「ワクチン予約」騒動で高齢者のネット格差が浮き彫りに…予約代行サービスも登場
コロナワクチン接種の予約に悩む高齢者がまだまだ後を絶たない。ワクチン詐欺も不安だし、インターネット予約に戸惑っているという声が続々と寄せられている。そんな中、高齢者のワクチン予約を代行する注目のサービスが登場。どんなものなのか直撃取材した。
ワクチン予約に混乱する両親「もうぐったり…」
高齢者を対象とした新型コロナウイルスワクチンの接種が本格的にスタートしたが、インターネットに不慣れな高齢者から「予約が取れない」と悲痛の声が続々と届いている。
接種の予約は、インターネットでできるが、大量の書類が入った封書の説明書を読んで、スマホやタブレットのカメラでクーポンに記載されているQRコードを読み取って、予約サイトでIDとパスワードを入力して…という作業は、高齢者にとってはかなりハードルが高い。
その結果、ネットを避ける高齢者が電話に集中してしまい、コールセンターはパンク。対面予約窓口にも人が殺到して密が起きてしまうという悪循環に陥っている。
娘が高齢の親の予約を手伝うものの…
70代の両親を持つ千葉県在住のMさんは、高齢の両親がスマホで予約なんて無理だと憤る。
「福岡に住む70代の両親は、スマホを持ってはいるけれど使っているのは基本的に電話だけです。LINEの無料電話でかけているのか、普通の電話でかけているのかさえわかってない。スマホでインターネットにつなげて番号を打ち込んで予約を取るなんて絶対無理」(千葉県・会社員Mさん)
Mさんが電話越しに説明しても両親は全く理解できず、最終的には、予約番号を聞いて代わりに予約を取ったという。しかし、書類の量は多く内容も複雑で、接種券番号がどれなのか聞き取るだけでも相当の時間がかかったという。
「接種券のほかに、予約方法など説明が入ったお知らせやワクチンの説明書、問診に使用する予診票などが同封されていたようで、書類が多くて接種券番号がどこに書いてあるのかわからないというし、何時間も電話して父も母もぐったりで。私は電話越しにイライラしっぱなしでした」(Mさん)
ほかにもワクチン接種の予約に戸惑う声が。
「近所で120名ほどの集団接種が始まったのですが、受付日に電話をかけまくったのですが、10分で『本日の分は終了しました』ってアナウンスが流れました。1度電話して登録だけして、なんとか子供に聞きながらQRコードで予約画面に進んだのですが、既に受け付け終了でした。いつになったら予約できるんだか…」(千葉県・70代女性)
ワクチン詐欺専用ダイアルが開通
このように高齢者にとって、インターネット予約は荷が重い。子供が予約してくれるならいいが、子がいない高齢者も多くいるだろう。
混迷する状況につけ込んで、高齢者を狙った「新型コロナワクチン詐欺」なるものも。消費者ホットラインには「『予約代行する』と市役所職員を名乗った人が自宅に訪ねてきた」「『金銭を払えば予約代行する』という怪しい電話があった」などの相談事例が寄せられており、専用の「新型コロナワクチン詐欺 消費者ホットライン」(フリーダイヤル:0120-797-188)が開通された。
ワクチン予約代行で注目の新サービス
そんな中、新たにワクチン予約サービスを始めた企業も登場。高齢者向けにデジタル機器のサポートを行うMIHARU(ミハル)は、シニア向けコンシェルジュサービス『もっとメイト』の一環として、「コロナワクチン接種予約の遠隔サポート」をスタートさせた。
「ワクチン接種の予約がスタートし、普段からお付き合いのある高齢者のみなさんから『QRコードの読み取り方がわからない』『一人で予約ができるのか不安』という生の声が寄せられたことをきっかけにサポートを始めました」(MIHARU代表・赤木円香さん、以下、同)
サポートを受けるのはとっても簡単。予約開始日の前に、電話をして、接種券番号と生年月日を伝えれば、予約当日に、スタッフが代理で予約を取ってくれるという、シンプルなもので、これらのサービスがすべて無料で受けられる。
「自分でやってみたいという人には、各自治体のホームページなどで予約方法や接種開始日の最新情報を把握したスタッフから、電話で予約方法を丁寧に説明させていただきます。スタッフの空き状況にもよりますが、訪問を希望されるかたがいれば対応しています」
現在、訪問でのサポートは東京都内限定となっている。
赤木さんによると、これまで対応してきた予約件数は50件。東京と大阪での大規模会場での予約受付がスタートした5月17日には1日で7件。今後は、大田区、世田谷、江東区など予約が開始する区でそれぞれ約20件の依頼が舞い込んでいるという。
シニア世代もネット予約が必要な時代
「そもそそもスマホの操作があやふやなのに、電話でネット予約のやり方を説明するのは至難の業。コロナ以前はスマホを買った携帯ショップの窓口で訪ねることもできたけど、今は店が予約制で、気軽に窓口に行けない状況ですよ。
近くにスマホの駆け込み寺みたいなところがあったらいいのに…」と、前述のMさんが語るように、今スマホの操作の壁にぶつかっているシニア世代は多い。
「スマートフォン・ケータイ所有率の年次推移」(2020年1~2月 モバイル社会研究所『シニアの生活実態調査』)によると、シニア(60~79才)のスマホ所有率は5割となっており、年々増加の一途をたどっている。
「コロナの影響により、情報収集の役に立てたいとか、家族とオンラインで通話したいなどの希望が増えて、デジタル需要が高まりました」と、赤木さんは高齢者にとってもスマホが必要な時代であることを肌で感じているという。
同社では、20代のスタッフが自宅まで出向いてスマホのマンツーマンレッスンを行う『出張スマホ個別講座』(都内限定、1時間5000円)を実施している。
「現在、スマホ個別講座を受けている人の年齢層は65才から最年長は92才まで。92才の男性がいちばんスマホを使いこなしていますよ」(赤木さん)
依頼があればショップに同行して、スマホを購入するところからサポートしてくれるという。
「店員さんに言われるがまま余計なプランをつけられて無駄な料金を払っている人が多いんですよ。適切なプラン、適切な料金なのか最初のレッスンの日にチェックしています」(赤木さん)と、心強い。
孫世代がスマホ購入から操作まで笑顔でサポート
利用者の中には、新しい孫が遊びに来たかのようにスタッフの訪問を楽しみにしている人も多いという。
「人生の大先輩と関わらせていただいているので、私たちが励まされ、応援してもらうこともたくさんあります。
あるとき、炊飯器が壊れて困っているから早くネットで買わなきゃと言っていたメンバーが、お客様から土鍋でのご飯の炊き方を教えてもらって喜んでいました。
結婚したてのメンバーは、夫婦において大切なことは何か、この時期に旦那さんが喜ぶ料理は何かなどを教えてもらい、レシピを習って帰ってきました」(赤木さん)
孫世代のスタッフと楽しい時間を過ごしながら、スマホもマスターできる。ワクチン予約で戸惑った経験がある高齢の親にすすめてみてはいかがだろうか?
【データ】
もっとメイト(MIHARU) https://motto-mate.com/digital/
ワクチン予約代行・スマホ個別講座
電話:03-4500-8359
教えてくれた人
MIHARU・代表/赤木円香(あかぎまどか)さん
食品メーカー勤務後、「シニア世代にスマホの楽しさを知ってほしい」とMIHARUを起業。デジタル機器に悩む高齢者に寄り添うビジネスを展開。
取材・文/氏家裕子
●高齢の親に教えたい“スマホ”が必要な3つの理由|始めるなら一番若い今でしょ!