【新連載】兄がボケました~若年性認知症の家族との暮らし「第1回 これからどこへ引っ越すの?」
若年性認知症を患う兄と同居するツガエマナミコさんが、どのように兄と向かいあい、どう暮らしているのかを綴る連載エッセイ。
「明るく、時にシュールに」、でも前向きに認知症を考えます。
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「ここに引っ越してきたんだよ。ここが新しい家だからね」
およそ8年前、そう言って母をなだめていたのは兄でした。
両親、兄、わたくしとバラバラで暮らしていた3世帯が再集結して、新しい家で住み始めたばかりのとき、認知症だった母は「ここからどこに引っ越すの?」と不安げに何度もつぶやいていました。
「引っ越しはもう終わり。もうどこにも行かないから」と何度答えたことか。あの頃の兄は、母をなだめすかすコチラ側の人間でした。でも、父が逝き、母も他界したほんの4~5年の間に状況は逆転。最近、小ぶりなマンションに引っ越しを終えたところで、兄が、母とまったく同じことを言ったのです。
兄と亡き母は同じアルツハイマー型認知症。母は老人性でしたが、兄はまだ60歳。3年ほど前から2か月に一度、病院に通っています。若年性認知症というやつです。
つい1~2日前に引っ越したばかりなのに、兄にはあのドタバタした一部始終が記憶になく、リビン