松崎しげるも…加齢による難聴は補聴器利用でコミュニケーションがスムーズに
年をとることで皆に平等に訪れる体の衰え。才能にあふれるタレントも然り、いつかは老眼や難聴に悩まされる日がやってくる。台本を読み、相手の話を聞くのが仕事である彼らにとって、目と耳はいわば商売道具。そんな彼らは、どのように老化に立ち向かっているのか。スポットライトが照らさないここだけの話を聞きました。
65~74才の約3人に1人が難聴に悩んでいる
難聴に悩む人は多く、日本老年医学会によれば65~74才では約3人に1人、75才以上では約3人に2人以上の人が難聴の状態にあるという。
川越耳科学クリニック院長の坂田英明さんが解説する。
「老人性難聴は、高音から聞こえなくなるのが特徴です。音は外耳道を通って鼓膜に伝わり、わずかな空気の振動となって蝸牛という器官に達します。蝸牛の中には液体が入っていて、有毛細胞が振動することで情報を脳に伝えますが、加齢とともにその働きが衰え、音の情報を伝えることができなくなる」
音そのものが聞こえにくくなることに加え、“方向感”も失われる。
「音が脳に伝わる途中で生命のコントロールセンサーである『脳幹』という組織を通りますが、ここには方向感を司る働きがあります。例えば携帯電話がどこで鳴っているのかわからないのは、脳幹の機能が落ちてきているためです。脳幹の機能が低下すると、昼夜逆転の生活になったり呼吸障害が出たりといった初期の認知症に似た症状が出てくることもあります」(坂田さん)
田原総一朗さん「鳥越俊太郎さんに補聴器をすすめられて…」
しかしこうした耳の不調は急に表れるわけではないため、本人には自覚がなく、周囲が「聞こえていないのでは」と気づくケースがほとんどだ。ジャーナリストの田原総一朗さん(86才)も同様だった。
「5年ほど前、鳥越俊太郎さん(81才)に『田原さん、どうも耳が聞こえづらそうですね』と補聴器をすすめられたんです。『ジャーナリストは人の話がよく聞こえた方がいい。ぼくは両耳につけています』と。実はそのときは、“聞こえづらい”という自覚がそれほどありませんでした」(田原さん)
そのため、しばらく先延ばしにしていたものの、家族から「テレビの音が大きい」「聞き返しが多い」と繰り返し言われたことがきっかけで最初に補聴器を入れたのは2019年秋のこと。現在は両耳で使っている。
「いざ入れてみると、補聴器なしだと面と向かって話す声は聞こえても、周りの声が聞き取りづらいことに気がつきました。周囲が話している内容がわかれば、安心感があるし、コミュニケーションもスムーズになる。
それまでは打ち合わせなどで怒ることも多かったけど、補聴器をつけてからはなくなりました(笑い)。いま思うと、“聞こえない”こともイライラの原因だったのかもしれません」(田原さん)
松崎しげるさんも10年補聴器を…
10年近く補聴器を使っているという歌手の松崎しげる(71才)も、過去のインタビューでそのきっかけを、同乗していたマネジャーが難なく聞き取っていたタクシー運転手の声が聞き取りづらかったことだと明かしている。
実は、日本では欧米諸国に比べて、補聴器の普及が大幅に遅れているのが現状だ。
「日本では必要な人の12%しか補聴器を使っていないというデータもあります。その理由は“見た目が悪い”“つけてもダメだろう”という先入観がほとんどです。しかし、難聴は放置すると悪化します。耳鼻科専門医に相談し、自分に合った補聴器をできれば両耳分購入してほしい。片耳だけでも会話は成り立ちますが、脳幹への刺激が偏り、バランス感覚などに影響が及びます」(坂田さん)
まだ難聴になっていない人も、日頃から聴力の低下を防ぐ生活習慣を心がけたい。
「意識して高音部を刺激することが大切です。日常会話の中でも特に大阪弁は高音が入るため、関西出身の人と話すことやお笑いを見ることもおすすめです。携帯電話を隠してから鳴らして、どこで鳴っているかを当てるのは、脳幹を鍛えることにつながります。生活の中で、手軽にできるトレーニングの方法を探しましょう」(坂田さん)
有名人といえど、体のつくりは皆一緒。真似できるところから始めてみよう。
※女性セブン2021年4月8日号
https://josei7.com/
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