認知症の母が訪問販売で高額商品を買わされた…法律相談の実例を公開!
認知症の親が訪問販売で高額な商品を購入した…。訪問販売の契約は無効にできる? 返品や返金は可能なのか。どこに相談すれば?クーリング・オフっは使える? 法律相談の事例を公開。認知症の人の買い物トラブルや高齢者の契約などの法律に詳しい法律事務所の弁護士・外岡潤さんに解説いただいた。
相談事例:認知症の母が訪問販売で高額な着物を…
認知症の母が、家族の不在中、高額な着物を買わされました。返品・返金は可能ですか?
認知症の母は、遠方でひとり暮らしをしています。ある日、母の面倒を見てくれている訪問介護員から連絡があり、母がひとりでいるときに、着物の販売業者が来て、高額な着物を買わされていたことを知りました。購入後、業者が置いていったのは領収書のみ。返品・返金はできるのでしょうか?
弁護士の解答:領収書だけで返品・返金は可能
適用される法律:改正民法 第3条の2(意思能力)
法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかった時は、その法律行為は、無効とする。
認知症の母が訪問販売で買った高額商品は…
→領収書だけでも返品・返金が可能となる。
クーリング・オフで契約を撤回、解除可能
業者の住所がわかれば、領収書しかなくても返品・返金は請求できる。クーリング・オフで契約を撤回、解除する方法を見ていこう。
まずは購入時の書類を確認しよう。
「通常は契約書や申込書があります。そこに記載されている業者の名称や住所など『法定記載事項』※をもとに、書類を受け取った日から8日以内に売った業者に通知はがきを出せば、『クーリング・オフ』で契約を撤回、解除できます」(介護・福祉系法律事務所おかげさま代表弁護士の外岡潤さん・以下同)
なお、法定記載事項に不備があったり、事例のように領収書や名刺しか渡されなかった場合もクーリング・オフは適用され、期限もない。
ただし、通知はがきはコピーを取り、特定記録郵便や簡易書留で郵送しよう。
クーリング・オフに必要なもの・手順は?
・購入時の書類…契約書や申込書
・8日以内に業者宛に特定記録郵便や簡易書留で通知はがきを郵送
※法定記載事項:事業者の名称、住所、電話番号、法人代表者名、契約の申し込み・締結を担当した人の氏名、「クーリング・オフ」の要件および効果など。
クーリング・オフ通知はがきの記載例(訪問購入の場合)
販売会社などの店頭で購入した場合は、「買取会社」を「販売会社」にする。より具体的な方法は、消費者ホットライン(局番なし「188」)に問い合わせよう。
■通知はがきの記載内容
通知書
次の契約を解除します。
契約年月日 ○○年○月○日
商品名 ○○○○
契約金額 ○○○○円
買取会社 株式会社○○ △△営業所
担当者 ××××
支払った代金○○○○円を返金し、商品を引き取ってください。
○○年○日
○○県○○市○○町○丁目○番○号
氏名 ○○○○
販売会社などの店頭で購入した場合は、「買取会社」を「販売会社」にする。
法律「改正民法第3条の2」で契約を無効に
もしクーリング・オフが使えなければ、改正民法第3条の2が頼りに。
「購入時、意思能力がなかったことを示せれば契約が無効になる可能性も。そのためには、診断書や訪問介護員の証言など証拠が必要になります」
より具体的な方法は、消費者ホットライン(局番なし「188」)に問い合わせよう。
施設への賠償責任問題は…
介護関係で最も多い相談は、施設への賠償責任問題だという。
高齢者施設に在所する親が骨折したものの、すぐに医療機関に運ばれなかったため悪化した…。介護関連では、こういったけがや病気に関する損害賠償請求の相談も多いと外岡さんは言う。
「まずは契約書の確認を。『緊急時には速やかに対処する』と明記されていれば、契約違反だと主張できます。
あるいは、医師の意見書などを集め、施設側の対応が不適切だったことを証明。その上で、施設と交渉するか、交渉に応じなければ裁判になります」
教えてくれた人
弁護士・外岡潤さん/介護・福祉系法律事務所おかげさま代表 https://okagesama.jp/
取材・文/桜田容子 イラスト/ユキミ
※女性セブン2020年10月29日号
https://josei7.com/
●認知症の親の預金を家族が引き出すには?今後しやすくなるってホント?