【初めての介護】Q&A お金の悩みにズバリ回答
高齢化社会が進み、避けて通れないのが介護の問題だ。介護のことを考えるときに気になるのは、やはりお金のこと。自分や家族が倒れた時に困らないためには、どう備えるべきか──専門家がお金の悩みにズバリ回答。
介護保険制度改正で自己負担額が3割に増加する人も
公的介護保険制度(※)のスタートから17年が経ち、介護保険のサービス利用者は約614万人(2016年度)に達し、過去最高を更新。その一方で、国の財源である税収は減収しているため、介護保険制度の見直しが急務となっている。
見直しは3年ごとに行われているが、今年8月から導入される改正では、自己負担額が現行2割の人の一部が3割に引き上げられるなど、利用者の負担が大きく増える見込みだ。
「対象者は約12万人と想定されています。夫婦世帯では年収463万円以上がその対象となります。こうした措置は2025年に団塊世代すべてが75才以上になり、高齢者が増えることを見据えたもの。
手厚い介護を望むなら、公的介護保険でまかなえない部分は自己負担で民間サービスを利用することも考えなければならなくなってくるでしょう」と、介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さんは指摘する(以下「」同)。
※公的介護保険制度とは?
公的介護保険とは、介護費用の個人負担を減らすために始められた社会保障制度、40才以上の人は全員が加入義務づけられ、介護が必要になったときに所定の介護サービスを受けられる。
利用するには、要支援1~2、要介護1~5の介護認定を受ける必要がある。認定されると介護にかかる費用が1割、2割負担で済む(2018年8月からは2割が一部3割に変更)が、限度額を超えた分は自己負担となる。
介護の期間は平均で5年。4年以上は45%以上
Q:介護は何才くらいに始まり、何年にわたる?
介護が必要となる人の割合は年齢が高くなるにつれて多くなり、85才以上になると一気に増えて2人に1人が要支援・要介護状態になる(※1:厚生労働省『介護保険事業状況報告(暫定)(平成28年9月)』)。
「親や自分自身が60代になったら介護はいつ始まるかわからないと考えておくべきです。昨日まで健康だった人が倒れて介護が必要になるというケースは少なくありません」
介護が始まるとその期間は決して短くない。介護経験のある人が介護にかかわった期間は平均で約5年、4年以上の人は45%を超え、そのうち15.9%の人は10年以上に及んでいるのだ(※2:公益財団法人生命保険文化センター『生命保険に関する全国実態調査』(平成27年度))。
「いくらかかる」のではなく「いくらかける」か
Q:介護の費用はどれくらいかかるの?
自己負担額を含んだ月々の介護費用は、平均7.9万円。全体の約30%の人は10万円以上かかっている(※2)。
例えば、要介護3の公的介護保険の利用限度額は26万9310円。1割負担なら2万6931円ですむが、それで充分かどうかは本人や家族がどういう介護をしたいかで変わってくる。
例えば、自己負担の限度額ぎりぎりでサービスを受けていた家族が、さらに夜と週末に訪問介護サービスを追加するとその分はすべて自己負担。さらに、それまで利用していなかった食事の宅配サービスも利用すれば、その費用も加わる。
「10万円、20万円を自己負担している人もいます。中には借金をしたり、自宅を売却したりしてまで介護費用を捻出する人もいますが、要はいくらかかるのではなく、いくらかけるかです。
いざ介護に直面したら、まず、しっかりと資金計画を立てたうえで、どのように介護するかを考えることが大切です」
施設にかかる費用の平均は、月々約12万円
Q:施設の入居を考えているがかかる費用は?
施設によってかかる費用はさまざまだが、平均では自己負担を含めて月々約12万円(※2)と知っておきたい。
かかる費用には、入居一時金、月々必要な居住費や食費、医療費などがある。公的介護サービスを利用する場合は、公的介護保険が適用される。
「特別養護老人ホーム(特養)なら、入居一時金も不要で比較的低コストで入居できます。公的施設では、所得によって費用の軽減措置があるので、月々の費用の目安は5万~15万円と幅があります。
民間の有料老人ホームでは、入居一時金が必要なところも多く、中には1億円なんてところも。月々の費用の目安は10万~40万円くらいです。
高齢になってからの住み替えは健康状態に影響を及ぼすこともあるので、体験入居をするなど情報収集はしっかり行いましょう」
在宅介護の場合は、家のリフォームが必要な場合も
Q:在宅介護だと費用は少額ですむの?
介護では、実際には公的介護保険制度の対象外の費用が多くかかってくる。おむつ代、寝具代、衣類代、流動食代…洗濯する量も増えるために水道代もかさむ。さらに病院にかかる医療費や、通院の際にタクシーを使えばその料金などの負担もある。
在宅介護の場合は安全に暮らせるよう、リフォームが必要なケースも多い。トイレ、浴室の手すり、すべりにくい床への変更、段差の解消、ドアも開けやすい引き戸へなどのリフォームは最低限やっておきたい。
「公的介護保険では要介護度に関係なく、上限20万円までリフォーム代が支給されます。自治体によっては独自サービスとして住宅改修の費用を助成しているところもあります。
ただ、リフォーム代はかけようと思えばいくらでも費用はかけられます。火事の心配の少ないIHや床暖房にしたり、車椅子を使うための本格的なバリアフリーリフォームなら数百万円から1000万円かかる例も少なくありません」
「高額介護サービス費」「高額医療・高額介護合算療養費制度」の利用も
Q:介護費も医療費も膨らんできたら?