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介護施設訪問レポート|多職種が連携してチームケアを実践している総合福祉施設<後編>

 高齢者向けの住宅の中から、話題の施設をピックアップ。記者が訪問し、施設で働く人の思い、設備、サービスなどをレポートする。今回は、東京都渋谷区にある総合福祉施設「渋谷区つばめの里・本町東」だ。

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渋谷区つばめの里・本町東

 2018年に小学校の跡地を利用して建てられた「渋谷区つばめの里・本町東」。こちらの施設を渋谷区から指定管理を受け、運営しているのは湖山医療福祉グループの社会福祉法人カメリア会だ。湖山医療福祉グループは、北は北海道から南は島根県に至る全国各地で高齢者施設や療養病床を運営し、1万1000人を超える職員が医療・介護・福祉のサービスを提供しているという。

多職種が連携するチームケアを実践

 施設の機能の中心となっているのが、定員100人の特別養護老人ホーム(以下、特養)だ。常時介護が必要で、在宅での生活・介護が困難な人が10人ずつのユニットと呼ばれる単位に分かれて、職員に支えられながら生活している。渋谷区では、特養の入居対象となるのは原則として要介護3~5と認定された人。自治体によって基準が異なるので、特養への入居を希望する場合は事前に確認をしておきたい。

「特養では一人ひとりに合わせた個別ケアを目指していて、何を求めているのか、どのようなケアが必要かを見つけることを意識しています。介護職だけでその方の思いをサポートすることはできないので、多職種が連携するチームケアを実施しています。例えば、車椅子から立ち、歩きたいという気持ちがある方のサポートをするために、機能訓練の担当がリハビリメニューを考え、食事の担当が食事の形態を食べやすいように変えることで摂取できる栄養を増やすといった連携をしています」(施設長の山匠さん。以下、同)

 湖山医療福祉グループでは、培ってきたケアの内容を社会全体に還元させるために一般社団法人「チームケア学会」を設立。福祉・医療に関わるあらゆる職種が学習、研究活動を行い、多職種連携の推進やケアの質の向上に取り組んでいるという。

 こちらの特養では食事や入浴、排泄などの日常生活の介助や、レクリエーション、健康管理などを受けることができる。居室のトイレはバリアフリー対応がされ、身体が不自由でも入浴できるように機械浴の設備も整っているので安心だ。


入居者が料理を作る認知症高齢者グループホーム

 2階のグループホームでは、認知症の高齢者が9人ずつ1つのユニットで暮らしている。家庭的な雰囲気の中で、家事や身の回りのことなど、できることはなるべく自分ですることを目的にしているという。それによって、認知症の症状の進行を緩和させ、よりよい日常生活を送ることができるよう支援していくことを目指しているという。

「グループホームでは認知症のご高齢者が共同生活を送っています。食事は朝昼晩、全てここで入居者の皆さまと一緒に作っています。野菜を切ったり、盛り付けをすることが認知症の症状緩和にもつながります。ある程度身の回りのことをご自身でできる方は、グループホームを希望されることが多いですね。生活のスケジュールなど、自由度が高いことも特徴です」

 少人数の決まった顔ぶれで生活できるので、職員とも顔なじみになりやすく、認知症の高齢者が周囲の人の入れ替わりによる混乱をしにくいという。また、住み慣れた地域で生活を続けられるので、認知症の症状を悪化させてしまう環境の変化によるストレスも少ないそうだ。訪れたときは昼食後の午後のひととき。穏やかな雰囲気で入居者同士が談笑していた様子が印象的だった。


 いかがだっただろうか。総合福祉施設として地域の介護ニーズに応える存在として期待の高まる渋谷区つばめの里・本町東。施設の運営を委託されているカメリア会の職員たちは日々、真摯に利用者や入居者、その家族、さらには地域住民と向き合っている。高齢者が毎年増えていくなか、このような施設のニーズは今後ますます増えていきそうだ。

撮影/津野貴生 取材・文/ヤムラコウジ

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【データ】
施設名:渋谷区つばめの里・本町東
公式WEBサイトhttp://shibuya.camellia-kai.com/
所在地:東京都渋谷区本町3-46-1
最寄駅:都営大江戸線「西新宿駅五丁目」駅から徒歩5分
類型:特別養護老人ホーム、グループホーム、ショートステイ、在宅療養支援ショートステイ、デイサービス
運営法人:社会福祉法人カメリア会
敷地面積:6774.87平方メートル
延床面積:10049.04平方メートル
室数:特別養護老人ホーム定員100名、グループホーム定員18名、ショートステイ定員20名、在宅療養支援ショートステイ定員10名、デイサービス定員38名
入居要件(特別養護老人ホーム・渋谷区統一):要介護認定「3~5」の方 及び 要介護認定「1・2」の方で、居宅において日常生活を営むことが困難なことについて、やむを得ない事由(1~4)がある方
1.認知症である者であって、日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られる
2.知的障害・精神障害等を伴い、日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さ等が頻繁に見られる
3.家族等による深刻な虐待が疑われること等により、心身の安全・安心の確保が困難である
4.単身世帯である、同居家族が高齢又は病弱である等により家族等による支援が期待できず、かつ、地域での介護サービスや生活支援の供給が不十分である
申込時点で要介護3以上の方で、申込後、要介護度が1・2に変更となった場合、上記1~4の事由に該当しない方は、入所の対象とならない。
構造:鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造、一部鉄骨造。地上5階・地下1階
開設年月日:2018年5月1日
料金:(1)特別養護老人ホーム:基本料金+加算料金+自己負担金(食費300~1380円、居住費820~1970円)
基本料金(1割負担の場合、1日あたり):要介護度1・682円~要介護度5・975円
(2)グループホーム(1割負担の場合の目安):要支援2・15万6213円~要介護5・16万1081円

※施設のご選択の際には、できるだけ事前に施設を見学し、担当者から直接お話を聞くなどなさったうえ、あくまでご自身の判断でお選びください。

●地域交流の拠点になった新宿・神楽坂の高齢者総合福祉施設<前編>

神楽坂の高齢者を支える高齢者総合福祉施設<後編>

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