「母に忍び寄る静かな危機」NO老いるLIFE~母と娘のほんわか口福日誌~第48話
山口県で膵炎を抱える80代の母とふたり暮らしをしている漫画家のうえだのぶさん。栄養士の資格をいかし膵臓に優しい母の食事に気を配っているが、あるとき一緒に食事をしていたら母に異変が!?
母に忍び寄る静かな危機
先日、食事中に「危なーい‼」という出来事があったので急ぎご報告です。
いつも通りの晩ごはん。テレビを見ながらあーでもないこーでもないと言い合いながら2人で食事をしていたのですが、面白シーンにウケて笑いながら母の方を向くと、なぜか真顔。しかも無言。微動だにせず一点を見つめています。
――ん?どうした?
動かないままの母。みつめる私…その間約3秒。
次の瞬間、「プハーーーーーーーッ‼」
水から上がった人のように大きく息を吸い込み、身体を揺らしながら「死ぬかと思ったあああああ~~~‼」と叫ぶ母。ビックリしすぎてフリーズする私。
母「青菜が引っかかったんよ~~~‼」
なんと、母、食べものをのどに詰まらせていたんです‼
母が言うには「飲み込んだ青菜が下に降りて行かなくて、のどの奥から気管までつながって、飲み込みも吐き出しもできなくて、だんだん息ができなくなってきて、死ぬかと思う寸前で突然口が開いて息ができた」と言うんです。(青菜は下に降りたらしい)
青菜が飲み込めたから良かったものの、そのままだったら…。何より恐ろしいのは、真横にいた私に母のその異変がわからなかったこと。
私が見つめていた3秒の間、母はただ無言&無表情で一点を見つめながらじっとしていただけなんです。苦しむとか慌てるとかいう動作は一切なく、ただ静かに座っていました。そんな大事になってるなんて1ミリも思えない状態でした。
「詰まる」はサイレント?
実は、私も20代の頃に「のどにものを詰まらせた経験」があるんです。
当時の職場での昼休みのこと。水筒のお茶を飲んでいる最中に同僚の一人が面白いことを言って、一瞬息を吸ってしまい、お茶がグッと気管に入った感覚がありました。「やばい、むせる」と思ったけど、なぜか咳は出ず、その代わり…母と同じく息を吸うことも吐くこともできなくなったんです。
「え?何これ?」と思ってるうちに段々苦しくなってきて「ちょっと待って死んじゃう‼」と思った瞬間、これまた母と同じく「プハーーーーー‼」って感じで息ができたんです(私はその後めちゃくちゃ咳込んでお茶を吐き出しましたが)
あの時も同じ部屋に4人くらいいたけど、誰も私の異変に気付きませんでした。ていうか、私に「異変」がなかったんですよね。私も全く動けなかったのを覚えています。
今回の母の様子を見て、あの時職場のみんなには私がこういう風に見えたんだろうなあと納得しました。
高齢者が用心しないといけないもののひとつに「誤嚥」(ごえん)があります。「むせる」はアクションがあるのでこっちもわかりますが、「詰まる」はサイレントです。怖いです。
この後すぐネットで「高齢者 食べ物 窒息」で検索して、応急処置とかを調べました。背中を叩くとか腹部を突き上げるなどの方法があるそうです。できるかなあ、、、ドキドキ。
「詰まった時のサインを決める」とかあったけど、うちの母にできるかなあ…そもそも動けるのかなあ?と思いました(体験者談)。
次にもし詰まったら。いや、詰まったら困るんですが…詰まった時のことを普段から想定して心構えをしておかないと、と思いました。
何より「真横にいたのに全くわからなかった」ということを皆さんにお伝えしたく、今回のエッセイを書いた次第です。
誰かと食事中に「ん?」と思った時はこの話を思い出してください(小さいお子さんにも多いそうです)。
これまでも誤嚥は意識してきましたが、今後はもっと食材の形態や調理法を考えて用心しようと思います。
ああ、心配事がまたひとつ増えたあ~~~。
絵と文
漫画家・うえだのぶ
イラストレーター・漫画家。58才。山口県で82才の母とふたり暮らし。40代で地元の短大に入学し、栄養士の資格を取得。地元山口県を拠点に、漫画を利用した食育や時短調理などの栄養講座の講師なども務めている。
アメブロ:https://ameblo.jp/abareinupoti/ インスタ: https://www.instagram.com/nobuueda/?hl=ja
『読者体験!リアル迷惑人間大集合1 』Kindle版が発売中。