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介護施設訪問レポート|地域交流の拠点になった新宿・神楽坂の高齢者総合福祉施設<前編>

 高齢者向けの住宅の中から、話題の施設をピックアップ。記者が訪問し、施設で働く人の思い、設備、サービスなどをレポートする。今回は、東京都新宿区にある高齢者総合福祉施設「神楽坂」だ。

高齢者総合福祉施設「神楽坂」

 今年9月15日時点の東京都の高齢者人口(65歳以上)は309万4000人、都の総人口の4.3人に1人が高齢者だという。今回訪れた神楽坂のある新宿区も全国平均と比べれば割合は少ないが、高齢化率が今後も上がっていくことが予想されており、高齢者福祉は大きな課題となっている。

地域に開放している交流スペース

 飲食店の賑わいと閑静な住宅街の顔を持つ神楽坂。東京メトロ東西線の神楽坂駅から徒歩2分と利便性の高い場所に建っているのが、高齢者総合福祉施設「神楽坂」だ。名前に総合とついている通り、特別養護老人ホーム、ショートステイ、認知症高齢者グループホーム、デイサービス、居宅介護支援事業所の5つの機能を合わせ持っている。また、地域交流の拠点として、地域文化の発展に貢献することを目指しており、それを実現するため1階に地域交流スペースを設けている。それぞれの事業はどのように地域に貢献しているのだろうか。前編では地域交流スペースとデイサービスについて見ていきたい。

 早稲田通りに面した建物の1階は、全て地域交流スペースとして開放されている。憩いの場として自由に使うことができるので、散歩の途中で立ち寄ったり、おしゃべりに花を咲かせる人も多いという。また、地元の会議や行事のために無料に貸し出しており、公共スペースとして機能している。もちろん、高齢者のためだけの場所ではなく、親子連れの利用も多いそうだ。訪れた日にも乳児にミルクをあげているお母さんの姿があった。

 地域交流スペースにはカフェ「しの笛茶房」が併設されていて、コーヒーやお茶、パンなどの軽食を楽しめる。通常のカフェと同じように誰でも利用可能だ。包括連携協定を結んだ目白大学の学生が、昨年度までは日曜日にカフェの運営を行っていたという。今年度はゼミ学生の発表の場として地域交流スペースを活用しており、引き続き地域連携を深めているそうだ。

 この場所には元々あったのは、明治時代から80年余り地域を災害から守ってきた牛込消防署。都有地である跡地を特別養護老人ホームなどの用地として貸し付ける東京都の公募があり、運営会社の社会福祉法人三篠会が応募し、選定されたという。商業地でもあるこの地に高齢者向けの施設を作ることには様々な声もあったというが、今ではすっかり地域の福祉拠点として受け入れられているようだ。

楽しみ重視のデイサービス

 高齢者総合福祉施設「神楽坂」の2階ではデイサービスが提供されている。利用にあたっては、要支援・要介護の認定と面談、契約が必要だ。担当のケアマネジャーへ面談希望日を伝えると、施設側がケアプランに基づいてサービス調整をしてくれる。

 この日に行われていたのは、ピアノの演奏と歌を楽しむ音楽会。多くの人がピアノの演奏に聴き入ったり、合唱を楽しんでいた。こちらのデイサービスの特徴は、楽しみを重視していることだという。気軽に集って楽しめる、高齢者のためのサロンを目指しているそうだ。

「デイサービスは平均すると週3日、多い方には週5日利用いただいています。顔見知りができると『デイサービスに行こう』ではなくて『あの人に会いに行こう』という気持ちになり、モチベーションも違ってきます。利用者同士でもコミュニケーションを取っていらっしゃっていて、それを楽しみにしている方も多いです。ご本人のお気持ちを無視して無理にリハビリをするようなことはありません。それぞれの方が楽しく、やりたいことをして過ごせる場になるように意識しています。ご高齢になると外出する機会が減ったり、ご家族が仕事などで日中は不在で家に一人でいる人も多いですが、デイサービスに通うことで生活にメリハリをつけることができます」(高齢者総合福祉施設神楽坂施設長の稲田純一さん 以下「」は同)

 デイサービスの大きな楽しみの一つが食事。こちらのデイサービスでは行事食など食を楽しむイベントを定期的に開催しているという。料理はバイキング形式で、料理人として腕を磨いてきた厨房のスタッフが寿司を握るなど、手作りの本格派。イベントの時はいつもよりも食事量が増える人も多いそうだ。特別な食事で非日常を味わってもらうだけではなく、日々の健康管理も行っているという。

「デイサービスでは体重やバイタルを測り、健康チェックをしています。食事の様子を職員が見ているので、週に何日か来ている方の場合、心身の変化が分かります。このような形で体調管理をしていて、もし何か問題があればケアマネジャーを通してご家族に様子をお伝えしています」

 いかがだっただろうか。地域に施設を開放し、高齢者にサービスを提供している高齢者総合福祉施設「神楽坂」。1階の地域交流スペースとカフェは誰でも気軽に立ち寄れるので、まずは雰囲気を感じてみてはいかがだろうか。

撮影/津野貴生 取材・文/ヤムラコウジ

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【データ】
施設名:高齢者総合福祉施設「神楽坂」
公式WEBサイトhttp://www.misasakai.or.jp/shisetsu/kagurazaka.php
所在地:東京都新宿区矢来町104
最寄駅:東京メトロ東西線「神楽坂」駅から徒歩2分
類型:特別養護老人ホーム、ショートステイ、認知症高齢者グループホーム、デイサービス、居宅介護支援事業所
事業主体:社会福祉法人三篠会
敷地面積:1541.68平方メートル
延床面積:5617.6平方メートル
室数:特別養護老人ホーム定員86名、ショートステイ定員9名、認知症高齢者グループホーム定員18名、デイサービス定員30名、居宅介護支援事業所
入居要件:特別養護老人ホーム・介護保険制度の要介護状態区分の要介護3~5で、いつも介護を必要とし、ご自宅で介護を受けることが難しい方
構造:鉄筋コンクリート造地上9階建て
開設年月日:2011年2月1日
料金:特別養護老人ホーム(要介護1・1割負担の場合)
1日あたりの介護費用922円、居住費820円、食費300円、利用料2042円
料金は要介護度、収入状況等で変動するため、詳細はお問合せください。

※施設のご選択の際には、できるだけ事前に施設を見学し、担当者から直接お話を聞くなどなさったうえ、あくまでご自身の判断でお選びください。

●医療依存度の高い高齢者が最期まで過ごす医療連携型の有料老人ホーム<前編>

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