連載
2019.08.22 06:00
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兄がボケました~若年性認知症の家族との暮らし【第3回 この光景見たことある】
若年性認知症を患う兄と2人暮らしをするライターのツガエマナミコさんが、兄との日々を綴る連載エッセイ。「明るく、時にシュールに」、でも前向きに認知症を考えます。

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疑惑続々
それからしばらくして父が交通事故に遭いました。4人で暮らし始めておよそ2年が経った冬の日でした。3か月の入院むなしく、父は桜の季節に天国へ旅立ちました。
その間の兄は、平日は勤め、週末はわたくしと母を車に乗せてお見舞いに行きました。一家の危機をどこまで感じていたかはわかりませんが、普段と変わらぬ朗らかな様子。でも病気の小さな兆候は、その間にもいろいろ感じました。
安室ちゃんの件(第2話参照)以来、わたくしは兄の認知症疑惑に過敏だったせいもあるかもしれません。例えば病院の駐車券を仕舞ったポケットが毎回わからなくなったり、「この前のコンビニに寄ってね」と言っても違うコンビニに着いたりすること。
「そんなこと?」と言われればその通りなのですが、なんか違うのです。
「この前のコンビニ」は帰り道沿いにあるのに、わざわざ遠回りし