自由な生活に徹底的にこだわった介護付有料老人ホーム<前編>
食べたいメニューを自分でセレクト
そして、自由へのこだわりは食事そのものにも表れている。多くの施設では食事のメニューはあらかじめ決められている。事前予約できることはあっても、当日その場で選べる施設は多くない。しかし、ここでは4種類から選ぶことができる。
「その日召し上がる食事はご自身で決めていただいています。お肉料理、お魚料理、丼もの、麺類が日替わりで楽しめます。例えば麺類の選択であれば、今日が味噌ラーメンだったら、明日はうどん、その次は冷やし中華といったように飽きが来ないように工夫しています」(井野さん、以下「」は同)
その日のメニューのサンプルが用意されていて、認知症で文字情報を苦手としている人でも選びやすくなっている。街中の普通のレストランで食事をする感覚に近い。その日の気分、体調で選べるので、より食事の時間を楽しむことができるのだ。
入居者一人ひとりの食事の情報が書いてある食札を希望するメニューと一緒に厨房に出すことで、やわらかくしたり、制限のある食材を除いたりといった調理をしてくれる。そうなると食事が出てくるまでに時間がかかりそうな気がするがそのようなことはなく、レストラン並のスピードで出てくるという。ちなみにおやつも和菓子、洋菓子のように2種類から選ぶことができる。食事を選ぶということは、ただ楽しいだけではなく、能動的な生活を送る意欲を引き出すことにもつながる。
「自分で生活をするという意識が大切です。我々は分からないようにお手伝いはしますが、以前は自分で何でもやっていたことを思い出してもらえればと思っています。受動的ではなく、積極的に自分の意志を示すことが生活意欲を高めるんですよ」
サンプルを見ながら食事を選べるようにしたことで、入居者とスタッフのコミュニケーションも増えるという効果も出てきた。生活相談員の小林貴廣さんによると、好き嫌いの話が自然に出てくるようになり、実はこれが好きだった、嫌いだったという本音も聞くことができるようになったという。また、食堂のすぐそばにバーコーナーもあり、お酒を楽しむことができる。おつまみやお酒にあう食事も用意されていて、それも厨房から出してくれる。もちろん、訪ねてきた家族と一緒に楽しむことも可能だ。
いろいろと制約があることもやむを得ないのが介護施設だが、ここ、たのしい家下落合はそのフレキシブルな対応の高さに驚かされる。次回、後編では自由な生活を送るための施策と施設内を細かく紹介していく。食事以外にもこだわりがあふれている様子をぜひチェックしてほしい。
【データ】
施設名:たのしい家「新宿下落合」
公式WEBサイト:http://www.tanoshii-ie.jp/facility-detail/%E3%81%9F%E3%81%AE%E3%81%97%E3%81%84%E5%AE%B6%E3%80%80%E6%96%B0%E5%AE%BF%E4%B8%8B%E8%90%BD%E5%90%88/
所在地:東京都新宿区中落合2-7-5
最寄駅:西武新宿線「下落合」駅より徒歩3分
類型:介護付有料老人ホーム
運営主体:株式会社ケア21
敷地面積:1323.93平方メートル
延床面積:4312.25平方メートル
室数:63室
入居要件:入居時要支援・要介護
構造:鉄筋コンクリート造6階建
開設年月日:2017年4月1日
料金:
【1】入居一時金0円、月額利用料金42万2800円(ベランダタイプ)
【2】入居一時金300万円、月額利用料金37万2800円(ベランダタイプ)
【3】入居一時金720万円、月額利用料金30万2800円(ベランダタイプ)
【4】入居一時金1200円、月額利用料金22万2800円(ベランダタイプ)
※サンルームタイプは、月額利用料金+1万円
※消耗品、介護保険1割または2割負担等は別途必要
撮影/津野貴生
※施設のご選択の際には、できるだけ事前に施設を見学し、担当者から直接お話を聞くなどなさったうえ、あくまでご自身の判断でお選びください。
【このシリーズのバックナンバー】
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