家族が死亡したら… 知っておくと役立つ【手続き】のコツ
認知症の母を、遠距離で介護している工藤広伸さん。40歳の時、余命宣告をされた祖母の介護がスタートすると同時に母の認知症も発覚し、ダブル介護を経験する。祖母を見送り、その後も遠距離で介護を続けてきたが、数か月前に、長年、母とも離れて暮らしていた父も倒れ、再びダブル介護に。
父は在宅医療を選び、遠距離からそれをサポートし続けたが先日他界された。
さまざまなスタイルでの介護を続けながら、その時に”学んだ””気づいた”介護心得をブログで公開し、話題を呼んでいる。
当サイトでも、家族ならではの視点でのアドバイスを執筆中。
今回のテーマは、「遺族の手続き」。祖母、父と見送った工藤さん。家族の死に向けて予め準備することは、なかなかできないことかもしれないが、これだけは知っておいた方がいいというアドバイスをまとめてもらう。
精神的につらい時期に、バタバタになってしまわないために…。必見だ!
* * *
先日、父(享年76)が亡くなり、わたしが役所等で死亡後の手続きを行いました。
その経験をふまえ、事前に知っておきたい「コツ」について、5つにまとめてみました。
【1】亡くなる前に葬儀屋を決めておく
亡くなった祖母も父も、生きている間に葬儀屋を決めておきました。なぜなら、病院で亡くなった直後に、
「葬儀屋さんは決めていますか?」「ご遺体はどうされますか?」
と質問されるからです。
家族は深い悲しみに浸る間もなく、まずは目の前の遺体をどこに安置するかを「早急に」決めなくてはなりません。
病院にある霊安室に遺体を安置できる時間は、数時間程度だそうです。早々に通夜や葬儀を行う斎場か、自宅に遺体を搬送しなければなりません。葬儀屋を決めていない場合、病院から紹介される葬儀屋にその場でお願いするケースも多いそうです。
生前に葬儀屋の話はしたくないと思われるかもしれませんが、穏やかでいいお別れを迎えるためにも、葬儀屋は早めに決めておいたほうがいいと思います。
葬儀屋は亡くなった後の手続きについても詳しいので、一番大変な時の心の支えにもなってくれます。
【2】死亡後の手続きリストを役所で入手する
死亡届は、死後7日以内に役所に提出する必要があります。右側が死亡診断書になっていて、亡くなった病院が死因や死亡時刻などを記載し、病院の印鑑を押して家族に渡してくれます。左側に亡くなった人の名前や住所、届出人の住所や本籍などを、家族が記入します。
この死亡届を葬儀屋に渡すと、死亡届や火葬許可の手続きを代行してくれます。この際に死亡届のコピーを、必ず取っておいてください。死亡保険金の請求、携帯電話の解約、未支給年金の受領など、様々な場面で使用するためです。
このタイミングで、役所が作成した死亡後の手続きリストを入手すると便利です。
このリストには死亡後何日までに手続きが必要か、役所のどの課に連絡すればいいか、その際に必要なものなどが細かく書いてありました。まずはこの手続きリストの有無を役所に確認し、リストに沿って必要な書類集めや手続きをまとめて行うと、何度も役所へ足を運ぶ必要がなくなります。
【3】新規の銀行口座を開設する
わたしは父の死亡後すぐに、新しい銀行口座を開設しました。なぜなら、父に関するお金の収支をすべて預金通帳に記帳しておこうと思ったからです。
父の葬儀でもらった香典、市区町村から支給される葬祭費、年金の未支給分といった収入、葬儀代、お墓の費用、病院代などの支出をすべて記帳しておくことで、父にかかったお金の流れが明確に分かり、相続の時にラクになると考えました。
通帳には振込先が記帳されますし、同時に関係するレシートや領収書をすべて取っておきました。
亡くなった父にかかった諸費用は、最終的には遺産から回収し、残った分を相続します。遺産分割でトラブルにならないようにするための対策でもあるので、新規の銀行口座を開設しておくと便利です。
【4】公共料金等の支出を早く止める
故人の家をそのまま使い続けるのであれば公共料金の手続きは不要ですが、住む予定がない場合は、ムダな支出は1日も早く止めておきたいところです。
父の場合、遺品整理やマンションのリフォームが必要で業者の出入りがあったため、電気や水道は解約せずに使用予定のないガスだけすぐ解約しました。
携帯電話は「2年単位」で契約している方も多いと思います。この契約を途中で解約すると違約金を取られるのですが、携帯電話会社に死亡届を持っていくと解約金がゼロになることもあります。
詳しくは、各携帯電話会社に確認してみてください。
忘れがちなのがNHKです。父の場合は、年間一括払いしていたので還付されることになりましたが、毎月払いの方は解約手続きをしないといけません。
インターネットでの手続きはできません。電話(0570-077-077)で解約の問い合わせをしてください。
【5】亡くなった人の銀行口座は、遺族が銀行に連絡して凍結する
父が亡くなって1か月後に、父の口座がある銀行へ行きました。
わたしは、父の死亡届を役所に提出したら、自動的に父の銀行口座は凍結されるものだと思っていました。しかし、父の預金通帳を記帳して驚いたのですが、父の死後も公共料金等が口座から引き落とされていたのです。
銀行員に聞いてみたところ、このような回答でした。
「新聞等の訃報で知った際に、銀行口座を凍結することもありますが、基本はご遺族からの申告で知ることが多いです」
亡くなった後も父のマンションを使う予定があったので、公共料金等を新しい銀行口座からの口座振替に変更したのですが、変更手続きの途中だった公共料金は亡くなった父の口座から引き落とされていました。
家族が葬儀代などのために、亡くなった人の口座からお金を勝手におろして使ってしまうケースもあるらしいのですが、相続時のトラブルの原因となります。まずはご家族が銀行へ連絡して早めに口座凍結を行ったあとで、相続の手続きについて銀行から説明を受けたほうがいいそうです。
今日もしれっと、しれっと。
→このシリーズのバックナンバーを読む
【関連記事】
●認知症の人が言うことを聞いてくれる魔法!利用したい「あの人」って?
工藤広伸(くどうひろのぶ)
祖母(認知症+子宮頸がん・要介護3)と母(認知症+CMT病・要介護1)のW遠距離介護。2013年3月に介護退職。同年11月、祖母死去。現在も東京と岩手を年間約20往復、書くことを生業にしれっと介護を続ける介護作家・ブロガー。認知症ライフパートナー2級、認知症介助士、ものがたり診療所もりおか地域医療推進室非常勤。ブログ「40歳からの遠距離介護」運営(http://40kaigo.net/)