちになります。ニュースで平均ボーナス額を聞きますが、傷をえぐられるだけなのでやめてほしいです」
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こういった不満の声の数々に、僕自身、悲しい気持ちになってしまいました。
僕もかつての職場でボーナスをもらったとき、「利用者が払ってくれたお金だから利用者に感謝しなさい」と言われたことがあったことを思い出しました。
施設の経営ができているのは、利用者のおかげではあるのですが、その利用者にサービスを提供する職員がいるからです。利用者はサービスの利用料を払っているのであって、職員のボーナスを支払っているわけでないと思います。わざわざボーナス支給日に言う必要があるのでしょうか。
また、今回の処遇改善によるベースアップ分が、ボーナスに反映されていないどころか、ほとんどがこれまでの支援補助金だったとは、それはボーナスと呼べるのでしょうか…。
「ボーナスに満足していない」人が働く施設は、ボーナス減額に対して通達がないなど、職員に対する説明やケアが不足しているように感じました。
3.ボーナスに期待していない人の声
「ボーナスは、経営側のさじ加減ひとつで上がったり下がったりすることが多く、精神衛生上よくありません。だから私は、ボーナスはなくても、その分毎月の給料に上乗せされる条件の施設で働いています」
「以前働いていた施設では、ボーナスが期待通り、期待以上にもらえたことがないので、そもそも期待していませんでした。期待していないからこそもらえるだけで『臨時収入だ!』と思えて幸福感が上がりました」
「施設の経営次第でボーナスの額は変わるので、期待しないほうが裏切られたときの絶望感がないので気がラクです」
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このように、「そもそも期待していない」という声が少なからずありました。
僕自身も「ボーナスにはあまり期待しないほうがいい」というのが持論です。なぜなら、現在の僕は、夜勤専従の派遣として働いていて、ボーナスはありませんが、毎月の給料には納得して働いています。そのため、ボーナスに頼らない生活設計をしたいという根本的な考え方があるからです。
今回寄せられた声にも多くありましたが、僕は、ボーナスのたびに一喜一憂するのが嫌なので、職場を選ぶときには、ボーナスよりも基本給を意識するようにしてきました。
これらはあくまで僕の周りの一部の意見であり、介護職のボーナス事情は施設によってさまざまだと思います。しかし、ボーナスは働くモチベーションにもなり、モチベーションを奪うきっかけにもなる、諸刃の剣。だからこそ、ボーナスをもらったことをきっかけに、自分の働き方を見つめ直してみるのもいいかもしれません。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
文/たんたん(深井竜次)さん
島根県在住。保育士から介護士へ転職し、介護士として勤務。主に夜勤を中心に介護施設で働きながら介護士の働き方について綴ったブログ『介護士働き方コム』を運営。著書『月収15万円だった現役介護士の僕が月収100万円になった幸せな働き方』(KADOKAWA)が話題に。