猫が母になつきません 第334話「そうていがい」
最近母は自分が「ボケはじめた」とよく言います。私から見ると、認知症の前期から中期へ移行しているところかなと思いますが、本人的には自分が認知症になっているかもしれないと気づいたところらしく、不安を訴えてきます。「こんなの初めてなったわ。何が原因なのかしら」「ただの老化だから普通だよ。みんななるから大丈夫」「自分だけはならないと思ってたわ」。そんな会話を毎日毎日していると、自分も歳をとるのが怖くなってきます。母には私がいますが、私が歳をとったときにはどうなるのでしょう。母にとっては認知症になるのが想定外だったように、私にとっては今の暮らしを10年以上続けることになったことも想定外でした。自分が母くらいの歳になったときのことなんて想定外のさらに外。今よりさらに超高齢社会になっているはずです。「老いを受け入れる」ということが80代になってもなお難しいことらしいということを目の当たりにすると、きっと自分のときもそうなんだろうと思うし、まわりが高齢者だらけだったら自分が老いているなんて思わないかもしれませんね。
作者プロフィール
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母とくらすため地元に帰る。典型的な介護離職。モノが堆積していた家を片付けたら居心地がよくなったせいかノラが縁の下で子どもを産んで置いていってしまい、猫二匹(わび♀、さび♀)も家族に。