お風呂場で死なないために今すぐできること|怖いのはヒートショックだけじゃない!
千葉科学大学危機管理学部教授の黒木尚長さんは「風呂での熱中症」のリスクを指摘する。
「人間は体温が40℃を超えると、熱中症に陥ります。意識を失うこともあり、非常に危険。湯船に肩までつかった場合、41℃の湯なら33分、42℃の湯なら26分で体温が40℃に達します。溺死する状況じゃなくても意識を失ったまま入り続けると危険。体温が42・5℃を超えれば心停止を起こします。年配の人は若い人に比べて温度感覚が鈍いので、体温が上がりすぎて“熱い”と感じたり、頭痛などの体からのSOSを受け取りづらい。そのためつい長湯してしまい熱中症になりやすい。熱中症対策としては、41℃以上のお湯に、30分以上肩までつからないことを心掛けてください」
→白川由美さんの死因もしかして…高齢者の長湯は死を招く!?お風呂で熱中症に
●高齢者の入浴中は5~10分おきに様子を見に行って
入浴中の急な頭痛、手足の脱力、胸の苦しさは危険信号。そんなときはどのような行動をとるべきか。
「まずは溺死しないように湯船から出ることが第一ですが、もし立ち上がれない場合は、浴槽の栓を抜きましょう。お湯さえなければしばらくは時間が稼げるので、家族がいれば助けを求めることもできる。高齢者が入浴しているときは、5~10分ごとに家族の人が様子を見に行ってほしい」(前出・前田さん)
便秘時の「いきみ」で命を落とす
お風呂以外にも、自宅の中で危険な場所がある。前出の末並さんが実体験を振り返る。
「介護をしていた母親が、トイレに入ってなかなか出てこない。様子を見に行ったところ、頭から床に倒れて後頭部を9針縫う大けがを負っていたんです。介護業界では、トイレも家の中で危険な場所といわれています。便座に座った状態で意識を失い、お尻も便器から外れて床が排泄物まみれになったところを発見された例もあります」
この季節、夜間に布団から出てトイレに行くのは億劫になりがちだ。しかし、その行動が危険につながる可能性があると、さかい医院院長の堺浩之さんが指摘する。
「排尿をがまんしていると血圧が上がるのですが、ようやくトイレに行って排尿すると、今度は血圧がガクンと下がる。そもそも冬のトイレは寝室との寒暖差が大きいので、血圧の変動も大きい。こういった要因が重なり、脳卒中や心筋梗塞が起こるケースもあります」
トイレに行くときに1枚上着を羽織ったり、トイレ内に小さなヒーターを設置する、便座を温めておく、などの対策が、命を守ることにつながるという。
便秘に悩まされている女性は多いが、便を出そうとする「いきみ」によっても血圧は上昇する。これも寒暖差による血圧上昇と重なるため、冬場は危険度が増す。便秘を改善するための充分な水分補給も、効果的な対処法だ。
教えてくれた人
早坂信哉さん/医師。東京都市大学人間科学部教授。入浴と健康の関係を研究している。
前田眞治さん/国際医療福祉大学大学院教授。
※女性セブン2020年3月5日号
https://josei7.com/