親に頼み事するときはこう言ってみよう!お互いのストレスを減らすフレーズ
言い方、伝え方を工夫することで、人間関係は円滑になるものだ。それは親子の間でも同じ。コラムニストで「大人としてのコミュニケーションのあり方」をテーマにした数々の著書がある石原壮一郎さんに、親との会話で使ってみたいフレーズを教えてもらった。
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親子、夫婦、職場、ご近所づきあい…などなど、私たちは日々、いろんな相手とコミュニケーションを取りながら生きています。同じ内容でも、言い方や伝え方によって与える印象は大違い。相手の反応も自分の気持ちも、大きく変わってしまいます。
ときには、うっかり言い方を間違えて、険悪な雰囲気になることも。とくに親子の場合、気をつかわずにホンネがチラつく言い方をして、ケンカになるケースも少なくありません。そうなると、コトが前に進まない上、お互いに大きなストレスになります。
ここでは「気難しい親(義父母)」に機嫌よく動いてもらったり、怒らせずに気持ちを伝えたりするために使いたいフレーズをご紹介しましょう。親には親の考えやプライドがあります。性格も今さら変えようがありません。こっちが一歩引いて“大人”になることが、なごやかな関係を保つための必須条件であり、何より自分自身が楽になるための近道です。
頼みごとをするときに使いたいフレーズ
「こういうことは父さん(母さん)にしか任せられなくて」
ホンネ:「そういうわけでもないけど、いちおう顔を立てないとね」
【使い方】親戚への連絡や冠婚葬祭にまつわるあれこれなど、経験がものを言いそうな役割を果たしてもらうときに。
【類語】「たいへんだと思うけど、父さん(母さん)以上の適任者はいないから」
「私ひとりでは心もとなくて」
ホンネ:「ひとりで十分なんだけど、声をかけないとすねられそうだし」
【使い方】おせち料理を作ったり、大きな買い物をしに行ったり、古い知り合いを訪ねたりするときに。
【類語】「いっしょにやって(行って)もらえたら百人力です」
「こちらの都合で申し訳ないんだけど」
ホンネ:「そっちの都合は、たぶんどうにでもなるよね」
【使い方】法事の日程を提案したり、旅行の計画を立てたりするときに。
【発展】明らかにヒマそうな相手ほど、何かを相談するときには「忙しいとは思うんだけど」といった前置きが大切。
●そのほか、こんなフレーズも
「いつも頼ってばかりで申し訳ないんだけど」
「無理なら断ってくれていいんだけど」
「息子(娘)の顔を立てると思って、考えてみてもらえないかな」
ホメて張り切らせたいときに使いたいフレーズ
「そういうところに気が付くのは、さすが父さん(母さん)だね」
ホンネ:「その調子で、まだまだ頑張ってほしいな」
【使い方】こっちも気付いてはいたけど、ちょっと得意気に「あれはどうなってるの?」と指摘してきたときに。
【類語】「昔から、そういうことをさせたら天下一品だよね」
「○○(孫)も、ジイジとバアバが大好きなんだよね」
ホンネ:「そういうわけなので、頻繁に面倒を見てください」
【使い方】仕事の都合などで小さい子どもを親に預けたときに。親ではなく子どもに語りかけるように言う。
【注意】お礼の言葉と「助かりました」という感謝の言葉も忘れずに。
「いつかはお義父さんとお義母さんのような夫婦になりたいです」
【使い方】ぜんぜん関係のない話をしている場面でポツリと。配偶者もいる状況で言えば、3人とも間違いなく深く喜ぶ。
【類語】「ふたりの子どもに生まれて、自分は幸せ者だよ」
そのほか、こんなフレーズも
「父さん(母さん)には、かなわないなあ」
「ふたり(父さん、母さん)が来てくれないと始まらないからさ」
「素人目にも並々ならぬオーラ―を感じます」(義父母が趣味で作った作品に)
さまざまな目的や状況で使いたいフレーズ
「どうしたの。父さん(母さん)らしくないね」
ホンネ:「そんなことしちゃう(言っちゃう)なんて、歳とったなあ」
【使い方】困った行動や発言をたしなめるときに。ストレートに「そんなことしちゃダメだよ」と注意しても、ヘソを曲げるだけ。
【類語】「いくら親子でも、言っていいことと悪いことがあるよ」
「心配してくれるのは嬉しいけど、もっと信用してほしいな」
ホンネ:「まったくもう、いいかげんに子離れしてよ」
【使い方】子育てや日常のあれこれに親がいちいち口出ししてくるときに。
【注意】「うるさいなあ」などと感情的に反発するのは、自分自身がまだ親離れできていない証拠。
「なるほど、そういう考え方もあるかもね」
ホンネ:「それは違うと思うけど、逆らうと面倒だからな」
【使い方】ニュースを見ながら親や義父母が、まったく賛成できない意見を言い出したときに。
【類語】「いろんな人がいるよね」(近所の人の悪口を言い出したときに)
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ここで紹介したフレーズは、拙著『【超実用】好感度UPの言い方・伝え方』(ワン・パブリッシング)を元に、親子関係に寄せてアレンジを加えたものです。
言い方や伝え方に気を配るのは、けっして「口先で相手を転がすため」ではありません。時に「やれやれ」と思う場面はあっても、根底には「相手といい関係を保ちたい」「相手に心穏やかに過ごしてほしい」という気持ちがあるはず。
自分の本当の気持ちや意図が伝わるように、自分と親が幸せな日々を過ごせるように、ちょっと工夫したフレーズを積極的に活用しましょう。それもまた、親に対する愛情とやさしさです。
教えてくれた人
石原壮一郎(いしはら・そういちろう)/コラムニスト。1963年・三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。以来、大人としてのコミュニケーションのあり方や、その重要性と素晴らしさと実践的な知恵を日本に根付かせるべく、数多くの著書や各種メディアで発信を続けている。おもな著書に『大人力検定』『夫婦力検定』『大人の言葉の選び方』『恥をかかないコミュマスター養成ドリル』など。最新刊『【超実用】好感度UPの言い方・伝え方』は、全国のセブン-イレブンを中心に好評発売中。地元の名物を応援する「伊勢うどん大使」「松阪市ブランド大使」も務めている。
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