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緊急事態宣言全国拡大! 遠距離介護はどうなる?|コロナ報道に母の反応は…

 岩手・盛岡で暮らす母の元へ、東京から月2回通う“遠距離介護”を続けてきた工藤広伸さん。新型コロナ拡大による緊急事態宣言の対象地域が全国に拡大された今、遠距離介護をどう続ければいいのだろうか。東京から地方へ移動を伴う遠距離介護は不要不急の外出? 今回工藤さんが取った行動とは。

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言が7都府県で発令され、いよいよ対象地域が全国に拡大されました。しかし、母が住む岩手県はいまだ感染者ゼロです(※4月17日時点)。

 遠距離介護自体は、不要不急の外出には当たりませんが、この宣言を受けてわたしはどう判断したかというと――。

遠距離介護を続けるか? 3つの判断基準

 結論から言うと、わたしは遠距離介護を一時中断することにしました。次の3つの条件が揃っているからで、もしこれらがなければ、おそらく遠距離介護は継続していたと思います。

1:介護保険サービスをフル活用している

 1つ目は、母が利用している介護保険サービスが通常通り稼働しているからです。緊急事態宣言が全国に拡大となりましたが、岩手県はほかの地域と比べると新型コロナウイルスの影響が少ないからか、訪問介護や訪問看護、デイサービスなどもいまのところ、いつもどおりです。わたしが不在でも、母はサポートを受けながら生活できます。 

2:ITを駆使した見守り態勢が整っている

 2つ目は、わが家はITを駆使した見守りが整っているからです。遠距離介護を7年続ける中で、母と離れていても見守りができる態勢を整えてきました。

 例えば、見守りカメラを設置しているので、母の表情や行動を毎日確認できます。また、スマートリモコンを設置して、東京のスマートフォンで、岩手の実家の居間の室温をモニタリングしていますし、必要に応じてエアコンを遠隔操作することもあります。

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3:自分のかわりに介護できる家族がいる

 3つ目に、岩手に妹がいることです。妹は、実家から1時間近く離れたところに嫁いでいて、2人の子どもを子育て中です。

 そのため、わたしのように1週間連続で実家に寝泊りすることはできませんが、たまに家に寄って母の様子を見ることはできます。

 3月末に帰省した際、緊急事態宣言が発令されるかもしれないと想定して、わたしは介護で必要になる日用品を買い揃え、準備してきました。

 こうした条件が整っているため、岩手への遠距離介護を一時中断することにしました。

自分は無症状の感染者かもしれない

 もうひとつ、東京に居るわたし自身のコロナ感染リスクを考えて、遠距離介護を中断したところもあります。

 わたしはフリーランスで、出社する必要もなければ、電車通勤もありません。仕事のほとんどは人に会わなくとも進められるので、感染リスクは多くありません。外出も近所のスーパーへ買い物に行くくらいで、他はずっと家に居る毎日です。

 それでも、知らないうちに感染する可能性はあります。3月末に実家へ帰ったときも、自分はコロナに感染しているかもしれないという不安は、心のどこかにありました。

「今日の体調はどう?」

 いつもなら、母にこんな質問はしません。しかし、わたしが無症状の感染者で、母に新型コロナを移しているのなら、熱が出たり、だるさを感じたりするはずです。毎朝、母に体調の確認をし続けました。

 わが家では、デイサービス、訪問リハビリ、訪問介護の週4回、母の体温を測定します。その体温を見て、37.5度を超えていないかをいつも以上にチェックしました。

 いくら感染リスクの少ない自分であっても、実家に帰るだけでこんなにも不安になるんだと思いました。

新型コロナの不安と母の反応

 コロナ疎開や東京脱出という動きと、不要不急の外出ではない遠距離介護を一緒にして欲しくないという思いもあります。しかし、このご時世ではどんな理由であれ、首都圏在住の人に、地元に帰ってきてほしくないという気持ちも理解できます。

 こうした不安は、家族である妹も同じように抱えていることが分かったので、今回の遠距離介護は見送ることにしました。

 母は新型コロナのニュースを毎日見ていますが、毎回初めてのように驚いています。志村けんさんが亡くなったときには2日間に渡り、わたしに何度もその質問をしていました。

 新型コロナのことを忘れてしまう母に、しばらく帰省しない旨を伝えようか悩んだのですが、不安をあおることになるかと思い、説明はしませんでした。

遠距離介護中断で懸念されること

 もし、遠距離介護の中断が長期化した場合、母が今までできていた習慣の多くを失ってしまう可能性もあります。

 例えば、母が得意な料理の習慣が失われたり、レパートリーの数が減ってしまったりするかもしれません。

 わたしが料理で必要な材料すべてを、台所に並べておくことで、母は何とか料理ができます。もしわたしが材料を揃えておかなければ、材料や味付けが不足した料理が完成します。

 こうしたサポートはわたし独自のものであり、介護職の方もここまではサポートできません。せっかく7年もの間、こうやって母の自立を促してきたのに、できなくなってしまったら、ヘルパーさんに料理をお願いすることになってしまいます。

 わたしは母の最後の砦は料理と考えているので、もし料理までできなくなってしまったら、認知症の症状は急激に悪化するのではないだろうか…。

 次回の帰省は、緊急事態宣言が明けた直後の5月7日を予定していて、新幹線のチケットは手配済み。緊急事態宣言が解除されていることを祈るのみです。

 今日もしれっと、しれっと。

工藤広伸(くどうひろのぶ)

祖母(認知症+子宮頸がん・要介護3)と母のW遠距離介護。2013年3月に介護退職。同年11月、祖母死去。現在も東京と岩手を年間約20往復、書くことを生業にしれっと介護を続ける介護作家・ブロガー。認知症ライフパートナー2級、認知症介助士、なないろのとびら診療所(岩手県盛岡市)地域医療推進室非常勤。ブログ「40歳からの遠距離介護」運営(https://40kaigo.net/

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