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暮らし

50代から始める「最期まで暮らせる家」改修ポイント5つ リフォームの注意点を解説

 病院か施設か、自宅か――。亡くなる場所の選択肢は増えているが、自宅以外の場所で最期を迎える人は多い。住み慣れたわが家で最期を迎えたいと考えるなら、家の改装が欠かせない。そこで、「死ぬまで自宅で暮らす」ためのリフォームや片付けについて、専門家に話を伺った。50代後半、元気なうちに取り掛かるのがポイントだ。

リフォームは「元気なうちに」

 厚生労働省『人口動態統計』によると、1951年に病院で死亡した人は9.1%しかおらず、82.5%が在宅死だった。しかし、2019年には、病院で死亡した人が約98.5%となっており、約70年で人が亡くなる場所は大きく変わった。しかし、「病院で死亡する人が増えた」イコール「病院で死にたい人が増えた」わけでは決してない。 多くの人は、住み慣れたわが家で「死ぬまで自宅で暮らしたい」と望んでいる。

 自宅で長く暮らすには、暮せる家に改装することが欠かせない。住み慣れた家の姿は変わらないが、加齢とともに人間の能力は変化する。いつまでも快適な暮らしを続けるため、早めに考えておきたいのが「リフォーム」だ。

 高齢者住環境研究所代表の溝口恵二郎さんが指摘する。

「リフォームは、必要になってから取りかかるのでは遅い。高齢になると荷物の片づけが大変だし、介護が始まってからでは仮住まいができない可能性があります。体力や判断力がしっかりしている50代後半~60代前半にリフォームするのが理想です」

最初に手をつけるのは水回り

 何でも手当たりしだいにすればいいものではない。溝口さんは、「最初に手をつけたいのはトイレとお風呂」だと語る。

「寒暖差でヒートショックになったり、転倒する恐れがあるので、トイレと浴室には早めに暖房と手すりを取りつけましょう。逆に廊下や玄関の手すりは元気なうちにつけてしまうと、腰が曲がってから高さが合わなくなることもあるため、必要になってからで構いません。寝室からトイレ、寝室からお風呂への移動距離がなるべく短くなるようリフォームすることが理想です」(溝口さん・以下同)

 リウマチなどで手が不自由になってくると、握って回転させなければならないタイプのドアノブは不便になる上、けがにつながる危険もある。

「押し引きするタイプのドアだと、ドアを引いて後ろに下がったときなどに転倒してしまうことがあります。扉は、スライドさせて開閉する引き戸にすると、力が弱くなっても安心。間口を広く取り、20~30cmの長さのバータイプの取っ手につけかえておくと、車いすになっても使いやすい」

片づけすぎるとつかまる場所がなくなる

 コンセントの配線や座布団、衣類などが床に散らかっていると、足を引っかけて転倒する恐れがある。また、親の死後に自宅の片づけで子供が苦労しないよう、不要なものは早いうちに処分しておいた方がいい。だからといって、片づけすぎも問題だ。

 社会福祉士でケアマネジャーの中村雅彦さんが話す。

「家の中にものがたくさんあることは、介護を受ける人にとって必ずしもマイナスではありません。部屋の入り口に段ボールが積み上げてあったり、使っていない棚があったとしても、足元がふらつく高齢者にとっては『つかまる場所』として機能することがあります。たまに訪れた家族が『散らかっているから』ときれいさっぱり片づけてしまったことによって、つかまる場所を失い転倒してしまったケースも実際にあります」

完全バリアフリーには注意

 室内を段差のない完全バリアフリーにする人が多い。しかし、これも注意点がある。

「そもそもバリアフリーの目的は、運動機能が低下した人が動きやすい環境にすることです。しかし、まだ運動機能を維持している人がバリアフリーでフラットになった部屋で暮らすと、運動負荷が小さくなってフレイル(心身の脆弱化(ぜいじゃくか))を起こしやすくなります。長生きの秘訣は、居住環境と体の機能がマッチしていることです」(中村さん)

 世間の流行ではなく、自分に合う家づくりを心がけよう。

リフォーム時に気をつけるべき5つのポイント

 リフォームをする際、気をつけたい所をまとめたので、是非参考にして欲しい。

1.ドアノブ  

 球状ならばレバー式に変更すべし。リウマチで関節が曲がりにくくなっても、こぶしでドアを開けることができる。水道の蛇口も同様。

2.床  

 足腰が衰え、足を引きずるようになると畳やカーペットは引っかかって転びやすくなるため、フローリングが安心。滑りやすい場所にだけラグやマットを敷くのもいい。

3.玄関  

 ドアを引き戸に、またドア幅は80㎝以上にしておくことで車いすになってもスムーズに、ゆとりを持って出入りできる。

4.寝室  

 将来、足腰が弱っても寝室とトイレは毎日使用する。そのため、寝室とトイレの動線をなるべく短くしておくべし。これまでは別の目的で使っていたとしても、トイレからいちばん近い部屋を寝室にリフォームするのもいい。

5.家電  

 コードにつまずいて転倒する原因になるため、家電はなるべくコードレスに。動き回るロボット掃除機もつまずく可能性があるため避けた方がいい。

教えてくれた人

溝口恵二郎さん/高齢者住環境研究所・代表、中村雅彦さん/社会福祉士・ケアマネジャー

※女性セブン2022年5月12・19日号
https://josei7.com/

●介護リフォーム(住宅改修)前に検討しておきたい4つのポイント

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