高齢者の”山歩き”に必要な体づくり「毎日15分の筋トレを」保健学博士が指南
高齢になっても楽しめる運動として人気の山歩き。日帰りで登れるような身近な低山でも、準備を怠ると大変なことに。まずは登山でけがをしない体づくりが必須だ。65才から登山を始め、『一生、山に登るための体づくり』の著書がある保健学博士の石田良恵さん(80才)に山歩きのためのストレッチを教えてもらった。
シニア必見!山でケガをしないためのストレッチ
生涯登山を目指した筋トレを提案する保健学博士の石田良恵さんは「どんな山でも油断は禁物」と話す。
「なぜなら、些細なことで大けがにつながってしまうのが、高齢者の登山だからです。たとえば、『小石に足を取られて足をひねって捻挫』『登山道の段差に引っかかって転倒し、両手をついて両手首を骨折』など、簡単につまずいたり、転倒したりするケースが多い。さらに更年期以降、女性ホルモンが減少するため、骨密度が低下して骨折しやすくなります。
60才以上の女性登山者の事故のうち、7割以上が無雪期での転倒や滑落です」(石田さん・以下同)
ひざ痛もまた、大腿四頭筋の筋肉量低下が原因という。
「ひざ痛予防は大腿四頭筋をトレーニングで鍛えつつ、ストレッチや歩き方で、大腿四頭筋やひざ関節への負担を軽減させるといいですね。特に下山時、疲れもあって無意識に大股になる人が多くなるのですが、これはNG歩行。歩幅は狭く取り、柔らかく着地すること。前傾しすぎてひざがつま先より前に出ないようにして、足裏全体で着地するのが基本です」
「昔登ったから」「初心者向けのコースだから」という“妙な自信”は捨て、いまの体力年齢をまずは確認してみよう!
【STEP1】過信は禁物。自分の体力年齢を知ることから
■椅子立ち上がり
立っている状態から始めて、「座る・立つ」を10回繰り返し、最後に立ち上がったところまでに何秒かかったのかを測る。8秒を過ぎるようなら、“登山筋”が弱っている証拠だ。
■目を開けて片脚立ち
両手はラクに下げるか腰に置き、両目を開けたまま、左右どちらかの足を5cmほど持ち上げる。その状態で何秒保てるかを測る。床につけている足がズレたら終了。目指すは90秒だ。
【STEP2】休憩中や下山後にも◎。けがを防ぐ「ストレッチ」
■四股ストレッチ
筋肉痛の軽減に役立つストレッチ。【1】四股を踏むように、両脚を左右に大きく開く。【2】ひざに手を置き、肩を内側にひねるように、片方ずつ入れ込む。左右20~30秒ずつ。
■ふくらはぎ・アキレス腱伸ばし
足首やひざの靭帯をゆるめ、捻挫を予防するストレッチ。【1】脚を前後に広げて立ち、後ろ脚のかかとを地面につける。【2】両手を前ひざに置き、後ろ脚の裏の筋肉を伸ばす。左右30秒ずつ。
■大腿前部伸ばし
筋肉痛やひざ痛予防のストレッチ。【1】片脚を後ろに曲げ、同じ方の手でつま先を持ち、かかとをお尻に近づける。【2】曲げた脚をそのまま後ろに引っ張る。左右20~30秒ずつ。
【STEP3】ラクだったら意味がない! 今日から毎日15分の「筋トレ」
■背伸び
腓腹筋とヒラメ筋を強化。登山がラクになり、筋肉痛にもなりにくくなる。【1】片手を椅子に添え、脚を肩幅に開く。目線は前。【2】背筋を伸ばし、かかとの上げ下げを行う。20回2セット。
■ひざ痛予防
大腿前部を強化する筋トレ。【1】椅子に腰かけ、背筋を伸ばす。【2】片方の脚を真っすぐ前に伸ばす。【3】ひざをゆっくり上げ下げする。左右5~20回。上下運動がキツければ【2】をキープ。
■脚の横上げ
インナーマッスルを鍛えることで、横方向への転倒やふらつき防止に役立つ。【1】片手で椅子につかまり、真っすぐ立つ。【2】かかとからゆっくり横に上げ、ゆっくり戻す。左右20回ずつ。
教えてくれた人
保健学博士 ・石田良恵さん/女子美術大学名誉教授、日本ウエルネススポーツ大学教授。著書に『一生、山に登るための体づくり』(ピークス)。全国で普及活動を行う。
取材・イラスト・文/辻本幸路
※女性セブン2022年12月1日号
https://josei7.com/
●三浦雄一郎さん(89才)の生き方「夢に挑戦すべき。やらない理由を探すのはやめる」