万病のもと「血液の汚れ」とは?数値には表れにくい見分け方と注意すべき病【医師解説】
万病の元は、“血液の汚れ”。現代の医学界で注目を集めるのは、そんな昔ながらの言説だ。あなたの体を知らない間に少しずつ蝕(むしば)んでいくにもかかわらず、検査にも数値にも表れない「血液の汚れ」を徹底取材。血液の汚れの見分け方やポイント、引き起こす病などについて専門家に聞いた。
“血液の質”が健康を左右する
私たちの体内を流れる血液の量は、体重のおよそ1割を占めるといわれ、体重60kgの場合、5Lもの量が全身を巡っていることになる。その“血液の質”が健康を左右するという説が、いま大きな話題を集めている。
提唱するのは、自然療法の名医として知られ、自身も74才にして健診数値オールAをたたき出すイシハラクリニック院長の石原結實(ゆうみ)さんだ。
「血液は全身の細胞に栄養素と酸素を行き渡らせ、老廃物を排出する重要な役割を担っています。そのため、血液が汚れ、質が低下すればこれらの働きも鈍くなって体内に老廃物がたまり、病気のリスクを高めてしまう。そもそも東洋医学の世界では2000年以上前から“万病の元は、血液の汚れ”といわれてきましたが、近年の最新研究によってその根拠が次々に明らかになってきています。特に最近は新型コロナウイルス感染症と血液の質にも大きな関係があることも判明しており、いかに血液を汚さずに生活するかがこれからの時代を生き抜く要になっているといえるでしょう」(石原さん・以下同)
■見た目で分かる血液の汚れのポイント
●顔に赤みがある
血流が滞ることで顔が赤くなる。
●お腹が冷えている
特に太い血管の多い体の中心部が冷えていれば、血流が停滞しているサイン。
●歯茎や舌が紫色
茶色に変色する場合もある。舌の場合は特に舌先の方に兆候が表れやすい。
●手のひらに赤みがある
顔と同様、血流が滞ることで赤みが出る。
数値には表れない血液の汚れ
一口に“血液の汚れ”といっても、そもそもどのような状態を指すのか。石原さんは大きく分けて3つのパターンがあると指摘する。
「1つ目は、欧米式の食生活による栄養過多が原因で生じる汚れです。洋食には肉やバターといった動物性の脂質がたっぷり使われたメニューが多く、こうした食事が続けば血中のコレステロールや中性脂肪、糖分が増えてしまう。もちろん、ある程度は体にとって必要な栄養素ですが、多すぎればドロドロした血液のもととなります。2つ目は、痛風の原因といわれる尿酸や疲労物質の乳酸など、老廃物がうまく排出されず、体内に残って血液を汚すケースです。これらに加え、加工食品などに含まれる添加物や化学物質が血液に多く入った状態も汚れているといえるでしょう」
やっかいなのは、自分の血液がどんな状態なのかは目に見えないうえに、検査の数値にも表れにくいことだ。
「中性脂肪や血中コレステロールの量は血液検査をすれば確認できますが、それ以外の汚れは健診結果を見てもわからない。ただ、顔色など見た目から判断できるケースは多くあります。たとえば手のひらや顔に赤みがあったり、歯茎や舌の端が紫や茶色に変色している場合は血流が滞り、汚れていることが多いのです」
色に加え、温度も判断基準の1つだ。
「腹からへその下あたり、ちょうど胃や腸がある部分をさわってみて冷たさを感じれば、血液が汚れて血流が滞っている可能性が高い。特に体の中心は太い血管が多く、ここが冷えていればかなり血流が滞っている証拠です。また、体温の4割は筋肉から発せられるため、筋肉量の少ない女性は体が冷えがちになるうえ、中高年になれば筋肉量が落ちていく。年を重ねた女性の体は特に、血が汚れやすい状況にあるのです」
生理があるから女性は長寿
血液が汚れ、流れが滞ることで引き起こされる病気にはどのようなものがあるのか。石原さんがまず挙げるのは、血管にまつわる疾患だ。
「血の通り道である血管は、血液の質の影響をダイレクトに受けます。たとえば血中の脂肪が増えれば高脂血症の原因になり、その結果、血管にプラークなどの汚れが付着すれば動脈硬化につながる。動脈硬化は血管詰まりや血栓ができるリスクも上げるため、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こす可能性も高くなります」
湿疹やじんましんといった皮膚に現れる不調や病気も血液の汚れが関連しているケースがある。
「湿疹やじんましんは、血液の汚れを体外に出そうとする自浄効果によって引き起こされていることが多い。風邪をひいたときののどの炎症や発熱も、ウイルスの力を借りて血中の老廃物を燃やそうとして起きている場合が少なくありません」
生涯において2人に1人が罹患するといわれるがんも、血液と大きな関連があると石原さんは話す。
「血液に汚れがたまり、体外に排出できなくなると人間の体はそれを全身に拡散しないよう1つの場所に集中させ、浄化しようとします。その“汚れの固まり”こそが悪性腫瘍のもととなるのです。実際に胃がんは吐血、肺がんは喀血(かっけつ)、子宮がんは不正出血など各部位のがんの症状に出血があることからも、がんが血液を浄化するための装置であることがわかります。また、体が冷えて免疫力が下がり、白血球の働きが弱まることも、がんになる原因の1つです。免疫力の低下は、がんだけでなく新型コロナやインフルエンザなどさまざまなウイルスを寄せ付ける原因になります」
がんと同様、出血と強い関連のある生理不順など婦人科系の不調や疾患も血液の汚れによって引き起こされる。
「血液の質が低下し、血流が停滞することで生理不順や不妊、子宮筋腫など婦人科系の病気や不調を発症するケースは少なくありません。そもそも、老廃物の混じった血液を外に出す生理は健康にとって不可欠なもの。女性は男性より平均寿命が約7年も長いですが、これは一生の生理日数とほぼ同じ長さ。毎月の生理で老廃物も一緒に排出しているから、女性は寿命が長いという説もあるほどです」
■血液の汚れが引き起こす病気や不調<まとめ>
●高脂血症・動脈硬化
血の通り道である血管は、血液の質の影響をダイレクトに受ける。血中の脂肪が増えれば高脂血症の原因になり、血管にプラークなどの汚れが付着すれば動脈硬化につながる。特に動脈硬化は血管詰まりや血栓ができるリスクを上げ、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こす可能性も高くなる。
●湿疹・じんましん
血液の汚れを体外に出そうとする自浄効果が皮膚に現れた結果。
●のどの痛み・炎症
湿疹やじんましんと同様、人体が持つ自浄作用が働いた結果、風邪のときにのどの痛みや炎症を起こすことがある。
●がん
悪性腫瘍の正体は汚れがたまった血液を全身に拡散しないよう1つの場所に集中させたもの。胃がんは吐血、肺がんは喀血、子宮がんは不正出血など各部位のがんの症状に出血があることも、血液とがんの関連を示唆している。体が冷えて免疫力が下がり、白血球の働きが弱まることも、原因の1つ。
●新型コロナ
血液の汚れによって体が冷えることで免疫力が下がり、新型コロナをはじめとしたウイルスの罹患リスクが上がる。
●婦人病
血液の質が低下し、血流が停滞すると生理不順や不妊、子宮筋腫など婦人科系の病気や不調を発症するケースが多い。
教えてくれた人
石原結實(ゆうみ)さん
イシハラクリニック院長。自然療法の名医として知られる石原さん。生島ヒロシさんとの共著『70代現役!「食べ方」に秘密あり』(青春新書インテリジェンス)には血液の汚れを落とす方法ほか、健康長寿のヒントが満載。
※女性セブン2022年4月21日号
https://josei7.com/
●長生きする”血液”をつくる3つのルール|筋トレ、質のいい睡眠、あと1つは?