今回のお悩み「互いの悪口を息子に聞かせる両親に困った」|マムちゃんの毒入り相談室【第26回】
子どもにとって親はいつまでも親である。自分より分別があって、お手本になる存在であることを望んでしまう。そのせいか、大人になった子どもは、親の欠点や迷惑な行動の受け止め方に戸惑い、厳しい目を向けがちだ。「父と母がお互いの悪口を聞かせてくる」と悩む相談者に、マムシさんが親の側の事情をやさしく伝える。(聞き手・石原壮一郎)
今回のお悩み「父と母がお互いの悪口を聞かせてきてつらい」
4月9日からポッドキャストのSpotifyで「大沢悠里と毒蝮三太夫のGG放談」(土曜午後3時に新作配信)が始まった。俺は仕組みがよくわかってないんだけど、けっこう反響が大きいらしい。長い付き合いの悠里ちゃんと好き勝手に話せるのはすごく楽しいね。23日に配信された3回目では、生島ヒロシがゲストに来てくれた。あいつがまた遠慮なく色々言いやがるんだ。まあ、よかったら聞いてみてください。
今回の相談は、40歳の会社員の男性からだ。両親のことで悩んでいるらしい。
「こんにちは。両親(どちらも約70歳)の仲が悪いのが悩みです。自分が子どものときから、父が弟、母が僕に互いの愚痴を言うんです。母は少しヒステリックな性格で、僕や弟に説教をするとき怒鳴りつけるような癖があります。それに対して父は『うるさい、感情的になるな』と母に言って夫婦喧嘩になるのがテンプレートでした。母は自分に『お父さんは子ども(僕と弟)に注意せずに私だけ注意するのはおかしい』と愚痴を言い、父は弟に『お母さんはストレス発散のため怒鳴っているだけだ。子ども(自分と弟)のためではない』と弟に言うんです。
今は両親とは別居していますが、電話で色々な愚痴を言ってきたりします。母に愚痴を聞くのは疲れたと言ったのですが、母は『あなたがお父さんのような性格にならないようにするために言っているんだ』と言うんです。僕は子どもの頃からどっちもどっちと思ってきたのですが、だんだん何が正解かわからない状態になってきました。マムシさんは夫婦がお互いの愚痴を子どもに言うことに賛成ですか反対ですか?」
回答:「ご両親は本当は仲悪くないんじゃないかな。愚痴を聞くのも親孝行と思ってほしい」
子どもにしてみれば、たしかに悩ましいよな。あなたの言うように「どっちもどっち」だろうし、お父さんとお母さんのどっちが正しいって話でもない。弟さんも含めて4人で集まって、「父さんはもっとこうするべきだ」「母さんはこういうところを直したほうがいい」なんて言ったところで、お互い相手のせいにするばかりで反省なんかしないだろうね。
ただ、俺は思うんだけど、ご両親はけっして仲が悪くはないんじゃないかな。俺のオヤジとお袋も、そういうところがあったな。悪口ばっかり言ってるんだけど、根っこのところでは相手を頼りにしてる。子どもの目には、そうは見えないんだけどね。
お袋が病気で入院したとき、オヤジは病室の窓を開けて外を見渡して、医者が後ろに立ってるのに「ここらへんにいい火葬場はねーかな」なんて言ったらしい。あとで看護師さんに「面白いお父さんですね」って言われたよ。何日か経って、病院から「よくなりましたから退院の手続きをしてください」って電話がかかってきた。オヤジは「医者のヤツ、本気出して治しやがって」って怒ってたけど、じつは嬉しかったんだろうな。メールを読んで、そんなことを思い出したよ。
あなたのご両親だって、相手のことが心の底から嫌いなら、とっくに離婚してるはずだ。人間だから欠点もあるだろうし、身勝手な自己弁護をすることもある。自分でも「よくないな」と思うこともあるだろう。相手の愚痴を言い合うことが一種のレクリエーションになってるし、それで夫婦のバランスが取れているんだよな。
子どもとしては、正面から受け止めないで聞き流せばいいよ。「そんなに不満があるなら、直接話し合えばいいじゃない」って言いたいけど、きっと「いやでも」「だって」みたいな反応だろうね。よく「子どものケンカに親は出るな」って言うけど、親のケンカにも子どもは首を突っ込まないほうがいい。夫婦ゲンカは犬も食わないって言うからな。
ご両親は、言ってみれば我が子に「弱い部分」を見せているわけだ。子どもの側は、親はいつまでもお手本でいてほしいから、「なんでそんなことを言うんだろう」ともどかしく思っちゃう。だけど、子どもは成長していくいっぽうで、親はどんどん歳を取っていくから、どこかの段階で子どもが「大人」になる必要がある。
相談の最後に「夫婦がお互いの愚痴を子どもに言うことに賛成ですか反対ですか?」って書いてあるけど、本人たちとって必要なんだったら言えばいいと思う。息子にしか言えないんだから、気持ちのトゲトゲをやわらかく受け止めて丸く削り取る役割を果たしてやってほしい。「変わってほしい」なんて思ったら、余計にストレスがたまるだろうね。
「孝行したいときには親はなし」って言うけど、愚痴を聞いてあげられるのも親が元気だからこそだ。面倒だとは思うけど、相手して聞き流してあげるのが親孝行だよ。
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毒蝮三太夫(どくまむし・さんだゆう)
1936年東京生まれ(品川生まれ浅草育ち)。俳優・タレント。聖徳大学客員教授。日大芸術学部映画学科卒。「ウルトラマン」「ウルトラセブン」の隊員役など、本名の「石井伊吉」で俳優としてテレビや映画で活躍。「笑点」で座布団運びをしていた1968年に、司会の立川談志の助言で現在の芸名に改名した。1969年10月からパーソナリティを務めているTBSラジオの「ミュージックプレゼント」は、現在『土曜ワイドラジオTOKYO ナイツのちゃきちゃき大放送』内で毎月最終土曜日の10時台に放送中。86歳の現在も、ラジオ、テレビ、講演、大学での講義など精力的に活躍中。2021年暮れには、自らが創作してラジオでも語り続けている童話『こなくてよかったサンタクロース』が、絵本になって発売された(絵・塚本やすし、ニコモ刊)。4月9日からポッドキャストで大沢悠里さんとの80代コンビによる新番組「大沢悠里と毒蝮三太夫のGG放談」がスタート。ストリーミングサービス「Spotify」で視聴できる。
YouTube「マムちゃんねる【公式】」(https://www.youtube.com/channel/UCGbaeaUO1ve8ldOXX2Ti8DQ)も、毎回多彩なゲストのとのぶっちゃけトークが大好評! 毎月1日、15日に新しい動画を配信中。
取材・文/石原壮一郎(いしはら・そういちろう)
いしはら・そういちろう 1963年三重県生まれ。コラムニスト。「大人養成講座」「大人力検定」など著書多数。最新刊は「【超実用】好感度UPの言い方・伝え方」。この連載では蝮さんの言葉を通じて、高齢者に対する大人力とは何かを探求している。