猫が母になつきません 第275話「もらってない」
人から「これ要らない?」と言われるとなんでもかんでももらってくる母。着ない洋服や着物、本、家具など、人が要らないものはうちも要りません(泣)。近所の山田さん(母と同年代)にいただいたガーデンテーブル。かなり年季がはいっていましたが母はお気に入りで、家庭菜園の横にそのテーブルとうちにあったイスを置いて休憩コーナーを作っていました。ある日母は「テーブルとお揃いのイスがなくなっている」と言い出しました。「盗まれた」というのです。私がいくらお揃いのイスはなかったと言っても納得しません。山田さんから母に「私があげたのはテーブルだけよ」と言ってもらおうと思ったのに、当の山田さんも「おぼえてないわ」と。うーん、こっちもか…。仕事ではよく「確認」という言葉を使っていましたが、今や私は「確認」ができない世界に住んでいます。山田さんのお宅の玄関ポーチにはガーデンチェアが2脚が置いてあるのですが、たぶん母はここを通るたびにそれを目にしていて、自分の家にも同じものがあったような錯覚をしたのだと思います。後日母は山田さんから今度は本当にイスをもらってきました。これもまたかなり年季のはいった…。山田さんにお礼の電話をすると「いいのよ、捨てようと思ってたし。まだあるけど?」いえ、お気持ちだけで。これで母は納得と思いきや、妄想の中のイスは「もっと綺麗だった」そうで、やっぱりあっちがよかったと今もぐずぐず言っています。
作者プロフィール
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母とくらすため地元に帰る。典型的な介護離職。モノが堆積していた家を片付けたら居心地がよくなったせいかノラが縁の下で子どもを産んで置いていってしまい、猫二匹(わび♀、さび♀)も家族に。