コミュニケーションを重視し個別ケアに取り組む介護付有料老人ホーム<後編>
介護ロボットを積極的に導入する意味とは?
「介護業界全体を見渡しても、人手不足が今後さらに出てくると思います。それを解決するためにも、積極的に介護ロボットを導入していきたいですね。人が関わったほうがいいことと、排泄のようにロボットが行ったほうがご本人の自尊心を傷つけないことがあります。スタッフが安心して働ける場でないと、ご入居者に満足いただくことはできません。腰痛で仕事を辞めていくスタッフもいますし」
大和ハウス工業は介護ロボット事業にも力を入れている。もみの樹・杉並でも実際にスタッフの腰につけて負担を軽減するロボットを導入し始めている。鈴木さんはロボットを導入することで、スタッフは一緒に散歩に行く、話し相手になるなど、人間がしたほうがいいことに力を入れれば良いと考えているという。
また、もみの樹・杉並には、セラピー用のアザラシ型ロボット「パロ」もいる。精神的なセラピー効果を目的にしたロボットで、ギネスブック(2002年)にも認定されている「世界でもっともセラピー効果があるロボット」とのこと。かわいいアザラシの赤ちゃんで、多数のセンサーや人工知能の働きによって、人間の呼びかけに反応するもので、人間の五感を刺激する豊かな感情表現や動物らしい行動をし、人を和ませ心を癒してくれる。
アニマル・セラピーと同様の効果があり、アメリカではFDA(食品医薬品局)より医療機器として承認されており、日本でも介護福祉分野での導入が進みつつある。ペットを飼えない環境だったり、アレルギーがあったりする人にもオススメだ。
鈴木さんはロボットの導入でマンパワーを浮かせて、個別対応に人員を割きたいと今後の展望を話してくれた。
「家族がそばでするような個別の対応をしたいです。施設全体でいろいろな企画を入居者向けにすることはもちろん大切ですが、好き嫌いがありますし、やはり個別で寄り添って差し上げたいです。とにかく個別対応ですね」
今から高齢者向け施設に入居する場合、10年、20年と過ごすこともあり得る。今までは介護といえば人によるケアというのが常識だったが、AIの急速な進化や政策の後押しもあり、介護の現場へロボットの導入がどんどん進む可能性もある。これからは見学時に、ロボットの活用実績や導入予定についても尋ねることが必要になってくるかもしれない。
【データ】
施設名:もみの樹・杉並
公式WEBサイト:https://www.mominoki-life.com/suginami/gaiyo.html
所在地:東京都杉並区和泉3-52-8
最寄駅:京王井の頭線「永福町駅」北口より約650m
類型:介護付有料老人ホーム
運営主体:大和ハウスライフサポート株式会社
敷地面積:3703.91平方メートル
延床面積:3686.04平方メートル
室数:64室
入居要件:入居時、原則65歳以上で要介護認定(要支援・要介護)を受けている方
構造:鉄筋コンクリート造 地上3階建
開設年月日:2006年3月1日
料金:
【1】入居一時金プラン
月額利用料は年齢に関わらず26万6760円、入居一時金は年齢別に区切られている
63~72歳:3750万円
73~79歳:3255万円
80~85歳:2750万円
86~89歳:2260万円
90~94歳:1830万円
95歳以上:1055万円
【2】月払い契約方式プラン
月額利用料は60万2760円、入居一時金は0円
※【1】【2】の月額利用料内訳/管理費、特別サービス費、食費、基本料金、家賃
撮影/津野貴生
【このシリーズのバックナンバー】
●手厚い「個別ケア」を実現した介護付有料老人ホーム<前編>
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●自立支援介護に実績のある介護付有料老人ホーム<前編>
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