天海祐希vs桃井かおり『緊急取調室』緊迫の幕開けをプレイバック!
天海祐希主演の大人気シリーズ『緊急取調室』(テレビ朝日木曜夜9時〜)の第4シーズンが始まった。最初のゲストは桃井かおり! 往年の「革命戦士」を演じる迫力の姿にSNSが沸いた。予告によれば、今夜放送の第2話では、いよいよ天海と真っ向対決するようだ。ドラマを愛するイラストレーター・オカヤイヅミが『キントリ』の魅力を絵とテキストでみっちり語っていきます。
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何もかもが大人のドラマ
『緊急取調室』の第4シリーズが始まった。元SIT(特殊事件捜査係)で交渉術に長けた真壁有希子(天海祐希)が「緊急事案対応取調班(通称・キントリ)」の老刑事、春さんこと小石川春夫(小日向文世)、菱やんこと菱本進(でんでん)、世渡り上手ながらキントリを信頼する上司の梶山管理官(田中哲司)との連帯で事件を解決する1話完結のシリーズだ。
タイトル通り真壁が犯人を言葉で追い詰めていく緊迫した「取調べ」がメインの見せ場。刑事ものにしてはアクションや捕物は抑えめだが、出演者の演技に安定感があって入り込みやすく、飽きさせないところが魅力だ。
演出や美術、音楽なども、新奇さや勢いではなく落ち着いた分かりやすさと丁寧さが行き届いている。前シリーズからのレギュラー陣も、刑事で一番若いのが渡辺鉄次役の速水もこみち(2021年7月現在36歳)で、あとはキントリ班行きつけの居酒屋店主の妻かやの役の中村静香が32歳。何もかもが大人のドラマだ。
天海祐希と桃井かおりの舌戦に期待
1話目のサブタイトルは「女神の帰還」。女神というのは1、2話のゲスト(つまり事件の犯人役)である大國塔子(桃井かおり)が往年のカリスマ「革命戦士」であることと、キントリの新シリーズ、ひいては真壁有希子カムバック、という意味でもあるだろう。大國と真壁が取調室でどんな舌戦を繰り広げるのか、とワクワクして観ていたが、1話目はまだ事件の発端部分だった、今回は1話完結ではなかった、続いた!
焦ってはいけない。事件部分も味が濃い。まずなんといってもゲストの桃井かおりの桃井かおり味。寂しい独居老人で、郊外の団地で鳩に餌をやって近所から白い目で見られる桃井かおり、ハイジャックした航空機内で乗客に革命を説く桃井かおり、最初から覚悟していたようなのに殺人を犯してちょっと驚いた顔をする桃井かおり、警察病院のベッドで死刑を求める桃井かおり……楽しそうだ。掛け声をかけたくなる。
そして活動家として現役だったころの写真(おそらく本人の当時の姿であろう)の美しさ。余談だが私はこの「昔の写真に俳優本人の古い写真を使う」という絶妙にミーハー心を刺激する演出がとても好きだ。そんな桃井かおり、いやさ大國塔子が起こしたハイジャック事件にも謎が満載だ。国土交通副大臣・宮越肇(大谷亮平)の我関せずといった言動、殺人の被害者である第一秘書・東修ニ(今井朋彦)の挙動不審、大國橙子のおさげ、警察や公安の「爆弾があったことにしたい」という動き、と盛り沢山だ。
今度こそ本当に終了なのではないか
そして相変わらずキントリ班自身にも危機が訪れる。とうとう9月で解散、と梶山管理官が告げる。定年間際の春さんと菱やんはすでに受け入れている。キントリ班の危機が告げられるのはシリーズ始めの「お約束」であるとはいえ、今度こそ本当に終了なのではないか、とやはりハラハラする。今シリーズから登場した第2シリーズまで出演の善さんこと中田善次郎(大杉漣)の息子、山上善春(工藤阿須加)が心を開いてキントリメンバーに、というルートがあったらいい、などと一縷の望みを持ったりしてしまうが。第2、第3シーズンの磐城部長(大倉孝二)に代わって今シーズンの「キントリに圧力をかける嫌な上司枠」は北斗部長(池田成志)だ。小心者ゆえの偏執狂感のあった磐城部長に比べて北斗部長は抜け目がなさそうな偏執狂感である。こちらも恐ろしくて楽しみだ。
イラストと文/オカヤイヅミ
漫画家・イラストレーター。著書に『いいとしを』『白木蓮はきれいに散らない 』など。趣味は自炊。