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健康

糖尿病による認知症リスクで「2025年認知症700万人」

 2025年に認知症患者が700万人を突破するという。その数字のベースとなるものの一つに、糖尿病の増加があるという。武蔵野大学薬学部の阿部和穂教授による公開講座「糖尿病の基礎から治療・予防法まで」では、糖尿病と認知症の関係についても解説された。武蔵野大学文学部3年生の守田詩帆菜記者が取材する。

糖尿病患者がこのまま増えたら認知症患者も……

 2025年までに国内の認知症患者数が700万人を突破するという研究データが厚生労働省より発表されたのは2015年1月のこと。超高齢社会になれば患者数が増えることは予想されてはいたが、従来の推計では500万人程度と見積もられていたのに、である。

 じつは従来の想定を200万人上回った陰には、「糖尿病患者数がこのまま増え続けたら」という仮定が含まれていたと、武蔵野大学薬学部教授の阿部和穂先生は指摘する。

 糖尿病は、認知症のリスクを高める。本記事ではまず「認知症とは何か」を説明していこう。

認知症は病気ではなく、症状

「認知症は病気ではありません。症状なのです」と、阿部先生は言う。

 たとえばインフルエンザにかかって高熱が出るとする。インフルエンザは病気だけれど、高熱は病気ではなく、症状だ。つまり認知症とは、何らかの脳の病気で、脳の認知機能が失われた状態をいうのだという。

 現在の日本で最も多いのは、アルツハイマー病の発症に伴って現れる認知症。これをアルツハイマー型認知症と呼び、日本の認知症患者全体のおよそ50%を占める。症状は、脳に神経原繊維変化が起きて脳が萎縮していく。発症は75歳以上に多く、高齢化に伴い近年増加している。人格→認知→意識の順に損なわれていく。

 次が脳血管性認知症。脳梗塞や脳出血によって脳の血流が滞ったことにより起こる認知症で、全体の20%くらいを占める。発症時期は脳梗塞や脳出血の出現時期によるので、若くても認知症の症状が出ることがある。意識→認知→人格の順に損なわれていく。

 同じく20%を占めるのがレビー小体型認知症。脳の神経細胞の中にレビー小体というものが出来て、神経細胞が死滅していく。記憶障害よりも、実際にないものが見えたりする幻視が起こることが多い。

認知症の中核症状と周辺症状とは

 認知症の症状には、患者に共通してみられる中核症状と、患者の性格や環境によって表れ方が異なる周辺症状(「BPSD(行動・心理症状)」とも言う)とがある。

 中核症状は、記憶障害、見当識障害、判断・実行機能障害、失語・失行・失認、病識欠如などだ。

 周辺症状(「BPSD(行動・心理症状)」)には、幻覚や妄想などの精神症状、せん妄などの意識障害、徘徊や暴言・暴力、食べ物ではないものを食べてしまう異食などがある。

認知症と物忘れの違いから理解する認知症

 認知症と物忘れとの違いから、認知症の症状の特徴を見てみよう。以下の項目のうちどれが認知症の症状か、考えてみてほしい。

(1)ついさっきしたことを忘れてしまう。
(2)今日の日付がわからない。
(3)2つ以上のことがうまくできない。
(4)顔はわかるのに名前が思い出せない。

 答えはなんと「全部」だ。ただそれぞれ、物忘れと認知症の間には決定的な違いがあるので、詳しく説明していこう。

(1)ついさっきしたことを忘れてしまう。
 約束をしたのに、その日時や場所がうろ覚えで思い出せなくて困った経験は誰もが持っているだろう。安心してほしい、これは単なる度忘れだ。しかし、約束をした直後にその約束の日時ではなく、約束をしたこと自体を忘れたり、ご飯を食べてお腹いっぱいなのに、ご飯を食べたこと自体を忘れてしまうといった記憶障害がある場合は、認知症を疑ったほうがいい。

(2)今日の日付がわからない。
「今日は何日?」と聞かれて、返答につまることは誰にもある。何日かはわからなくても、今何月か、季節はいつかがわかれば問題はない。しかし、認知症になると、今が1年のうちのどこに位置するのかが認識できなくなるケースがある。日付だけでなく、時間や場所の把握も難しくなるのだ。これを見当識障害という。

(3)2つ以上のことがうまくできない。
 ここでいう「2つ以上のことがうまくできない」とは、右脳を鍛える体操によくあるような、右手は3拍子で左手は4拍子で動かすといった難易度の高いものではない。たとえば、テレビを見ながらみかんの皮をむくといった、何ということはない簡単な動作が困難になってしまうのだ。ほかには、計画的に行動したり、物事を順序立てたりすることもできなくなるため、日常的にできていたはずの料理ができなくなってしまう。これを判断・実行機能障害という。

(4)顔はわかるのに名前が思い出せない。
 久々にあった友人などで顔はわかるのに名前が思い出せないだけなら、認知症を疑う必要はない。ただ家族・親族の名前や顔が思い出せないというレベルになってくると、認知症を疑わざるを得ない。

 このような認知症の発症リスクを、なぜ糖尿病は高めてしまうのか。その具体的な説明については次回に。

〔学生記者の眼〕
 認知症を病名と勘違いしていたため「認知症が出る」という言葉表現に驚きを隠せなかった。講座では認知症による様々な症状を学び、患者をサポートをする周囲の方の大変さをうかがい知ることができた。プロに託したほうが家族の負担は減るかもしれないが、家族だからこそサポートできるものもあるのかもしれない。難しい問題だと思った。

◆取材講座:「糖尿病の基礎から治療・予防法まで」第3回(武蔵野大学公開講座・三鷹サテライト教室)

取材・文・写真/守田詩帆菜(武蔵野大学文学部3年)

初出:まなナビ

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