ひとり暮らし、狭いアパートで最期を迎えることは可能なのか
小林麻央さんが最期に選んだ在宅医療。彼女のブログには自宅で家族と過ごす喜びと大変さが綴られたが、それはどんなものなのか。新著『なんとめでたいご臨終』で「自宅だからこそ」の奇跡と笑顔のエピソードを明かした日本在宅ホスピス協会会長の小笠原文雄医師に、最期まで朗らかに過ごす方法を尋ねた。ひとり暮らし、しかも狭いアパートでも、本当に自宅で最期を迎えられますか?
医師や看護師の訪問、ベッド1つがあれば大丈夫
「ひとり暮らしであっても、ちゃんと痛みを取ってくれる医師や訪問看護師、介護士が来てくれるなら、何の問題もありません。ベッドが1つあれば大丈夫です。住み慣れた家であることが重要なんです。
病院と違って家は自由な空間。お酒を飲んでもたばこを吸ってもいい。壁のしみや障子の穴など、ベッドからこれまで生きてきた歴史が見える環境、そしてストレスがなく、緊張を強いられない環境であることが自宅のいいところです。
『こんな狭いアパートで、ひとり暮らしで大丈夫なのか』というのは、元気な時に感じる不安です。臨終の間際に寝たきりの状態になると、不安が180度ひっくり返ります。『このまま見慣れた天井を眺めながら死ねたらいいな』と思う人が多い。
私はひとり暮らしのかたを54人看取りましたが、多くのがん患者さんは病院の緩和ケア病棟を予約していたにもかかわらず、結局、空きが出ても断って、みなさん家で最期を迎えました」(小笠原さん)
介護する人が疲れ果てた状況になっては在宅医療は失敗
続いて、「母親の長い介護に疲れ果て、この先できれば施設などに預けたいと考えています。ましてや自宅で最期を迎えるなんて考えられない…」という声もある。
「介護する人が疲れ果てたという状況は、その時点で在宅医療としては失敗です。介護する人も笑顔でなければ、在宅医療はうまくいきません。長い介護が必要な患者さんなど、介護が大変なケースもあります。そういう場合は、患者さんにショートステイを利用してもらい、その間、ご家族には介護を忘れてゆっくりしてもらうとか、夜間に鎮静剤を投与する『夜間セデーション(鎮静)』を用い、患者さんにもご家族にもぐっすり眠ってもらうなど、ストレスを減らし、疲れを取る方法はさまざまあります。
今は介護保険制度もあります。ご家族が眉間にシワ寄せて介護をやりすぎると、患者さんは『本当は家にいたいけれど、申し訳ないから病院に入院しようか』と言い、かえって苦しめることもあるので、公的制度を最大限利用しつつ、家族の介護はほどほどにした方がいいのです」(小笠原さん)
※女性セブン2017年7月27日号