長生できる最強の野菜スープレシピ|抗酸化物質たっぷりでがん予防も
「冬野菜に含まれる各種の抗酸化物質が連携すれば、がんや生活習慣病、老化の予防など、さまざまな病気に効果が期待できます」と言うのは、医科学者の前田浩さんだ。
10年前に乳がんを患った記者が、「食生活の見直し」ががん予防にいかに大切か、自らの体験を踏まえつつレポートする。
抗酸化物質豊富な野菜スープで体を錆びさせない
がんをはじめ、ほとんどの病気や老化にかかわっているのが、猛毒の「活性酸素」だ。活性酸素とは通常の酸素が体内で変質し、ほかの物質を攻撃する酸化作用。鉄が錆(さ)びるのも「酸化」で活性酸素の仕業。この状態が人体でも起きている。活性酸素は、炎症やストレス、化学物質、たばこなど人為的要因に加え、ウイルス感染、宇宙や地上の鉱石などからくる放射線、紫外線などの影響を受けて発生し、細胞や遺伝子を攻撃し傷つける。私たちは生きている限り、これら自然界から生じる活性酸素からは逃れられない。
「しかし、活性酸素を抑える方法はあります」と前田さん。抗がん剤研究でノーベル賞候補と目される世界的権威の前田さんが、活性酸素対策に推奨しているのが「野菜スープ」である。特に今が旬の冬野菜は「健康スープに適している」とすすめる。その効果について聞いてみた。
→がんを予防する食事|抗がん剤の権威が教える野菜スープが最強な理由
野菜は加熱で活性酸素消去する働き10~100倍
─―野菜をスープにする効果とは?
前田 野菜に含まれる抗酸化物質の代表的なものに、ファイトケミカルがあります。ファイトケミカルは植物の色素や香り、渋み、辛味、アクなどの植物由来の化学成分で、酸化を防ぐ作用がありますが、人間は自分でこのファイトケミカルを作ることができません。ですので、人間が細胞や遺伝子の酸化を防ぎ、生命を維持するためには植物からファイトケミカルを摂取するしか方法がないのです。ただし生の野菜をそのまま食べてもファイトケミカルはわずかしか吸収できません。野菜の中のファイトケミカルの多くはセルロースという頑丈な細胞壁に包まれた細胞の中にあり、人間はこのセルロースを消化できないからです。セルロースを壊すベストな方法は「加熱してスープにする」こと。野菜を茹でるだけで頑丈な細胞壁は壊れ、ファイトケミカルがスープに溶け出します。実験では生野菜をすりつぶしたものより煮出した野菜の方が、活性酸素を消去する働きが10~100倍も強いことが明らかになっています。
抗酸化力物質が豊富な野菜選びと調理法
─―特に旬の冬野菜スープがよいと?
前田 ハウスで栽培されたものより、紫外線などストレスがかかった野外栽培の方が、野菜の抗酸化力が上がります。ただし野外で栽培する場合、病害虫対策により農薬が多く使われるケースがあるので、その点、冬野菜には病害虫がつきにくく、低農薬や無農薬で栽培ができ、安心して野菜から抗酸化物質を摂ることができます。また冬野菜はやわらかいので、ポタージュなどスープにしやすい点も魅力です。
─―冬野菜の調理で大切なことは?
前田 できるだけ多くの種類の野菜を使うことです。一般に野菜に含まれるファイトケミカルには、野菜の種類によって異なる成分があるので、各種の抗酸化物質が連携すれば、がんや成人病などさまざまな病気の成長を抑え、寿命を延ばすことも期待できます。例えばブロッコリーなどアブラナ科の野菜は発がん性物質を解毒する酵素を助けます。ほうれん草にはルテインが多く含まれ、これが紫外線が作る活性酸素を消去し、シミや白内障、皮膚がんなどの予防として期待できます。また野菜の茎や種などの野菜くずには抗酸化物質が豊富に含まれているので、捨てずに利用することをおすすめします。いくつかの野菜の葉や根は硬いので、使う場合は、油で炒めてから加熱しスープにするとおいしく食べれらます。
がんに克つ長生きスープにおすすめ野菜15選
厳しい寒さの中で育った冬野菜は、病害虫がつきにくいので農薬がほとんど使われず、安心して野菜からファイトケミカルを摂取できる。スープにすればさらに効果アップ。なるべく色の濃い野菜を選び健康に役立てたい。
●小松菜
栄養価が高い緑黄色野菜。抗活性作用、ひいては、がん予防、粘膜や皮膚の健康維持、喉や肺などの呼吸器系統を守る働きを持つ。
●ちぢみほうれん草・ほうれん草
葉の部分には紫外線からくる活性酸素を強力に抑える作用のあるルテイン(カロテノイドの一種)を多く含み、葉の葉緑素には貴重なミネラルのマグネシウムが多く、赤い根の部分には骨の形成や健康維持に役立つマンガンを多く含む。ひいては、ルテインは肌荒れやシミの予防にも。白内障予防にもなる。
●白菜・キャベツ
風邪予防や肌荒れ効果のあるビタミンC、骨の形成に貢献するビタミンKを多く含む。体内のナトリウムを排出し、血圧を下げ、むくみ防止にも有効なカリウム、胃腸の働きを活発にし腸内環境を整える食物繊維も豊富。旨み成分も多いので、煮込んでスープにすると甘みがありおいしい。
●かぶ
葉は、抗酸化作用の強いビタミンE、ビタミンC、β-カロテン、そのほかのカロテノイドを含み、抗活性酸素の働きがある。かぶは根も葉もやわらかく、スープになじみやすい。
●春菊
抗発がん作用や肌の老化、動脈硬化を予防し血管を保護する効果があるとされているβ-カロテンが、小松菜やほうれん草などより豊富。
●ブロッコリー
発がん物質を解毒する酵素を誘導するスルフォラファン、疲労回復、風邪予防、がん予防、老化防止に効果があるビタミンCを多く含む。
●かつお菜
アブラナ科の葉野菜でアミノ酸を多く含む。β-カロテン、そのほかのカロテノイド、ビタミンC、カルシウムも豊富で抗酸化性が高い。
●大根
根の部分は消化を助け、整腸作用のあるジアスターゼを含む。葉は抗酸化作用の強いビタミンE、ビタミンC、β-カロテンなどを含む。
●ねぎ
強い香り成分の硫化アリルは、血行をよくし、疲労物質である乳酸を分解。抗酸化力もあり、消化液の分泌を促す働きもある。
●セロリ
葉にビタミンB1やB2、β-カロテン(カロテノイド)、ビタミンC、ビタミンKのほかに食物繊維など栄養成分を含む。皮膚や粘膜の保護、目の機能改善効果などがある。
●にんじん
免疫力を上げ病気を予防。特にβ-カロテンが多く、食物繊維(水溶性、不溶性両方)を豊富に含んみ、便秘解消や整腸作用に効果的。
●ごぼう
水溶性、不溶性共に食物繊維を豊富に含み、便秘解消に効果がある。不溶性食物繊維のリグニンは抗活性酸素作用が強く、大腸がんなどの予防効果が期待されている。
●ビーツ
特にロシア料理のボルシチに使われる赤紫色の根菜で、アントシアンを多く含み、抗酸化力も強い。血行を改善し、血管をやわらかくして血栓の発生を防ぎ、動脈硬化予防に役立つ成分を含む。