認知症の母のラーメン調理に立ち会ってわかった衝撃の作り方【認知症介護の日常】
このことがあってから、母が麺類(日本そばやうどん)を作る際は、麺をゆでるところだけ、わたしが立ち会うようになりました。
また、スープや麺をゆでる際に使用済みのコップに入れた水を使うので、母が料理を始める前に、コップの水はきれいなものに替えるようにしました。
そんな面倒なことはせずに、介護者がラーメンを作ればいいと考える人もいるでしょう。あるいは、レパートリーからラーメンを外せばいいという人もいるでしょう。
麺のゆで方が分からなかったり、水の量が分からなかったりしても、母は体で覚えたスープの味は再現できます。化学調味料を入れた回数を忘れてしまっても、煮干しで出汁をとればなんとかなります。
認知症が進行し、できないことがどんどん増えていきますが、残っている母の能力はたくさんあります。その能力を活用できる環境を整えることは、母の自立につながります。
自分でラーメンを作ったほうがよっぽどラクですが、たとえ少々おかしなラーメンでも母に作ってもらったほうが、母が元気でいられる期間が長くなるような気がします。
ラーメンを作れなくなってしまったら、宅配弁当サービスを利用したり、ヘルパーさんの力を借りたりしなくてはいけません。ラーメンは、母の生命線でもあります。
いつまでラーメンを作り続けることができるのか、後どれくらい時間が残っているのか分からないのですが、これからも母のラーメンを見守り続けたいと思います。
今日もしれっと、しれっと。
工藤広伸(くどうひろのぶ)
祖母(認知症+子宮頸がん・要介護3)と母のW遠距離介護。2013年3月に介護退職。同年11月、祖母死去。現在も東京と岩手を年間約20往復、書くことを生業にしれっと介護を続ける介護作家・ブロガー。認知症ライフパートナー2級、認知症介助士、なないろのとびら診療所(岩手県盛岡市)地域医療推進室非常勤。ブログ「40歳からの遠距離介護」運営(https://40kaigo.net/)