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高木ブー、大盛況のトークショーで即答した「ドリフ以外で、すごいと思った芸人は…」

「子どもの頃から大好きです。お会いできて嬉しいです」――。サイン本を受け取ったファンが、感激した面持ちで話しかける。ニコやかに「ありがとうございます」と返す高木ブーさん。7月4日に東京・八重洲ブックセンターで、画集の発売を記念してトーク&ミニライブ&お渡し会が行われた。司会を務めた石原壮一郎さんが、その模様をレポートしてくれた。

「端っこの方が落ち着くんだよね」

 ブーさんが登場すると、満席の会場はあたたかい拍手に包まれます。3~4割は、20代30代の若いファン。最初は向かって右側の椅子に座ろうとしたブーさんですが、「すみません。こちらに」とお願いして、ステージの中央にある向かって左側の席に移動してもらいました。

「僕は長いあいだ、左側には誰もいなかったから、端っこのほうが落ち着くんだよね」

 笑いながら説明するブーさん。お客さんの脳裏に、一瞬にして『8時だョ!全員集合』で歌っていたドリフターズの姿がよみがえります。素晴らしいサービス精神です。

 初めての画集『高木ブー画集 ドリフターズとともに』は、発売10日で増刷が決定。その“偉業”を客席に伝えると、登場のとき以上に大きな拍手が寄せられます。

「表紙のおかげだよ。たまたまだけど、志村が東村山音頭を歌っている絵を表紙に使った。先週、東村山で志村の銅像の除幕式があったんだけど、市長さんにもこの本を渡したら大喜びしてくれた。たぶん、東村山市内で売れてるんじゃないかな」

 テレ隠しのジョークをはさみながら、話題は志村けんさんに。亡くなったときにお兄さんに真っ先に電話したこと、その頃に作り始めていたこの本を渡すと約束していたこと、約束が果たせてホッとしたこと。亡き志村さんに対するブーさんの想いが伝わってきます。

『志村のカタキ」と文字を入れていた絵

「最後のほうにボクシングのリングで、雷様になった僕がコロナを叩きのめしている絵があるでしょ。長さんがレフリーで。『雷様vsコロナ』ってタイトルがついてるけど、最初はその横に『志村のカタキ』って入れてた。ちょっとダイレクト過ぎるかなと思って取ることにしたんだけど、あの絵はそういう気持ちで描いたんだよね」

 30年にわたって描きためた絵には、ドリフの懐かしいコントの一場面や、妄想の世界でドリフが楽しく遊ぶ光景が描かれています。あらためて、本になった感想を尋ねました。

「一枚一枚はたいした絵じゃないけど、まとまってみるとなかなかいいなと思った。ヘンな話、メンバーの僕だから描けるっていうところはあるのかな。それぞれのキャラを誰よりもわかってるし、ふざけたことをさせてもほかの人が描いたら意味が違ってくる。ドリフってこういうグループだったんだよってことを絵で伝えられて、すごく嬉しいです」

 本に収められているブーさんのポートレートは、写真に熱中している孫のコタロウ君(高校二年生)が撮影。編集者の期待とリクエストに見事に応えて、家族にしか撮れない生き生きとした表情がとらえられています。

「僕もコタロウぐらいの歳からウクレレに熱中して、ずっと長くやり続けてきた。彼も好きなことに熱中して、長く続けられるといいよね。小さい頃はウクレレを仕込んで、ふたりで演奏しようと目論んでたんだけど、それはうまくいかなかったな。アハハ」

 そう言って目を細めます。ブーさんとしては、ドリフの魅力を後世に伝えると同時に、これからの世代への期待とエールをひそかに込めた本でもあるわけですね。

ブーさんが、これはすごいと思った芸人さんは?

 予定していたトークの終了時間となり、「続いてはミニライブを」と締めくくろうとしたときに、ブーさんから「せっかくだから、何か質問があれば。なかなかこういう機会もないから」という嬉しい提案が。会場に笑顔が広がります。少々の時間オーバーを気にしている場合ではありません。たちまち、たくさんの手が上がります。

 そこで、日本の芸能史に残る衝撃的な質問が飛び出しました。「ドリフ以外で、これはすごいと思った芸人さんは誰ですか?」。メディアの立場からは遠慮が先に立って、なかなか聞けない質問です。

「たけしさんだろうな」

 即答でした。ブーさんは、さらに続けます。

「ドリフはアドリブは苦手。台本をきっちり固めて、そのとおりにやることで笑いを生み出す。その点、たけしさんは違う。瞬発力がすごい。アドリブという点では、コント55号もすごかった。昔いっしょの番組に出たこともあるけど、リハーサルは30分ぐらいで帰っちゃう。あとはアドリブ。コント55号もたけしさんも、『全員集合』の裏番組をやってた。ライバルというより、からみ合って切磋琢磨してきた関係だよね。手強い相手だったな」

 ドリフのネタ会議の過酷さを語りつつ「ま、僕は寝てましたけどね」というオチも。たくさんの貴重な証言と、ウクレレのミニライブ、そしてサイン本のお渡し会に、お客さんは大満足でした。受け取ったサイン本は、ひとりひとりの宝物になることでしょう。

 ブーさんはさすがにお疲れで、最後のほうは椅子に座ったまま目を閉じてしばし休息。そんな様子をお客さんが微笑ましく見守るという、最後まであたたかさとブーさんらしさがいっぱいのイベントでした。

高木ブー(たかぎ・ぶー)

1933年東京生まれ。中央大学経済学部卒。いくつかのバンドを経て、1964年にザ・ドリフターズに加入。超人気テレビ番組『8時だョ!全員集合』などで、国民的な人気者となる。1990年代後半以降はウクレレ奏者として活躍し、日本にウクレレブーム、ハワイアンブームをもたらした。CD『Hawaiian Christmas』『美女とYABOO!~ハワイアンサウンドによる昭和歌謡名曲集~』『Life is Boo-tiful ~高木ブーベストコレクション』など多数。著書に『第5の男 どこにでもいる僕』(朝日新聞社)など。YouTube「【Aloha】高木ブー家を覗いてみよう」(イザワオフィス公式チャンネル内)も大好評。7月14日から八重洲ブックセンターのwebサイト(「イベント」のページ)で、サイン入り『高木ブー画集 ドリフターズとともに』(ワニ・プラス)の通販がスタート。購入者はイベントの模様を収録した動画を視聴できる。

取材・文/石原壮一郎(いしはら・そういちろう)

1963年三重県生まれ。コラムニスト。「大人養成講座」「大人力検定」など著書多数。最新刊「【超実用】好感度UPの言い方・伝え方」が好評発売中。この連載ではブーさんの言葉を通じて、高齢者が幸せに暮らすためのヒントを探求している。

撮影/玉井幹郎

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