がん・認知症・統合失調症の父は最期まで家で暮らせる?【実家は老々介護中 VOL.1】
80歳の父はがん、認知症、統合失調症を患い、母が介護しています。都心で夫、子どもと暮らすアラフィフ美容ライターが、老々介護の実家を手伝う日々を綴ります。時間に追われて大したことはできないけど、父母も私も、身ぎれいにすると気分が明るくなるようです。
「こうなる前に、引っ越しておけば良かったよね」。エレベーター無し、最上階の介護
「この家を買ったときは、こんな階段、屁でもなかったからさ。年取ってみると、引っ越しとけば良かったねえ」。母が言うたび、「ほんとそうだよね」としか言いようがないです。
病気の父が、聞いていた余命より長く生きてくれて有難いし、今を大切に過ごすしかないんですが、「施設に行きたくない、できるだけ家で暮らしたい」と言うのなら、元気なうちに引っ越していれば楽でした。エレベーター無しのマンション最上階にある実家は丘の上にあり、マンション手前にも階段があります。
階段がおっくうだねえ、と散歩を渋っていたせいで父の老化が早まったと思うし、介護に来てくれる人もゼエゼエ息を切らして来てくれるという、悪循環な家なんです。
父が統合失調症と診断されたのは10年前。その後認知症が始まり、昨年大腸がんが見つかりました。衰えが進み今は寝たきり。自宅で母が介護していて、看護、介護のたくさんの方のご厄介になり、娘の私もちょくちょく顔を出しています。
私が行くと、母は「ちょっとお父さん頼むね」と布団に横になり、父は「ああ、来たの」と、小さく手を上げて歓迎してくれます。認知症が進み、頭がクリアでない日も多いよう。すぐトロトロ眠ってしまい、話せる時間は短いですが、がんの痛みがあまりないのが有難い限り。体調の良い日と悪い日の差が激しく、介護用の高カロリーゼリーしか食べない日も。今は要介護4なのですが、次の申請で5になるのだと思います。ヘルパーさんや訪問介護士さんが毎日来て、訪問看護が週2回、訪問診療が週1回、訪問入浴が週1回。
「父の体調に一喜一憂して暗くなるのはやめよう!」と思い、ヘルパーさん、訪問看護師さんとはもっぱら女子トークで盛り上がっています。「エアコンつけっぱなしでお肌がカサカサしますよねー」と言う看護師さんに、「これいいですよー」とクリームをオススメしたり。毎日バタバタなので、父、母、私がパッと使えるクリームを置いてあります。「お尻洗浄のあとに塗ったクリームを、顔や手には塗らないでほしい!」という父の要望を受けて、仕事のストックから持ってきたものです。
「施設に入ったらコロナの制限で面会できないからね。看れるところまで家で看るよ」と決めたのは母です。しかし、母は当初「お父さんがかわいそう。私が看るから他人を家に入れないで」とかなり意地を張っていたので、介護を仕組み化するまで説得に苦労しました。
ここでは、両親の理想の暮らしを応援する日々のことを書きたいと思います。言えない気持ちを、ゆるっと分かち合えたらうれしいです。
文/タレイカ
都心で夫、子どもと暮らすアラフィフ美容ライター。がん、認知症、統合失調症を患う父(80才)を母が老々在宅介護中のため、実家にたびたび手伝いに帰っている。
イラスト/富圭愛