『こまどり姉妹』84才で現役!末期がん危篤状態から奇跡の回復、元気の秘訣は「食事と散歩」
人生100年時代が到来して久しいが、最期の瞬間を健康で幸福に終えられる人はほんの一握り。そんな中でも「80才の壁」を越えてなお元気に生きている人の共通点を総力取材。元気な80才になるために、いまできることは何だろうか。健康長寿の専門家の方々や、80才を超えて現役で走り続ける『こまどり姉妹』のおふたりに、80才を健康に迎える秘訣をうかがいました。
「80才を元気に超える人」はどのくらい?
長寿大国として名高い日本の平均寿命は右肩上がり。最新の統計を見ると女性は87.74才、男性も81.64才と過去最高を更新している。しかしその中で、健康に年を重ねられる人は決して多くはない。介護を受けずに健康な体で生活できる期間を示す「健康寿命」は、女性が75.38才、男性が72.68才と、平均寿命を大幅に下回っている。
高齢者専門の精神科医で、『80歳の壁』(幻冬舎新書)の著書があるこころと体のクリニック院長・和田秀樹さんが言う。
「つまり女性は介助が必要になり、生活に制限を受ける期間が平均して約12年あるということになります。特に80才を超えると体の機能が衰えたり、配偶者や同年代の友人や知人が亡くなって孤独を感じたりとさまざまな“壁”が立ちはだかり、心身が衰弱していく人は非常に多い。その壁を乗り越えられるかどうかは、それまでの生き方や心持ちにかかっています」
いくら長生きできても、体の自由を奪われ、孤独な生活を強いられるのであれば本末転倒だ。80才の壁を乗り越えられる人とそうでない人の差は、一体どこにあるのだろうか。
「10年間食べたものの結果が、その次の10年につながる」
健康寿命を延ばし、元気な体で80代を迎えるためにまず取り組むべきは、何をおいても生活習慣の改善だろう。在宅医療で多くの高齢者を診療してきた、たかせクリニック理事長の髙瀬義昌さんは、元気な80代の共通点をこう話す。
「高齢になっても元気な人はバランスよく食事をして、たんぱく質や、野菜などから栄養をしっかり摂っています。これらの栄養素が不足すれば筋力が衰え、生活習慣病のリスクも上がるうえ、外出する気力もなくなってしまう。高価なサプリメントをのんだり特別なトレーニングをするのではなく、食生活をはじめとした当たり前の生活習慣をしっかり守ることができる人が健康な体で80代を迎えられています」
84才を迎えてなお現役で活躍する双子のこまどり姉妹も、その秘訣を「食事」だと口をそろえる。かつて末期がんと診断された妹・敏子を奇跡的な回復に導いたのも「食べること」だった。
「30代でがんにかかって半ば危篤状態だったときも、『栄養だけは摂らなくちゃ』と鶏がらスープに卵を入れたものやうなぎなどを姉さんに病院まで運んでもらって食べていました。まさに、食事が命をつないでくれたと実感しています。がんが治った後も、『10年間食べたものの結果が、その次の10年につながる』と本に書いてあったのを読んで、食事の内容に気を使うようになりました。血糖値を上げないために野菜から食べるようにしたり、大好きなとんカツも、衣を減らして油分をカットしたり、魚のたんぱく質をしっかり摂ったりするよう心がけています。84才のいまも姉妹そろって1日3食欠かしませんし、お肉なら1日500gくらい食べられます(笑い)」(敏子)
減薬と散歩が元気な80代を作る
バランスのいい食事と並行して取り組みたいのは適度な運動だ。髙瀬さんが言う。
「栄養素をいくら摂取しても運動量が不足していれば筋力が低下し、外出する気力がなくなります。年を重ねるとうつの症状も出やすくなるため、いっそう家にこもりがちになり、体力とともに認知機能が落ちて負のスパイラルに陥ってしまう。病気やけがもなく、歩くことができるはずなのに自宅に引きこもって過ごすことが習慣化した結果、トイレのときしかベッドから出られなくなるほど体が弱ってしまった患者もいます。散歩でも買い物でも、どんな用事でもいい。毎日少しでも外出して、太陽の光に当たることを意識してほしい」
こまどり姉妹の姉・栄子も、「散歩はお金がかからない最高の運動」と笑う。
「私は1日7000歩、妹は1日1万歩を目標に毎日散歩しています。歩かないと食欲も出ませんからね。場所や時間は特に決めておらず、仕事で新幹線に乗る日ならば待ち時間に駅のホームを歩いたり、雨が降っていれば屋根のある場所を選ぶなど、臨機応変に楽しく続けられることを第一に考えています。晴れている日は手のひらを上に向けて歩くと、太陽からエネルギーをもらえます」(栄子)
日光には骨粗しょう症予防効果のある「ビタミンD」の生成を促したり、通称“幸せホルモン”と呼ばれ、精神の安定や脳の活性化に効果的な神経伝達物質「セロトニン」の分泌促進も期待できる。積極的に太陽の下を歩きたい。
※女性セブン2022年6月2日号
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