外出禁止生活から約1か月の北イタリアが教えてくれる、コロナから家族を守る方法
3月9日に始まったイタリアのロックダウン(全国的施行は3月12日)。感染拡大はようやく下り坂になり始め、さあ、いつ解禁かな? とワクワクし始めたイタリア人に、4月11日に発表された「5月4日まで延長」の政府発表がとどめを刺した。
もうこれで何度目の延長だろう? そろそろキレる人も出てくるのでは? と心配する私をよそに、結構楽しそうにロックダウンライフを送っている私の友人、Mちゃんという人がいる。
東京出身の彼女は、エリートビジネスマンのイタリア人夫と育ち盛りの子供二人の4人家族。ロックダウンが始まった当初こそ「会社に行かなくなった夫は全く邪魔なだけ。いちいち私のところへやってきて、今日の昼ごはんは何? 買い物はいついくの? 夕食は何時? ってうるさいったらありゃしない。夫を家庭内隔離してほしいわ!」と怒っていた。でも慣れてきた今は、家事は家族で当番制に、ランチはDO IT YOUR SELF方式にしたそうだ。
一日中家にいるから、食べたい時間も内容も量もバラバラだから、これはナイスアイデアだと思う。サラダやハムなどを冷蔵庫に準備しておけば、それを各自が好きに食べたり、物足りなげな夫がこっそりパスタを茹でたりしていて、微笑ましいのだそうだ。
昼ごはん、夜ごはんの当番を書き込む表。この日の夕食は夫の番で、ピザを作ることになったそう。
「どうやって作るんだ?」「パパ、レシピ見て勉強して」「え? 発酵に2時間もかかるのか?」「そうだよ、それをパパは3分で食べちゃうんだよ!」
普段の苦労を理解してもらえそうな、思わぬ効果まで!
ロックダウンライフは散歩さえも規制されていて、必要最低限の買い物以外の外出は、自宅から200m以内のみ。みんなが文句を言ったり、こっそり規則を破る中、彼女は「100m圏内で見つけた花を集めて活ける」などをして、とても前向きだ。
ネガティブになったり批判をするのは簡単だけど、小さな、なんでもないようなことに楽しみを見つけるなんて、簡単そうで簡単じゃない。だからやってみたら面白いかもしれない。そして今Mちゃんは、家族で音楽会を計画中だそうだ。音楽会なんていうとおハイソ家族のように聞こえるが、子供の頃にちょっとかじったピアノをMちゃんが、子供二人は歌と踊り、「何もできない夫はタンバリンよ」、と笑っている。
誰が言ったか忘れてしまったのだが、「一日中テレビの前で寝っ転がっているだけで世界を救えるなんてすごいこと、今しかないよ」というようなコメントをどこかで読んだ。世話をしなきゃいけない家族がいる私は、一日中寝っ転がっているわけにはいかにけれど、それぐらいのゆるい気持ちでいれば、ロックダウン生活も怖くないんだな、と妙に納得したのだった。
文と写真(一部)/宮本さやか(みやもと・ さやか)
1996年よりイタリア・トリノ在住。イタリア人の夫、19歳の娘、ラブラドールのグレース、猫のニーナとジージョと暮らしつつ、日本とイタリアの「食」を発信するフードライター。一方、イタリア料理教室、日本料理教室、フードイベントなども行う。
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