幸せホルモン4つの特徴と働き どうしたら出る?不足したときの対処法【専門家解説】
コロナ禍の不安な日々が続き、ストレスを感じている人も多いのではないだろうか。その心のモヤモヤは「幸せホルモン」で吹き飛ばせるという。幸せホルモンの正体や自分で意識的に出すノウハウを、専門家に聞いた
幸せホルモンの正体|4種類を解説
幸せホルモンは主に4種類あり、それぞれに大事な役割がある。その特徴を知れば、自分に何が不足しているのかと、その対処法がわかるはず! 専門家に解説いただいた。
【1】ドーパミン「恋をすると大量分泌!やる気の源」
通称「やる気ホルモン」。欲しいものや興味を持ったものをゲットしたいという気持ちを起こさせ、やる気を促す。このホルモンのおかげで、意欲や活力が湧き、仕事や家事などをがんばれる。
【どうしたら出るか】
うれしいといった感情に影響するため、両思いになれたなど、いいことが起きたときや報酬を得たときなどに脳から分泌される。
【不足すると…】
何に対しても意欲や興味、好奇心を持てずネガティブな思考に。感情も乏しくなり、無気力感が増す。不足した状態が続くとパーキンソン病などになるリスクも。
【2】β-エンドルフィン「“ランナーズハイ”は私が起こす!」
モルヒネの数倍の鎮痛効果があり、「脳内モルヒネ」とも呼ばれる。抗酸化機能、免疫力アップ、アンチエイジング効果も。
【どうしたら出るか】
おいしいものや好物を食べたり、楽しいことを想像したりしたときなどに脳から分泌される。また、マラソンなどの激しい運動を一定時間以上続けると、苦痛やストレスを取り除くために分泌される。
【不足すると…】
楽しいことや好きなことなど、本来ならテンションが上がることも楽しめなくなる。極端に分泌されないと免疫力が低下し、体調不良にもつながるので要注意。
【3】セロトニン「太陽パワーでイライラに克つ!」
興奮や緊張、イライラしたときなどに活発になる交感神経系に働きかけ、感情をコントロール。精神状態を整えてくれる。心身の緊張を解き、痛みを感じにくくする作用も。睡眠を促すホルモン「メラトニン」の原料にもなる。
【どうしたら出るか】
太陽を浴びたときや有酸素運動をしたときなどに、脳と腸(約9割は腸)から分泌される。
【不足すると…】
ドーパミンやノルアドレナリンの作用が強くなり、衝動を抑えられなくなってギャンブルや買い物依存症などに陥りやすくなる。特に冬は日照時間不足で分泌量が減りやすいので注意。
【4】オキシトシン「スキンシップで分泌量アップ」
子宮や乳腺に働きかけ、出産のときに子宮を収縮させたり、母乳を出やすくしたりする役割も。愛情や仲間意識、信頼関係を生じさせるため、愛おしいなどの感情を促すが、仲間以外には攻撃的になる。
【どうしたら出るか】
親しい人やペットなどとのスキンシップにより、脳の底部にある下垂体から分泌される。
【不足すると…】
人とのコミュニケーションがうまくいかなくなり、内向的になったり、孤独感を感じたりすることが多くなる。長い間スキンシップがないと、パートナーへの関心や信頼が薄れることもある。
幸せホルモンの働きを専門家が解説
「私たちの脳が判断する選択肢には“快か不快か”の2択しかありません。意外とシンプルなんです」とは、脳生理学者で東邦大学医学部名誉教授の有田秀穂さんだ。
楽しかったり幸せを感じたりすると脳は“快”の状態になりポジティブ思考になるが、ストレスを感じて脳が“不快”の状態になるとネガティブな感情が強くなる。
「コロナ禍のストレスや不安により、ネガティブな思考が強くなるのは自然なこと。そのマイナスの感情を払拭するには、脳が心地よいと感じる行動、つまり幸せホルモンが出る行動をとればいいんです」(有田さん)
その幸せホルモンとは、一体何なのか?
「ホルモンは、体内のさまざまな臓器で作られている物質で、100種類以上あります。健康維持や妊娠・出産・育児のサポートなど、さまざまな働きをしてくれています」
そう話すのは、慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科教授の伊藤裕さんだ。
さらに脳内から出るホルモンの中には、神経細胞間で情報を伝達する「神経伝達物質」という、気分を高揚させたり、緊張した心を落ち着かせ、人の感情や意欲に影響を与えたりするものもある。
「これら幸せを感じさせてくれるホルモンや神経伝達物質は、総称して“幸せホルモン”と呼ぶことができます。その代表例が、ドーパミン、β-エンドルフィン、セロトニン、オキシトシン。どれかを出すというよりは、バランスよく分泌されている状態が理想です」(伊藤さん)
幸せホルモンが出ると、ストレスが軽減して心が安定したり、達成感をもたらしてやる気が出たり、さらには免疫力を高める効果も期待できる。
反対に幸せホルモンが不足すると、理由もなく悲しくなる。また、うつや依存症など精神的に不安定な状態にもなりやすいという。
「幸せホルモンはストックできないので、日々の生活の中でこまめに出すことが大切です」(有田さん)
ポジティブな言葉がさらに幸福感を与える
特にコロナ禍のいまこそ、幸せホルモンをドバドバ出していきたいもの。分泌されるタイミングについて、脳科学者で諏訪東京理科大学工学部情報応用工学科教授の篠原菊紀さんはこう話す。
「たとえば、“値札シールがきれいにはがれて気持ちがいい”とき、ドーパミンが出ています。ドーパミンは報酬を感じると出るのですが、この場合、普段きれいにはがれないのに今日はきれいにはがれたと、予測以上の報酬(成果)が得られたから分泌されたと考えられます。このような脳内システムを“報酬予測誤差”といい、人は思っていた以上の成果が得られると、幸せを感じやすいんです」
このとき、“私はツイている!”“ラッキーだ”など、脳に幸せだと暗示をかけるようなポジティブな言葉を発すると、より幸福感が増す。
ほかにも、β−エンドルフィンは好物を食べたとき、セロトニンは太陽光を浴びた後、オキシトシンはスキンシップを取ったときなど、分泌されるタイミングがわかっている。
ノルアドレナリンとセロトニンの深い関係
「恐怖や緊張を感じた際、つまりストレスを受けたときに分泌されるのがノルアドレナリンとアドレナリンです。
これらが出ると、その作用を緩和するためにセロトニンも分泌されます。ですから、仕事上がりなど、ストレスを感じた後ほど幸せを感じやすいんです」(篠原さん)
アドレナリン
ノルアドレナリンから作られる。興奮したときや強いストレスを感じたときに分泌され、一時的に体の機能を高め、戦闘モードにする働きがある。心拍数や血圧を上げる作用もあり。
ノルアドレナリン
緊張したり、注意力が必要な時に出る。集中力や判断力を高め、やる気を起こす。ただし、過剰に分泌されると、体が疲れてしまう。ノルアドレナリンが分泌されるとセロトニンも分泌される。
教えてくれた人
脳生理学者で東邦大学医学部名誉教授・有田秀穂さん、脳科学者で諏訪東京理科大学工学部情報応用工学科教授・篠原菊紀さん、慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科教授・伊藤裕さん
イラスト/サヲリブラウン、成瀬瞳 取材・文/鳥居優美
※女性セブン2022年2月17・24日号
https://josei7.com/
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