“杖”にまつわる疑問「種類やタイプ、値段の相場」「介護保険は使える?」専門家解説
いつかは“杖”を使ってみたいけれど、「どんなものを選べばいいのかわからない」と思っていませんか。そこで、杖のタイプと特徴、選ぶポイント、よくあるQ&Aを紹介します。転ばぬ先の“杖”、選んでみませんか?
杖の種類・タイプ
大まかに分けて、杖は6種類。杖のタイプによって用途は異なる。自分のライフスタイルに合った杖はどれか、選ぶポイントを見ていこう。
【1】折りたたみタイプ
小さく折りたためるタイプ。かばんに入れて持ち歩ける。 疲れたときや長距離を歩くときに向いている。
【2】伸縮タイプ
体に合った長さに段階的に調節できる。ふだん遣いに適した、最もポピュラーなタイプ。
【3】長さ固定の一本杖タイプ
伸縮機能はないが、安定して使える。日常的に杖が手放せない人向け。
【4】多点・多脚タイプ
歩行が不安定な人向け。杖先が3点、4点などに分かれており、安定感がある。介護保険が適用される。
【5】2本杖タイプ
ウオーキングを目的としている。2本の杖が歩行時にかかる負担を分散し、ひざや腰の痛みを軽減してくれる。
【6】松葉杖、ロフストランドクラッチ
けがのときなどに使用する。松葉杖は脇あてが付いている。ロフストランドクラッチは、カフ(前腕を通す「輪っか」)の付いた杖だ。
■買う前に使うイメージをしてみる
[1] 折りたたみタイプは使わないときはバッグにしまっておける。
[2] 伸縮タイプは身長に合わせて自在に長さ調節が可能。
[3] 使う長さが決まっている場合は、長さ固定の一本杖が安定する。
[4] 体重をかけても安定して歩ける多点・多脚杖タイプは杖が手放せない人向け。
[5] 2本杖はウオーキングや背筋を伸ばして歩きたい人向け。
[6] ロフストランドクラッチは握力や腕力が弱い人向け。松葉杖は主に足を負傷している人が使用する。
杖にまつわる素朴なギモンQ&A
いざ杖を持とうと思っても、どこでどう買ってよいかわからない。杖を買う前にまず知っておきたい知識を紹介する。素朴なギモンに、長野県にある杖メーカー『シナノ』の杖品種担当の山浦正行さんと、介護老人保健施設『ひまわりの里』リハビリテーション部部長で認定理学療法士の安藤岳彦さんが答えてくれました。
Q.どこで買う?
A.「ドラッグストアやホームセンターは、比較的リーズナブルな価格帯の商品がそろっているので気軽に使いたい人向け。本格的に使いたいと思ったら、専門スタッフがいる介護福祉用具の販売店、杖専門店、百貨店で。オンラインショップは杖の選び方をしっかりと説明しているところを選ぶといいでしょう」(山浦さん)
Q.介護保険は使える?
「『T字杖』とウオーキング目的で利用する『ポール』は介護保険対象外です。それ以外は公的介護保険でレンタルすることも可能で、1割負担から利用できます」(安藤さん)
Q.値段の目安や相場は?
A.「杖の価格はピンキリで、安いものだと1000円程度からありますが一般的には4000~1万円くらいが売れ筋です。安価すぎると安定感に不安がありますね。高額なものは使われている素材やデザインが凝っているものが多いですが、実際に使い心地がよければ高価なものでなくてもいいと思います」(山浦さん)
Q.男女で違いはある?
A.「大きな差はありませんが、強いて言えば、取っ手の大きさですね。男性は手が大きい人が多いので、持ち手も厚みのあるものが好まれます。一方、女性は細身の取っ手を好まれる傾向に。また、デザインも男性は重厚なもの、女性は華やかなカラーのものを好まれるようですね」(山浦さん)
Q.買う前に、かかりつけ医などに相談すべき?
A.「一本杖については特に必要ありませんが、個人差もありますので、かかりつけ医があれば相談されることをおすすめします。また、福祉用具専門店や百貨店の杖売り場などには知識を持ったスタッフが多くいるので、気になることがある場合は、スタッフに相談してみるといいですね」(山浦さん)
Q.海外製と日本製、どっちがいい?
A.「ひと昔前は中国や台湾製のものが主流でしたが、最近は国産のものも増えています。ひとつの目安としては『製品安全協会』が認定した『SGマーク』がついているかどうか。国産のものの多くはSGマークがついていますが、海外製でもこのマークがついていれば安心して使えると思います」(山浦さん)
取材・文/廉屋友美乃 イラスト/田中斉 写真提供/シナノ
※女性セブン2022年3月31日号
https://josei7.com/
杖の種類と選び方…自分に合う長さは?人生100年時代の杖選びを専門家が解説