外出禁止生活から約1か月の北イタリアが教えてくれる、コロナから家族を守る方法
その週1回、たかが近所のスーパーなのに、行く時にはまるで命がけのミッションをこなすような緊張感だ。
私の場合はまず、行こうと思う前日から、買い物リストを入念に準備検討する。買い忘れがあっても、パッと買い足しに行ったりできないし(別に禁止されているわけではないけど)、分量を間違えて買いすぎてもいけないし。出かける前には外出申請書をプリントアウトして住所、氏名、外出理由等を記入。ショッパー持った、マスクと手袋よし、消毒ジェルよーし、と指差し確認。そして、できるだけウイルスが手につかないように、どのタイミングで手袋をとり、どの手で消毒ジェルの蓋を開けて、家に帰ったら手洗いが先が、ドアノブを消毒するのが先か?などなどイメージトレーニングをしたりして。行く前に気疲れでぐったりしちゃうのであります。
でも、私を含む若い世代は、気疲れしようがロックダウンだろうが、SNSやチャットで友達や家族と好きなだけおしゃべりすればうっぷんも晴らせるし、今世界で何が起きているのか、コロナウイルスとはなんなのか、その気になればネットやテレビで情報を得るのは難しくない。ZOOM飲み会をしたり、オンラインでヨガもトレーニングもできる。でも、お年寄りたちはどうだろう?
コロナウイルスの犠牲者の8割は高齢者だから、高齢者を守りましょう、高齢者に感染させないように、大好きなおじいちゃんおばあちゃんに会いに行くのも、今は我慢しよう、とイタリアでは感染拡大が始まった2月後半からずっと言ってきた。
イタリア人たちは本当におじいちゃん、おばあちゃんが大好きで、大切にする人が多い。小さい頃からうんとうんと、可愛がられて育つからだろうか。
戦争体験世代には、ウイルスが大したことじゃない?
そんなイタリアなのに、ロックダウン中は家族でも同居していなければ会うことは許されない。
SNSに投稿された、ナポリのあるおじいちゃんとおばあちゃんが孫娘の誕生日を祝った動画は、イタリアそのものだった。会いに行って抱きしめることができないから、孫が暮らすマンションの下で「誕生日おめでとう」と書いた幕を振ってお祝いをしたというのだ。嬉しくて、悲しくて泣いてしまった孫娘に、「大丈夫、すぐ終わるから」と声をかけるおじいちゃん。ナポリ方言バリバリで、言っていることの半分ぐらいわからない私も、思わずもらい泣き。あの女の子の涙も私の涙も、おじいちゃんたちに会えない悲しみの涙なのか、人々の暮らしをこんなにも変えてしまったウイルスへの恐怖なのかはわからない。両方かもしれないし。
ところが、イタリア人たちがこんなに大好きだから一生懸命守りたい、当の高齢者たちが意外にも、規制を無視して外出し続けて問題になった。
「自分には関係ね~」と夜遊びやパーティーを続ける若者たちがいた一方で、仲良しと公園のベンチに座っておしゃべりして何が悪い? いつもの散歩仲間と歩くのなぜダメなの? というお年寄りの姿を、何度も何度も、テレビのニュースで、私自身の目で、見かけた。
なぜなんだろう? コロナウィルスの危険性が理解されない? 新聞の自宅配達がないイタリアで、情報が高齢者には行き渡りにくい? 戦争を体験した世代には、ウイルスなんて大したことじゃないように思えるからだ、なんていう意見をどこかで読んだけど、本当だろうか?
ネットの情報が届きにくいならと、感染拡大が特に厳しい地域では、知事自らがメガホンを持って町を歩き、「外出しないで」「家にいて」と訴え続けたとか、「私はあなたの町の知事です」とメッセージを録音して、住民全員に電話をかけたどこかの市長もいたそうだ。